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1つの銃声の後、目の前にいた彼の胸から赤が舞いこの舞台を1色に染めていく。



ぺん「看守!!」

しに「は…?」



犯人が高笑いし彼の死を嘲笑う、嬉々として口を回す男に俺は腹の底から沸き立つ怒りを感じ鋭くヤツを睨んだ、そんな俺と目が合う不思議な仮面で顔を覆い隠す道化師。



「白髪の体に爆弾を仕掛けた!」



ならアイツを巻き込んで死んでやろうか、だが心配し駆け寄ってきてくれる2人の存在は放ってはおけない。

道化師の笑い声だけが残りヤツは姿を消した、流石というべきか2人はすぐに気を持ち直し船からの脱出へと足を進める。



クロ(いや、このままじゃダメだよな)

ぺん「クロノアさん?」

しに「どうしました?!」

クロ「別行動しよう、2人とも」

ぺん「は?!」

クロ「俺は爆弾を外す、2人は宝物の確保して」

しに「でも…!」

クロ「俺達は盗ってなんぼだろ?w」

ぺん「分かりました」

しに「ぺいんとさん!?」

ぺん「ただし、ちゃんと合流してくださいね」

クロ「危ない!」



遠くから聞こえていた爆発が鼓膜を揺らす、前に居た2人を突き飛ばすと俺との間に壁ができた。土煙でよく見えない、けどきっと心配の目が向けられてるんだろう。



クロ「2人は宝を盗ったらすぐに屋上に行って」

ぺん「絶対に来てくださいね!」

しに「僕達ずっと待ちますからね!!」

クロ「了解!」



走っていく2人の背中が振動によってブレ遠く感じた、俺はすぐに来た道を戻り走る。







クロ「生きてますか?」

リアム「なぜ戻ってきた…」

クロ「やることがあるんで、看守もでしょ?」

リアム「…とどめか」

クロ「ええ、色々お世話になったんでね」

リアム「俺がやる、お前は早く逃げろ…」

クロ「出血でまともに動けないのにですか?」



医務室から盗ってきた救急箱で簡易的な止血を済ませ、彼を背負いクロノアは駆け出す。

爆発によって綺麗だった廊下はまるで戦場のようになっていた、飛び出た瓦礫や鉄骨からは薄い囚人服だけでは敵わず、下半身が赤黒くなっていく。




「待てぇぇぇ!!!!!」




虚ろになっていた意識がヤツの怒号によって覚醒する、からぶった剣を振り下ろした道化師の目線の先には飛び立った2人が居た、手にはしっかりと宝が握られている。

それに安堵したクロノアは道化師に向かって走り、勢いよく上体を下げた。



リアム「逃がさん!!」

道化師「ぐぁっ?!」



弾丸の如くヤツに突き刺さった剣は貫通し、体を壁に固定した。2人がクロノアの為に残していたエリトラは布切れになり、無残に瓦礫に埋もれている、足を引きずりながら船尾へと進む。



リアム「終わったな」

クロ「呆気なかったですね 」

リアム「アイツの脅威はブルーローズだからな」

クロ「あー、良かった…2人飛んでます」

リアム「あの2人なら大丈夫だろ」

クロ「えぇそれに地上には仲間も待ってますし」

リアム「…本当に逃げなくて良かったのか?」

クロ「はい俺、あんまり先が長くないんで」



ゆっくりと船尾に座り、雲1つない澄んだ青空に消えていく2人を眺める。



リアム「…爆弾か」

クロ「初めて俺達が脱獄した時の傷なんです」

リアム「かなり前だな」

クロ「はい、瓦礫に潰されて内臓や骨に傷が」

リアム「治療はしなかったのか?」

クロ「うちにそんなお金はないので」

「それにもう治らないのは自覚してましたし、奴に洗脳されてる時に悪化してもう限界です」



もう体力は底をつき、後は死を待つだけになった2人は看守と囚人という立場から解放され、リアムとクロノアとしてポツポツと話をする。



リアム「9番…いや、クロノア」

クロ「リアムさん、どうしました?」

リアム「今までどんな事をしてたんだ?」

クロ「美術館や会社とかで盗みしてました」

リアム「お前達のお陰で捕まった奴らもいるな」

クロ「ははっw代金として情報を少しw」

リアム「ふっw悪投め」

クロ「囚人を逃がしたリアムさんもでしょ? 」

リアム「だな、間違いないw」



数10分だったかもしれない、だが2人にとっては数分に感じられる時間だった。次第にリアムからの返答は無くなり、グシャッと崩れた音だけがクロノアに届いた。



クロ「お疲れさまでした…リアム看守…」



力無く倒れたクロノアはまだ残っている聴覚に全てを注いだ、船が崩れる音、落ちていく音、爆発する音、流れる液体の音、自分の体内から聞こえてる電子音。



クロ(電磁波を狂わしておいて良かった…)



爆弾の電磁波を狂わせ、爆発時間を操作した。延命かすぐに爆発するかの2つの賭けにクロノアは勝利した、そのお陰で仇を取りリアムという友を得た。



クロ(もう死ぬんだなぁ…)

(ぺいんとは怒るだろうな…何でそんな事って…

しにがみくんは泣くだろうな…あの時僕がって…トラゾーは悔しむかな…なんでって…)



刻一刻と迫る自分の死にクロノアは涙を流し、見えない目で空を睨み付ける。小刻みに震える手はやっと思いで頬の涙を拭った。




クロ「死にたくないなぁ…生きてたぃなぁ…」

「み…んなのぉところにかぇりたぃ…」






その言葉を書き消すようにピー!と電子音が鳴り響き、世界は光に包まれた。


トラ「うわっ?!ビックリした…!皆!」

ぺんしに「「うわぁぁぁ??!!」」

トラ「うっさぁ!!」



玄関の扉を開けた先には囚人服に身を包んだ、しにがみとぺいんとが居た。大荷物をこさえたトラゾーは安堵と驚きで笑う。



トラ「今から助けにいこうと思っててさ!」

ぺん「遅いわ!w」

しに「今からですか?!」

ぺん「俺らもう帰ってきたよ!」

トラ「えー、折角ケーキとスープとか作って…」

しに「食べ物かよ!w」

ぺん「道具じゃないの!?w」



笑いに満ちた空間にやっと心を落ち着けられた2人は椅子に座った、トラゾーが用意した料理に前のように文句をつけ、美味しいと褒める。



トラ「はい、クロノアさんも…どう…ぞ…」



いつも通りの席に料理を並べ、いつも通り静かに待ってるはずの彼におかわりを差し出す。だが皿はいっぱいのままで、冷めきったビートルートスープが揺れた。



トラ「あれ、クロノアさんは?トイレかな?」

ぺん「…きっと生きてるよ」

しに「はい!戻ってきますよ!」

トラ「一緒じゃない…の…?」

しに「きっと今、迷子なんですよ…きっと…」

ぺん「そぉだよ…ぜったぃ…」




ガタッと激しく机が揺れ、綺麗だった机が一瞬にして乱れていく。ボロボロと涙を流す2人の脳裏にはリアムを背負い、全身を赤く染めた彼が諦めた優しい笑みを向けていた姿が浮かんでいる。

認めたくない、否定したい、信じたい。

だが頭のどこかでは理解している。



ぺん「くっそ…」

トラ「…ニュース!ニュースでやってるはず!」



荒々しくテレビをつけるとどこの番組でも、メデューサ号の墜落事件が取り上げられていた。


既に爆発から時間が経っていて、警備隊が調査を行った結果4人が発見されたという。 その内の2人は残って居たバッチの信号からゾペロニア警備隊の隊員ということ、1人が原型がない程の重傷だと知らされる。

モザイクはかかっていても、囚人服に描かれた数字は誰も見逃さなかった。



ぺん「なんでこんな事したんだよ…!!」

しに「僕がぁのときっ…とめてっれば…」

トラ「なんで…!!」



ドンッ!とトラゾーの拳が壁を伝い全体から振動として伝わった、2人の後悔がそれを拾う。

今まであった筈の温もりを失った3人、それは

終わりではなく始まりに過ぎない、どれだけ抗おうと事実は変えられない。


それが生きると言うことなのだ。

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