テラーノベル
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静かな雨の日だった。
ゴミ袋の山の横で、小さな少年は震えていた。
名前も、居場所も、何もない。
その少年こそ――
緑谷出久。
「……こんなところにいたのか。」
低くて優しい声。
見上げると、知らない青年が立っていた。
「もう大丈夫だ。今日からお前は俺の弟だ。」
その人は出久を抱き上げた。
その瞬間。
出久の運命は動き始めた。
青年は普通の人ではなかった。
世界の均衡を保つ存在。
裏から争いを止める者。
“王”だった。
「この力は代々受け継がれる。」
そう言って見せたのは
常識ではありえないほどの個性の数々。
瞬間移動。
圧倒的な身体能力。
未来予知のような感覚。
それらはすべて
王の後継者だけが持つ“チート個性”。
「いつかお前が継ぐんだ。」
出久はまだ小さくて理解できなかった。
でもその人を
本当の兄のように慕っていた。
月日は流れ。
出久は
**雄英高校**に入学する。
ヒーロー科。
仲間。
訓練。
笑い合う日々。
忙しい学校生活の中で、出久はいつしか
自分が王の後継者だということを
忘れかけていた。
普通の高校生として
生きられる時間が幸せだった。
ある日。
知らない番号から電話が来た。
「……王が戦死した。」
頭が真っ白になる。
兄が
ヴィランとの戦いで命を落とした。
出久は何も言わず学校を飛び出した。
家に戻ると。
机の上には
山のような書類。
世界各地からの連絡。
止まらない緊急要請。
全部――兄が一人で背負っていた仕事だった。
「……僕がやらなきゃ。」
それからの日々は地獄だった。
寝る時間はほとんどない。
食事も忘れる。
王の個性を使い続け、体はどんどん弱っていく。
気づけば
学校にも行けなくなっていた。
ある夜。
ドアが強く叩かれる。
「デク!!開けろ!!」
そこにいたのは
**爆豪勝己**たちクラスメート。
部屋は暗く、出久は床に座り込んでいた。
「……帰って。」
小さな声。
「僕はもう普通じゃない。」
「王なんだ。」
「世界を守らないといけない。」
考えすぎて、心も限界だった。
爆豪は怒鳴る。
「だからって一人で全部やるな!!」
クラスメートも言う。
「私たちもヒーローだよ。」
「守るのは君だけの仕事じゃない。」
その言葉を聞いた瞬間。
出久の目から涙があふれた。
初めてだった。
誰かに弱さを見せたのは。
数ヶ月後。
出久は学校に戻ってきた。
顔はまだ少しやつれていたけど、目は前を向いていた。
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#冬月雪梨
王の仕事は分担することになった。
ヒーローたちも協力してくれる。
出久は気づいた。
本当の王は
全部を背負う人じゃない。
みんなを信じて進む人だ。
空を見上げる。
「兄さん……僕、ちゃんとやれてるかな。」
風が優しく吹いた。
まるで
「大丈夫だ」と言われた気がした。
こうして
元捨てられた少年は
仲間と共に世界を守る王になった。
物語はここから始まる――。
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