東雲絵名遺書(遺書発見者:宵崎奏)
『才能の無い自分が嫌いだった。お父さんの絵に憧れて描き始めて絵だったけど、いつの間にか、絵を描くことが義務になっていたんだと思う。
『描きたい』じゃなくて、『描かなきゃ』になっていたから、私の絵は誰にも見てもらえなかったんだと思う。
今更だけど。
絵は、好きだった。
絵が、好きだった。
だけど、絵を描いてる自分はきっと、嫌いだった。
そんな気持ちで描いてる絵が評価されるわけなかったのに。
今更だけど。
皆のことは好きだった。
私を認めてくれた人、私とケンカしてくれた人、私と……私より才能がある癖に、それをいらないなんて言った人。
そんな皆を、たぶん私は好いていた。
けれど、だから耐えられなかった。
過去の私が、今の私のことを追いかけてきた。それに絶対に追いつけないって分かっちゃったから、もう、本当にどうしようもなかった。
曲は、良かった。
本当に、時間を忘れそうになるほどに聞き入った。
だけど、気づいちゃったの。
今の私は、もうそこにはいられないって。
それはもう、できないことなんだって。
そこにいたのは過去の私で、今の私はそこにはどうやってもいけないって。
だから、ごめん。
追いつけないならもういいって思っちゃった。
だから、ごめんなさい。
あなたの歌に、救われました。
ごめんなさい。
私には耐えられませんでした。
ごめんなさい。』
宵崎奏の遺書(遺書発見者:望月穂波)
『結局、私の曲じゃ誰も救えなかった。
私の作った曲は誰かを不幸にすることはできても、誰かを幸福にすることはできなかった。
お父さんを殺した曲も、あの子を殺した曲も、作ったのは私だ。
私の勝手な、自分勝手な偽善が2人を死に追いやった。
下らない思い上がりだった。『誰かを救える曲を作る』だなんて。こんな殺人者にできるわけがなかったのに。
勘違いも甚だしかった。逃げて、逃げて、逃げて、そうやって2人も殺して今更過ちに気づくだなんて、手遅れにもほどがある。
これ以上の犠牲は許容できない。
これ以上、私の下らない偽善で誰かを殺すわけにはいかない。
最初から最後まで、私は誰かを不幸にすることしかできなかった。
私は曲を作るべきじゃなかった。
私はお父さんにも、あの子にも、曲を渡すべきじゃなかった。
殺してごめんなさい。
死なせてごめんなさい。
私さえいなければ、2人は死ななくて済んだのに。
生まれてきて、ごめんなさい。』
朝比奈の遺書(遺書発見者:暁山瑞希)
『奏が死んだので死にます』
コメント
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奏達が死んだってことは…まふゆも…?