俺の家に2人を呼び出した。部屋の至るところにくっつけるための仕掛けをしてある。俺の家を出る頃には照れくささも無くなって、しっかりイチャイチャしていることだろう。
作戦その1『ソファ撤去作戦』
まずは物理的な距離を縮めてもらうことにする。若井も涼ちゃんも俺にはよくくっついているけど、2人がくっついているのはあまり見かけない。ソファに座る時だって、二人の間には半人分ぐらいの距離がある。俺のことはいつも膝の上に乗せてるくせに!
ということで、いつも使う3人掛けソファを別の部屋に隠しておいた。手伝ってくれたマネさんに怪しまれながら動かすのは骨が折れた。リビングに残っているのは、1人掛けのソファが2つだけだ。
俺は先に座っておいて、ソファを1つ残しておく。若井が俺のが先輩だから!とか言って残っているソファに座る。涼ちゃんが膝の上に座れば2人の距離感はぐっと縮まるだろう。うん、我ながらいい作戦だ。
想像してくすくす笑っていると、チャイムが鳴る。扉を開けると、2人が立っていた。
「いらっしゃい!ほら、早く入ってー」
「なんだか今日は機嫌良さそうだねぇ。お邪魔しまぁす」
「だって、2人とゲームするの楽しみなんだもん!」
「かわいいかよ…ほら、ピザとか買ってきたよ」
「やったぁ、若井だいすき!」
2人が来てくれたことにテンションが上がって抱きつく。作戦も大事だけど、2人とゆっくりできるのも嬉しいのだ。冷めちゃうよと言われて慌てて2人を招き入れる。作戦を進めるために先にリビングに行く。
「あれ、ここにあったソファどうしたの?」
「ちょっと模様替えしたくて、マネさんと移動させたの」
「えー!呼んでくれたら手伝ったのに」
「いやいや、2人とも忙しいじゃん」
「元貴のためなら駆けつけたよ!」
なんでぇと肩を落とす2人、優しいな。やっぱりお似合いだ。しれっとソファに座って、2人も座るようにうながす。
「えー…これどっちか座れないじゃん」
「それはどうにか上手いことしてよ」
俺は知らなーいとニヤニヤしていると、2人は目配せ合ってなにかを相談していた。ここは広い心で見守ろう。焦れったくも感じるが、大事なことなんだ。
若井が持ってきてくれた食べ物をテーブルの上に広げていると、話がまとまったのか2人に動きがあった。真剣な声でジャンケンをしはじめた。え、なに?どっちが上に座るかのジャンケン?そんなに、恥ずかしいのか…あ、涼ちゃんが勝った。
負けた若井はしぶしぶといった様子で空いていたソファに座る。涼ちゃんは上に座ろうとせず俺の方に来た。
「元貴1回立ってくれる?」
「え…わ、わかった」
何が何だか分からず言われたとおりにすると、俺が座っていたソファに涼ちゃんが座った。そのまま腕を伸ばされる。
「おいで、元貴」
「えっ、俺!?若井じゃなくて?」
「元貴って言ってるじゃん。ほら、はやく」
強く腕を引かれて上に乗りかかるように涼ちゃんへ倒れ込む。後ろで若井が何か声を上げているが、それどころじゃない。か、顔が近い。キスしちゃうんじゃないかってぐらい近くて慌てて体を離した。
「あは、耳真っ赤〜」
ぷにぷにと頬をつっつかれ、ぐるりと体を反転させられる。背中を預け、膝の上に座らされる。あれ、いつもと変わらないのでは。そう思っている間にお腹に腕を回される。力が強くて逃げようにも逃げられないし、2人は既にピザで手をつけていた。これでは同じソファに座らせる作戦は無理そうだ。決してピザが食べたくなったわけではない。俺は次の作戦に進むことにした。