説明&注意
・下手くそ
・誤字脱字多分あり
・オメガバースあり
・モブレあり
叢雲『』
赤城「」
父親〈お前は心を許した誰であろうと、絶対Ωだとバレてはいけない。カゲツ、わかったな?〉
叢雲家の家系は代々密かに暗殺業を請け負っている家系で昔は妖術など使えていたらしいが、現代は使えない代わりに金メダリストや歴史に残る科学者など様々な分野に長けているαを輩出していた。
世界の中でも名家な叢雲家からΩが出たという窮地の事実、それを隠すために耳に蛸ができるほど、聞いた言葉。毎朝飲まされた抑制剤。
一度、αの前でヒートが来て襲われかけた記憶が蘇る。
『…はい、父上』
『っふぁ~~あ……。…….久しぶりにこの夢見たな』
家出するように実家を逃げ、もう何年も会ってないから思い出せない親の顔。だが一言…いつも言い聞かされていた約束を思い出し、捨てられてないだけマシかと思いながら、日々を過ごす。
寒くて布団からでたくないと思いながら、起きた後に鳴ったタイマーを切るためにばたばたと手を動かしてスマホを取り出し、タイマーをオフにする。
暫くカレンダーアプリを眺め、今日何があるか把握していきながらゆっくりと頭を起こす。
あー、今日十時からめちゃつえーで収録あるのか…..。寒いし布団から出たくないな…。時間余裕あるし…暖房つけて二度寝しよ。
あ、もうちょっとで周期だっけ、多めに薬買っとかんとなぁ、最近効かんくなってきてるし、
もっと強く効く抑制剤を買えたらいいのだが、値段が結構張るので今は朝昼晩一回ずつに三錠や四錠ぐらい飲み抑えている。
体に良くないとわかっていても昔の習慣は辞められず、ずっと薬で欲を抑えつづけもう数年はヒートなんて来てない。
部屋がだんだん暖かくなっていくなか、鼻腔をくすぐるような柔軟剤の良い匂いがする布団に潜り込み、意識を離した。
もう一度見た夢の中では、忍者をヒーローをαやΩなどない世界で気にせず僕がヒーローズの皆とシェアハウスをして一緒にご飯食べたり川の字で寝たりできる……僕がこの世で一番望んでいる事だった。
……ルルル、プルルルルルッ、プルルルルルッ
『…んぁあ?……何゛ぃ?』
幸せな夢から強制的に起こされ少し不機嫌になりながらも、目の前にあったスマホを取り通話ボタンを押し、耳元に近づけた。
『……は゛い、』
「っあ!やっと出た!!」
ウェンの元気な声が部屋いっぱいに響く。寝起きに聞くには、少々辛い声だ。よくよく聞いてみると蛸やリトの声が聴こえて来る。
『っうるさ、……ウェン?…どうしたん?』
「どうしたもこうしたもないでしょ!カゲツどこいんの?」
焦っているような怒っているような声、何か嫌な予感してきた……まさか寝坊なんて、狼じゃあるまいし笑。
『…ぉふとん』
ぬくぬくのあったかい布団に顔を沈め、もごもごと答える。
「はぁ?!何してんの…今、十一半だよ?」
その一言で眠気が一気に飛んでいった。
『………ほんと?』
「マジ」
スクロールし、スマホでも確認するが十一半だった。なんならちょっと超えてた。
『んぇ……今から行っても間に合う?』
「……間に合うね」
『よしゃ、ガンダで行くわ』
「おけ、皆に言っとくね~」
ウェンが電話を切ったのを確認すると、布団から飛び出て着替えるためにクローゼットに向かい適当にだがお洒落な服を選び、顔を洗うために洗面台に向かった。
ばしゃばしゃと急いで顔を洗い、寝癖など気にせず…というか諦めて、家を出るために必要最低限の物を鞄に詰め込んだ。
『よし、いってきまぁす』
朝ご飯も食べず誰もいないマンションの一部屋にそう告げ、走り出した。
相当焦っていたのか気が抜けていたのか、習慣だった毎朝飲んでいた抑制剤を忘れて。
『…おはよぉございまぁす』
遅刻をして少し気まずい、がこれ以上遅れさせる訳にもいかず緊張しながらスタジオに入る。
🐙🌟〈あ!やっと来た!〉
🐝🤣〈ほんまや!〉
「ほんとだ!カゲツきゅ~ん!!」
ウェンとマナは僕の顔を見た途端、僕に抱き着いて頭をぐりぐりと押し付けた。
『ちょっと!離れてや!!』
「や~だ!だってカゲツきゅん良い匂いするんだもん!」
良い匂いという言葉を言われたときに思い出した。今日抑制剤飲んでない、と。
やべ、鞄に予備あったかな。無かった気がするんだけど…。一応確認しないと、ヒートなってからじゃ遅いしな……、
『…ごめん、トイレ行かせてくれへん?』
「おけ~!でも急いでね~?」
『はぁい』
鞄を持ちスタジオから出ると、人に迷惑が掛からない程度で小走りをしながらトイレに向かう。
『ふっ、ふうーッ』
トイレに入るとすぐに個室に入り鞄の中に入っている抑制剤が入っているポーチを探る。
物を詰め込んだからでもあるが鞄の中に物が沢山入っていて、中々ポーチが見つからない。
一旦、鞄の中の物を全部出してみても見つからない。だが鞄の小さなポケットの中を見ていないことに気づき、最後の頼みで開けてみるとポーチがあった。
だがそのポーチの中には抑制剤が入っていなかった。
『…マジで?』
まー、まだ周期じゃないし大丈夫やろ、多分ッ
「カゲツきゅ~ん?大丈夫?お腹痛いのー?」
個室の外からウェンの声が聞こえる。
やべ、トイレに長居し過ぎた。
『…だいじょーぶ!』
「それなら、良いけど…」
出しっぱだった荷物を鞄に詰め込み、トイレの個室から出る。抑制剤がなくて焦っていることを悟られないように、いつもの笑顔で…、
『いやー、普通にトイレ行ってたんやけど寝とったわ~笑』
「えぇ~??カゲツきゅん、寝ぼけ過ぎじゃない?笑」
『ほんま、自分でも驚いたー笑』
スタジオに戻り、めちゃつえーの皆にその話をすると笑われからかわれたがそんな事気にしない。それより抑制剤を忘れたことで思考がいっぱいいっぱいだった。
やっと収録が終わり一息ついた頃、ウェンに話し掛けられた。
遅刻したせいで終わるのが遅かった僕を皆が休憩室で待ってくれていたらしい。
「カゲツきゅん、お疲れ様ー!!」
KPニキことウェンは、またしても僕に抱き着き頭をぐりぐりと押し付けた。
『もー!離れてってゆうとるやろ!』
Ωだってバレたら、めちゃつえーからにじさんじからヒーローから全て離れなきゃならない。だから絶対バレたらだめなんや。
「なんでだよー!!😭」
『ええから!!』
抱き着いている手を離そうとしてもびくともしない。
なんか力、入んない。
身体あついっ
頭の中でぶつんっと音が鳴った。
『…ッえあぅ……?』
久しぶりのヒートで感覚を忘れていて、身体がほわほわする。
足に力が入らず立ってられなくなって、床にぺたりと座り込んだ。
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
「…なに?….この匂い…?」
じりじりとウェンが僕に寄ってくる。
昔に一度襲われかけた記憶がフラッシュバックしてくる。
『ッこないでっ、おねがいやからっ』
多分恐怖心もあるからだろうが、もう会えないと考えるだけで自然に目から涙が溢れてくる。
精一杯足に力を込め立ち上がり、スタジオを飛びだし走って僕一人になれる部屋へ走る。だが何処も空いている感じはなく、とりあえずトイレに駆け込み鍵を閉める。
追い付かれないように走ったつもりだったが、ウェンはわざわざ着いてきて僕を心配する。
「カゲツ?!大丈夫?!」
ウェンは僕が篭っているトイレの個室の扉を叩く。
『ええからっ。ついてッくんなっ!』
やめて、来ないで
ウェンが扉を叩く度に、いつか開けられるんじゃないか、ウェンはαだから襲われる、とどう考えても良くない方向へ想像をしてしまい、身体がガタガタと震える。
「っ同期なんだからッ心配させてよっ!」
同期だからってなんやっ!
『うるさいっ、うるさいっ!!はやくッどっかいけやッッ!!』
「っあ……..ッ!」
僕が怒鳴るとウェンは懲りたのか、何か言い返そうとしていたが暫くするとだんだん足音が遠くなって行き男子トイレを出る音が聴こえた。
『……っはぁあッ、なッんでっあんなッことッ、いっッちゃったんッだろっ』
会うのがさっき最後だったかも知れないのに、こんな最後になるなんて
小学生の頃から抑制剤で抑えてきたので対処方法を知らず、時間が経つ程お腹の奥が寂しくなる。
ちょっとでもヒートが治まるのを願い、暫くトイレに篭った結果、身体が慣れたのか少し楽になったのでトイレの個室の鍵を開け外を覗いてみると、
スタッフさん〈お前っ、Ωかッ?〉
欲情しているαがいた。
『ッあっ、かひゅッ』
昔の記憶と重なる。
やだ
こないで
こわい
きもちわるい
だれか、たすけて
扉を閉め鍵を掛けようとしたが、扉に足を挟まれ閉めたくても閉めれない。
『っいやだッやだッやだっ!』
スタッフさん〈…こんなに匂い撒き散らしといて、やだとか…無理に決まってんだろ〉
僕の抵抗は虚しく、扉を開けられトイレの床に押し倒された。
僕の首に顔を近づけスンスンと匂いを嗅ぎ、喉仏を軽く噛んだ。そして、まるで目の前にデザートがあるかのように舌なめずりをした。
スタッフさんは、僕のズボンを乱暴に脱がしパンツの上から僕のモノを触りはじめた。蹴っても殴っても、手足を抑えられ何も抵抗出来なくなった。
スタッフ〈チッ…暴れんなよ、めんどくせぇな〉
ついにはパンツを脱がし始め、僕のお尻に指を挿れた。
『ひぅっッ』
ぐちぐちと卑猥な音を立て、雑に掻き混ぜる。
勿論、気持ちいいはずがなく。恐怖心が混み上がってきてただひたすらに涙が流れる。
スタッフさん〈どろっどろじゃねぇか。…これならもう入るな、〉
スタッフさんもズボンとパンツを脱ぎはじめ、僕のお尻にあてがう。
つぷっとスタッフさんのモノの先が入ってきた。
『っやだッッ!っやだやだやだぁ!!』
最後の力を振り絞り抵抗する。
僕の腕や足を掴んでいる手の爪が食い込んで痛い。
『っだれか!ッたすけっッ、!!』
スタッフさん〈誰も来るわけないだろぉが!笑〉
あの時素直に頼っていれば、でも今後悔したってもう遅い。
そんな時に乱暴にトイレの扉が開かれた。
「っ何回もごめんッッ!ッでもどうしてもっほっとけなくて抑制剤買ってきたんけ..どっ……、」
走って買ってきてくれたのか、髪や服は乱れ汗が滴っていた。
『っ、たすけてっ….ッうぇんッ!』
助けてと言った瞬間、ウェンは僕とスタッフさんを引きはがした。
助けてくれたとは言え、ウェンだってαだ。僕は二人から離れ、首を守り隅に逃げ込んだ。
スタッフ〈っお前だってαだろ?…こんなん、匂い撒き散らしてる方が悪いだろ?!襲いたくなるだろうがよ!!〉
「…だからって、襲っていい理由にはならないよね」
「…僕にボコられるか、…警察に捕まるか、選ばせてあげる」
ウェンはスタッフさんの胸ぐらを掴み、耳元で囁いた。
スタッフ〈こンのっクソガキッッ!!〉
スタッフさんは殴ろうと拳を固め突き出したが避け、背後に周り手刀をし気絶させた。
「っよし…と、カゲツ大丈夫?」
ウェンがビニール袋を持ち、僕の方へと一歩近付いた。
『ッはひゅっ、ぅあ゛っッ、』
ウェンから離れるため、トイレの隅に居るのに身体を小さくし更に隅へ逃げる。
「っ、じゃあ、買ってきた抑制剤置いとくから飲んで落ち着いたら教えて、あと服着といてね、そのままだと…ちょっと僕もヤバいから」
今自分していることに気がついた。
うなじを守るのに必死でズボンやパンツを履かないまま体育座りをしている感じなのでぐちょぐちょになっているお尻など、全てまる見えだったのだ。
『っ…///』
すぐに隠し、苦しい呼吸を整えながら声を搾り出す。
『たすけてくれて…….ありがとぉな…うぇん、』
「持ちつ持たれつ、でしょ?」
笑顔を浮かべスタッフさんを持ちビニール袋を置いて、トイレの外へ出て行った。
早速ウェンが買ってきてくれた抑制剤を飲み暫く安静にすると、自分でも治まってきたのが分かるほど回復した。
少しドアを開け男子トイレの外を覗くと、ウェンと警察と手錠を掛けられているさっきのスタッフさんがいた。
「あ!カゲツ!もう大丈夫なの?!」
『….っあ、うん、だいぶ良くなったと思う…けど、』
警察〈貴方がカゲツさんですね?…お話聞いてもよろしいでしょうか?〉
警察の人がαでもβでも今は知らない人に近づかれるのが怖くて、ウェンの後ろへ逃げる。
『ッかヒぅッ…ぁえ…、ッあっ…ぇと…、』
「…すいません!今はまだ体調が優れないので、今度では駄目ですかね」
警察〈いえ、此方こそすいませんでした。この方はちゃんと法によって裁かれるので御安心ください。〉
僕が怖がらないように警察の人はにこっと笑り、スタッフさんを引っ張って行った。
『ずびっ……ぁりがとうございます、』
「…カゲツ、まだ匂い出てる、」
警察の人がスタッフさんを連れていくのを見送るとウェンが僕の首に顔を近づけ、言った。
『えっ………あ…、う……』
また、ウェンから距離をとりいつでも動き出せるように身構える。
「…家まで送ろっか?」
『大丈ッ、……ぃやたのんでもええ?』
さっき強がった結果がこれだ、だから今回は素直に頼ってみてもええかもな、
帰る手段としては徒歩かタクシーだが、今はまだフェロモンが出ているらしいので万が一のため徒歩になる。別に遠いわけではないので頑張れば帰れるが、発情期のせいで身体がほわほわするし熱い。
「もちろん、まだ立つのも辛いでしょ?おぶろうか?」
『…大丈夫、歩ける』
僕が歩けると強がっているのを分かっているのか、ウェンはせめて荷物を持つと言い無理矢理僕の荷物を奪った。
『ッふっ、….っはぁッ、んっッ……』
家まで半分ぐらいまでの時、いつもなら余裕のはずなのにもう大分疲れていた。それに時々お尻にドロッとした感覚が走り、パンツもぐちょぐちょになって気持ち悪い。
抑制剤の効果がきれてきたのか、さっきまで余裕だったのに立ってるのも辛くなってきた。
「っやっぱ辛いでしょッ?っおぶるよ、」
『っいやッ、あるけうもんっ』
「呂律もッ回ってないじゃんッ笑」
ほら、とウェンはしゃがみ、その上に乗れと言わんばかりにこっちを見てくる。
『うぅ゙…、』
「っよいしょッ、立つのも辛かったでしょ?僕を頼ってよ、」
近づいたから分かったがウェンは、僕のフェロモンを我慢するために唇を噛んでいた。
僕をおぶることで距離が縮まり、もっと辛くなるはずなのに、
『なんで、そんな…やさしくしてくれるん?』
「…困ってた人がいたらッ助けたいから、かな」
【🍱🦖視点】
「困ってた人がいたら助けたいから、かな」
なーにが!困ってた人がいたら助けたいだ!かっこつけてるけど、結構僕もヤバいんだけど!!
好きな人がΩだって知らなかったし、いや、逆に丁度良いのか?
何このいい匂い、もっと近くで嗅ぎたい。
今までΩのヒートに鉢合わせしちゃったことあるけど、こんなの嗅いだことない、
僕、フェロモンあんまり効かない体質だから油断してたけど、一応α用の抑制剤飲んでて良かった。
飲んでなかったら絶対今頃襲ってた、
『ッバレたのがうぇんでよかったわぁ』
さっきまでうるさいとか言ってたのに、今は顔は見えないが声が安堵の色を示していて僕も安心した。
「そういや、何でβって嘘ついてたの?」
【🥷🔫視点】
『………、あとで…おしえたるわ』
もう会えるはずないのに
多分、もう少しでこのことが叢雲家にも伝わって実家に連れ戻されるだろうな。もう一生外に出れなくなるか何処か僕のこと誰も知らない遠い所に飛ばされるんだろうな。
そんなことを考えながら、眠りについた。
一つ夢を見た。だいぶ昔のことだ、だがトラウマとなって染み付いた記憶は一生離れなかった。
小学生の上学年くらいの頃、なぜだったか忘れたが上機嫌で下校していると知らないおじさんに路地裏に連れ込まれた。
僕を押し倒し、服を脱がされる。勿論、抵抗したが小学生の力が大の大人の力がに勝てるわけもなく、されるがままだった。
モブ〈っまさかまさか!叢雲の家からΩが産まれてるなんてなぁ!?!〉
モブ〈そこら辺にいる底辺記者にこのことが伝われば、大儲けするスクープだッ!笑〉
僕の乳首を飴玉のようにころころと舌で舐め回しながら、僕のお尻に指をいれる。指が太く角張っているのでギチギチと音を立てながら指が奥へ奥へと侵入してくる。
『やめっッ
モブ〈黙れよ、〉
喋れないように鼻と口を抑えられ息も出来ず、完全にされるがままだった。
「警察の人ーーー!!ここーッ!!!」
路地裏への道の前にピンク色の髪をした人がこっちに警察を呼んだ。
そしておじさんの背中を蹴飛ばし、顔面に一発パンチをお見舞いした。おじさんは動き出しはしなかったので多分気絶してる。
「きみ、大丈夫?」
僕の目の前で屈み、手を差し伸べた。よく見ると僕と歳が同じぐらいで目の下に絆創膏が貼ってあり明らかにわんぱくという言葉が似合う。
恋愛を禁じられていた僕とって一目惚れで初めての恋だった。
彼の水色の眼がきらきらと輝いていて、
『っ離れろッ!!』
彼が差し伸べた手を叩き、急いで周りに投げられた僕の服を着た。そして狭い路地裏の壁でマ■オのように跳び上がりビルの屋上に登る。
多分さっきのおじさんは警察に捕まって、僕がΩなのは世には拡がらないと思うけどさっきの彼だけはきっと気付いてる。
このことが親に伝われば転校させられる、やっと家柄関係なく仲良い友達が出来て好きな人も出来たのに、
『__バレちゃッ駄目っ』
帰っても誰にも悟られないようにいつものように陽気に笑顔でアホっぽく演じ、口をつぐんだ。
それでも、叢雲家の息子なので監視は必ず付いている。何でも連れ込まれたときに助けてくれんかったのか聞きたいけど、その監視の人が報告をしたんだろう帰るとすぐに父上に呼び出された。そして転校を命じられ、好きな人の名前も知らず、想いに蓋をした。
「……ツ、…ゲツ、カゲツ!」
『んぇあ?』
「着いたよ」
ドアの前でよいしょっと僕が降りやすいようにしゃがんでくれた。
『ありがと……、』
脚が小鹿のようにぷるぷると震えているが頑張って家の鍵を開ける。
家に入るとやっと安心できた気がした。
「なんか、食べたいものある?」
冷たいものが食べたいな、
『とまと』
「わかった、買ってくるよ」
ウェンは玄関に向かい靴を履こうとしていたが、確か冷蔵庫にあったなとふと思い出した。
『たぶん、冷蔵庫にある』
「あ、ほんと?」
「切って持ってくから寝といてね、」
うん、と簡単に答えて寝室に向かう。さっきの夢の事を思い出しながら、
【🍱🦖視点】
部屋に篭ったカゲツの匂い。窓を全開にして換気を促し一命を取り留めてる。
襲わないように頑張って耐えているけど体は正直で僕のはパンパンに膨れていた。
冷蔵庫を開けると、カゲツが言っていた通りトマトがあった。が、それ以外には水、コーラ、エナジードリンクしか入っていなかった。冷凍庫を見てみると、ギッシリと冷凍食品がいた。ドン引きするほどカゲツの食生活が不安だ。
取り敢えず、食べやすい大きさにトマトを切り丁度いいお皿に盛りつける。
自分の鞄からα用の抑制剤を一粒飲み、ドアをノックした。
「カゲツー?入るよ?」
カゲツの寝室?自室?に入るとむわっとした濃いフェロモンの匂いが溢れ出た。
さっき抑制剤を飲んだからほんとギリギリ耐えれた。
部屋を見渡すと机の上に強めの抑制剤の空箱が七箱ぐらい置いてあった。箱には埃が被っていて、書かれた製造日を見てみると全部一ヶ月前だった。
「___一ヶ月でこんなに、」
『んぁ、うぇんぅ?』
布団に包まっていたぴょこっとカゲツが顔を出した。
「あっトマト切ったよ。食べれそう?」
『ん、』
食べさせてと言わんばかりにあーんと言いながら口を開けた。
「もーしょうがないなー」
喉仏が上下に動き、飲み込んだのを確認するとまた口の前にトマトを差し出す。
沢山切ったつもりだったけど、カゲツは全部ぺろりと食べきった。
『ごちそぉさん』
「あ、抑制剤飲んどきな」
Ω用の抑制剤をビニール袋から取り出し、水を入れたコップを持ってまたカゲツがいる寝室へ向かう。
持ってきた抑制剤をカゲツは慣れた手付きで飲み込んだ。
「_よし」
わしゃわしゃと無意識にカゲツのふわふわの頭を撫でていた。だけど気持ち良さそうに眼を細めた。
「買い出し行くけど、食べたいものある?」
流石に冷凍食品だけ食べさせるのは気が引けるからタッパーとかに入れてレンジで温めるだけの簡単に食べれるご飯を作っておくために。
『……..ハンバーグ』
何か少し考えた後、ぽつりと呟いた。
「了解👍じゃあちょっと行ってくるね」
『ウェン、ほんまにありがとう。……行ってらっしゃい』
行ってらっしゃいと言ったカゲツは、どこか悲しそうで…今にも壊れそうなのに我慢して笑顔になっている感じがした。
「僕に隠してる事ない?」
『……………』
少し目が見開き、きょろきょろと目を泳がせた。
「__やっぱりなんか隠してるよね、なに?」
『ウェンは知らんくってええよ』
「ほら」
『…だからッ
ぷいっと僕から目を逸らし、布団に潜り込もうとしていたがそれを阻止する。
「言って」
僕から眼を逸らさないようにカゲツの顔を抑えて紫紺と深緑の眼を覗き込む。
いつかどこかでこの眼を見たことがあるような、懐かしいという不思議な感覚に襲われた。
『__ウェンは覚えとらんの?』
眼に涙が溜まり、一層輝きが増した。
『昔、…僕を助けてくれたときのこと』
【🥷🔫視点】
「え、」
『___覚えとらんか』
『やっぱ、なんでもない』
ウェンの手を解き、今度こそ布団を被り包まった。
「___ごめん…、いってくるね」
部屋を出て、この家から出て行く音が聞こえた。
『初恋やったのになぁ(小声)』
何度か諦めようと思ってた恋、でも諦め切れなくて。やっと伝えれたのに、
『なぁ、そこにいるんやろ』
何もない壁に話しかけるとベッド脇に音もなく跪いた人が現れた。服に雲を基調とした家門が刻まれている。見た目も声も中性的で男か女か判別ができない。
?〈__流石お世継ぎ様、御当主様から御命令でやって参りました。鶴(カク)と申します。〉
『情報回んの早いな…、それに世継ぎじゃないし兄様がおるやろ』
確か警察の方にも伝があったはずだから多分そこからだろう。
鶴〈お兄様は継がれるつもりはない、と仰っていて、〉
鶴〈御当主様から御命令を与えられました、帰ってこい、とのことです。我ら叢雲家により厳重な管理の下、保護されることでしょう。〉
鶴〈お世継ぎ様の体は、何年も来てない発情期が溜まりに溜まって今出ている危険な状態です。御実家に戻り適切な治療した方がよろしいかと、〉
鶴は淡々と簡単に情報を伝え、僕に手を差し出す。
保護って…どーせ監禁やろ?
『ゲームやれる?』
鶴〈多分出来ると思われます、〉
誰も僕の事を知らないとこに逃げったってヒーロー達は僕を捜そうとするだろうな、抗ってもどうせ無理矢理連れていかれる、
久しぶりの実家帰りと思えば良っか
『じゃあカク、行こか』
よろけながら頑張って立ち上がり、カクの手を掴もうとした。
さっき抑制剤を飲んだからもうだいぶ楽だ、
「ッカゲツ?!その人誰っ?」
ドアが乱暴に開けられた。
ウェンだった。まだ買い出しに行ってないのか軽装で、だけど汗だくだった。
鶴〈お前っ!次期当主様にどんな口を聞いている!?!〉
「へ、と、当主?カゲツが?」
鶴〈お前知らないのか?!代々伝わる叢雲家の正式なッ
『カク、黙って』
鶴〈しかしっ!〉
『ええから、……僕のこと誰にも言うてない』
鶴〈っ、そうでしたか、失礼を働いたこと深くお詫び申し上げます。では………カゲツ様、そろそろ行きましょう〉
『おん、ウェンごめんな。今日のこと全部忘れといてな?』
これで最後かぁ、いややなぁ。
「_____…忘れられるはずないだろ!!」
「さっき思い出したんだ。小学生ぐらいの時、僕達出会ったことあったよね」
やっと僕の事思い出してくれたのは嬉しいが、もう一生会えない。もっと早く思い出してくれたら、両思いになれたんかな、
『思い出すのが遅いわ、あほッ』
ほっぺがくすぐったくなり触ってみると濡れていて、やっと泣いていることに気がついた。
『あれッ、?』
鶴〈__カゲツ様、行きましょう。どこの馬の骨とも分からない奴の戯れ言など無視すればいいのです。〉
『____…』
「カゲツ!」
鶴〈カゲツ様!〉
鶴は僕の手を無理矢理掴み、床に煙り玉を投げつけた。感覚で分かったが叢雲家の人間には効かないように訓練させられている強い麻痺毒が混じっているようだ。
こんなん正面から喰らったらウェンまともに動けんくなるぞ、
…僕が普通の家に生まれとったら付き合えたんかな。敷かれたレールを進まんといけん家に生まれとらんかったら、どれだけ良かったら
「カゲツ!」
鶴が掴んでいる手の反対側の手が強く握られ引っ張られ、鶴から奪われないようにと背を向け僕を庇うように強く抱いた。
「知らないの?毒が効かない恐竜だっているし眼が良いんだよ」
抱かれているから分かるが明らかにウェンは強がっていた。さっきの麻痺毒のせいか手や声が震えている。
『ッ……グスッ』
涙がだらだらと流れ、ウェンの肩を濡らしていく。
鶴〈お前っ!殺されたいのかっ!!〉
鶴はクナイを取りだし、猫のように威嚇する。
「ねぇ、カゲツ。番になろ?(小声)」
鶴には聞こえないほど小さな声で耳元で囁かれる。普段ふざけたような声からは考えられないほど低く心地好い声だった。
『…こんな、僕でええの?(小声)』
ずっと好きだった人に告白され嬉しいけど僕のせいで今後ウェンに何かあったら、と思うと心配でたまらない。
今までβって偽っていたΩの僕でも、
忍務で人を殺めたこともある僕でも、
これからも人を殺めるかも知れない僕でも、
愛してくれる?
「カゲツがいい(小声)」
僕を抱く力が少し増し苦しい、がそれも僕にとっては堪らなく嬉しかった。
僕もウェンがいい、とウェンじゃないと嫌だ、と言いたいが嬉しすぎて喋ろうとしても嗚咽混じりの声が出る。
『ッぼくっうぇんやないとッいややっ(小声)』
僕もウェンを抱く力を強くする。どれだけ周りの人達が世間が世界が僕らの関係を赦さなくてもいい、ただ離れたくない。
「ッ、噛んでいい?(小声)」
もう一生離したりしない、地獄でもどこまでも無理矢理着いていってやる。
『ッかんでっ』
これからお見合いで知らん誰かと結婚するくらいなら、駆け落ちしてでもずっと好きだった人と結ばれてたい。
これ以上、僕の恋を縛らんでくれや、
ブチッとウェンの鋭い歯で皮膚が引き裂かれる、首裏に電流が走ったかのように痛い。でも幸せでいっぱいで気持ち良くて体がほわほわする。
今まで手や脚に付いていた重い枷がやっと外れた気がした。
鶴〈ッっ!お前なんて事をッッ!!〉
鶴はウェンの首にクナイを突き付けた。それでもウェンは怯まず、手から血が溢れ流れてもクナイを掴み焦点を首から離していく。
「カク、だっけ?当主に伝えといて、カゲツのこと大切に思ってるならこれ以上手出しすんなって」
鶴〈今日は一旦帰ってやる、だがいつか又来る。その時まで首洗って待っておけ、なぶり殺してやる。〉
鶴は漫画のような捨て台詞を吐き、音もなく消えた。
ウェンは僕を抱きながら一緒にベッドに倒れ込んだ。
勃っているウェンのが僕の脚に当たっていた。
今から、という事やろうか、でもウェンは絶対僕のペースで進めてくれる。
「……僕、独占欲は人一倍強いからね」
僕のうなじから流れる血を舐めながら、そう言った。
僕も興奮しているからか、フェロモンが一層溢れ出たのが分かる。
『のぞむところや』
「いつでも良いから、いつかカゲツの全部教えてね」
結局その日に手は出されず看病をされるだけでカゲツの発情期が終わってもウェンからお誘いがないことに不満を持ち、無理矢理ウェンを押し倒したのはまた別のお話
終わり
なんか、気のままに書いてたら駄作が出来てしまった。一応めちゃつえー短編集の🐙🌟×👻🔪のオメガバースの世界線のつもりです。
補足、小学生の頃カゲツが襲われても監視が助けなかったのは、カゲツの父親がカゲツに外は怖いと教えるためです。監視役は挿れられる瞬間に助けるつもりでした。とさ!!
長くてゴメンね!!!!!!
コメント
2件
こ、、、これが駄作?! なぁに言ってるんですか! これは紛れもなく神作です\(^o^)/ゼッターイ