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#女主
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リスカした後に洗わないせいでカッターにはすぐに血の塊ができボロボロになる。新しく歯を出し、左手首に綺麗な線そこからすっと小さい赤い何かが浮かび上がる。痛みは感じる。深く切れる訳でもない。もう一度すっと同じ場所に歯を入れる。そうすると少し深く切れ込みが入り、赤い線がじんわりと出てくる。何度か赤い線を増やし、なんとなく満足してティッシュで拭き取りあとは眠るだけ。
寝て起きて会社に行き、自傷をするだけの繰り返し。自傷後は少しテンションが上がり、今日は偉いじゃんと褒められ。これじゃやる理由が増えちゃうよ、とも言えず。これだから人の印象なんてあんまり役に立たねぇなと思いながら。屋敷に顔を出そうと指輪をはめる。
「おかえり、主様。」
ボスキは部屋で私を心待ちしているかのように出迎えてくれた。
「ただいまっ!」
いつもより機嫌がいい主様を見て彼は少し緩やかな顔をしたが、すぐに元の顔に戻る。
「寒くなかったか?暖かい飲み物、何かいるか?」
「ん〜、緑茶がいいな。」
「少し待っててくれ。」
ボスキは主様の要望したものを用意するため少し席を外した。一人になった主は、はぁ、とため息を付き左の袖口に指を入れ凸凹したリズミカルな跡を触る。瘡蓋が指に引っかかる感覚を感じた。「もしも血が滲んだりしたらどうしよう。」などとちょっとした考え事をしながら裾から見える傷口を見る。
そうこうしているうちにノック音が部屋を響かす。主がどうぞ。と返事をするとボスキが緑茶を持ってきてくれたのだった。
「どうぞ、主様。」
「ありがとう。….美味しいね。 」
主がそう言うとホッとした顔を見せた。「そうか。」と顔を緩める。
「今日は、どうだったんだ?」
「ん〜、なんかまぁ、いつも通りだよ。あ、でも褒められはしたかな。」
「頑張ってるな。こっちに来たからには休んでくれよ?」
「うん。そういうボスキは?」
「俺は普段通りだな。昼寝とトレーニングだな。」
ニヤリとした顔で彼は言う。
「そっか。」
そう言い、無意識に左手首を掻くと。右の指先に血が滲む。それに気付いたボスキは一瞬瞳孔が開く。少し考えたどり着いた結論に冷静になり、冷静なトーンで言葉を放った。
「….なんかあったか?」
彼の放った言葉に躓きを感じ。
「どうしたの?」
と聞き返す。主様。
「悪ぃな、ちょっと、嫌な予感がしてな。もしかして、切ってないか?」
主様は一瞬面食らって固まるが。もう誤魔化しても無駄な様な気がして「うん…..」と言葉を放った。
ボスキは「…..そうか、見せたくなら断ってもいい。だけど今から手当しねぇか?」と言ってくれ。ゆっくりと頷く主。
「ちょっと、待っててくれ。」
「うん。」
ボスキは同意をとれ安心し、急ぎ足で救急箱を取って戻ってきた。その間主様に何があったのかと思い巡らせて、納得感が無いではないが、少し驚いたし、もっと早く気付いてやれば良かったと思った。
急いで戻ると主様は笑顔で俺を迎え入れてくれた。辛いのに無理して笑わなくていいのに。と思うのだが自傷後のなので多少スッキリしているのかもしれない。自傷はその場を生き延びるための行動なのだから。無理に辞めろというものでもないが、自分を傷付けることに抵抗が無くなれば最終的に死に行ってしまう可能性ある。なかなか難しい話だよな。とボスキは言う。
「道具、持ってきたぞ。見せてくれるか?」
「うん。」
主様が袖を捲ると、新しい傷が数本、白っぽくなった凸凹の古傷が手首から腕へと広がっていた。それに対してリアクションを顔に出さないようボスキは気を付けた。正直、思ったより長い期間やっていたのだろうと痛ましい気待ちだった。
「消毒して、軟膏塗って包帯巻こうな。」
「わかった。」
主様は少しぼんやりした表情で傷を眺めている。
「少し染みるかもしれねぇ。」
そう声をかけ消毒液が染みてるガーゼで優しく傷口を拭うと少し瘡蓋が溶けたように、じんわりと赤茶色の色が移る。ボスキはそれをゴミ箱に入れ軟膏を手に取る。
「後、傷の治りをよくする薬だ。これは染みないと思うぞ。」
そう声を優しくかけ丁寧に薬を塗る。
「あとは包帯だな。」
ボスキがそう言いながら包帯を手に取る
「巻ける?」
主様がぱちくりと瞬きをし問う。義手を気にしてくれているのかと思ったが主様いわく「やり方知らないと難しくない?」との事。
「そうでもねぇよ、生憎器用なほうなんでな。」
ボスキは実際それほど義手になってから器用ではないが主様はあまり深追いせず受け入れてボスキを受け入れた。シュルシュルと包帯を巻き別の包帯を切って抑えるように結べば完成。
「終わったぞ、また帰るときは俺に言ってくれ。」
「わかったよ。」
少しの沈黙のあと、ボスキは迷いながら質問する。
「何時からだ?」
「え?」
「いつから、切り始めたんだ?嫌だったら答えなくていい。」
「….これが?えっと、今回のは昨日で、切り始めたのは10年前ぐらいからかな。でもこの5年は多くて数回。今残ってる傷は10年前から7年前のかな。」
「そうか。今回に関してはなんかきっかけがあったのか?」
意外とすんなりと教えてくれた。過去に興味がない訳では無いが、それはまだ早いと思い今回の話を限り聞いた。
「んー….わかんない。」
主様は説明が疲れるからこういうのだと言った。ボスキは思った事があった。だから何か具体的なYESorNOorクエスチョン聞けば何が原因に辿り着けると思いもう少し質問を尋ねた。
「そうか。仕事か何か上手く行かなかったりしたか?」
「違うよ。」
主様は首を横に振った。
「そうか。まぁ別にもし上手くいかねぇ事があっても自分を責める必要はねぇからな。そうだな….ダルいやつとか居たか?何か言わされたりとかしたか?」
「….!」
少し硬直した後主様の何かが解けたようにみるみると泣き顔になって言った。当たらしい。
「すまねぇ、あんま言わねぇ方が良かったよな。」
ボロボロと涙を流す主にボスキは謝った。主様は取り乱しながらもそんなことはない。と首を振る。
「少し、背中触らせてもらうぞ。」
断りを入れてから左手で主の背中をさすった。
「大丈夫だ。辛かったらずっとここに居てもいいんだ。みんな主様のことを全力で守る。帰るところも□□□を大事に思う人も、必ずここに居る。」
しばらくそうしていると、主様はゆっくり落ち着きを取り戻した。
「ボスキありがとう。実はハラスメントされてて、色々あるけど、言われた言葉がフラッシュバックしちゃって。」
具体的に何があったか話はしたくないようだが、ボスキは大体理解した。震えながら言葉に詰まりながら発した声だった。
「….辛かったな。俺が全部ぶっ飛ばしてやれたらいいんだけどな。」
ボスキがそう言うと主はふふっと微笑みを浮かべた。
「そうだね、ぶっ飛ばすって気持ちで戦った方がいいのかも、それでダメだったらここで暮らしてもいいかも。」
「あぁ、でも無理しないでくれよ?」
「うん。」
主様はハラスメントを名指しで相談するは検討する事にした。ボスキが主様に言う「ぶっ飛ばす」や戦うという意味は分からなかったけど、主様の判断なら大丈夫だろうと考えた。
「今日はゆっくり寝た方がいいんじゃねぇか?俺は一緒夜更かししてもいいがな。」
「うん。少し本読んだら寝ようかな。 」
「寝れなかったら呼んでくれよな?」
「ありがとう。」
「一つ相談だが、自傷の事は他の執事に知らせてもいいか?」
「ん〜、びみょー、ルカスやミヤジ、ベリアンやハナマルは驚かなそうだからいいけど。」
「わかった、ルカスさんだけに言う。」
「うん。」
「じゃあ、おやすみ。また明日な。」
「うん、おやすみ。」
主はボスキが出た後に包帯を優しく撫でた。大事に思っていると思って少しむず痒くなったが実際湧いて少し心が和らいだ。その日の夜は落ち着いて眠ることができた。