コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
完結編
「若井、お前、今日の会議資料は?」
「今やってます!……ていうか、先輩がやるはずだったやつですけど!!」
「“やるはず”だっただけな。俺が“やる”とは言ってない」
「あ゛あ゛あ゛あ゛……(地獄)」
若井はクマのできた目でPC画面を睨みつける。
大森は相変わらず椅子にふんぞり返って、スマホでゲーム。
「先輩、それでよく給料もらえますね……」
「お前が働いてくれてるおかげでな。感謝してるよ〜?(してない)」
若井のイライラが限界に達したその瞬間――
「……もう、限界なんすけど」
ぼそっと呟いた若井の声に、大森がピクリと眉を上げた。
「お? なんだよ、反抗期?」
「反抗期じゃなくて、労働基準法です」
「へえ〜、だったら俺を訴えりゃ?」
「……ッ、ほんっと最低ですね」
「お前が黙ってるから、俺が王様でいられるんだよ」
──深夜。誰もいなくなったオフィス。
若井がついにブチ切れて、大森の机に書類を叩きつけた。
「おい大森! いい加減にしろよ!!」
大森は驚いたように振り返り――次の瞬間、にやっと笑った。
「やっと吠えたな。……でも遅ぇーんだよ」
ぐいっと腕を掴まれ、そのまま床に押し倒された。
「な、なにして……っ!!」
「お前が俺に逆らうなんて、100年早えーよ」
大森はわざと顔を近づけて、若井の耳元で囁く。
「お仕置き、してやる」
ぐっと手を掴まれ、逃げられない。
顔が近い。呼吸が詰まりそうな距離。
「や、やめ……っ、ぐ、苦しい……!」
「ほら、抵抗すんなって。余計長引くだけだぞ」
キスの寸前まで顔が寄ってきて――
──翌朝。
若井はデスクで仮眠をとっていた。
「おはよ、若井。ちゃんと全部終わってたな。おつかれさん」
「……え、先輩?」
ふと見ると、机の上にはコーヒーとどら焼き。
「……買ってきたんすか?」
「いや、横領。会社の経費で」
「……やっぱ最低ですね」
「知ってる。でもお前、俺の下じゃなきゃ今頃もっと潰れてんぞ?」
若井はため息をついて、どら焼きを手に取った。
「……まあ、他の部署よりマシって思っときます」
「ほらな? だから、今日も俺の分、よろしく〜」
「結局働かねえのかよ!!!」
「うっせ〜〜、後輩く〜〜ん」
──終わらない地獄の中に、ほんの少しだけ慣れてきた若井の、終わらない日々。
THE END
若井さん 報われてほしいね。