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体育祭(2)

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体育祭(2)

1 - 第7話

♥

27

2025年03月12日

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プログラムの変更


相澤先生が急にプログラムを変更してきた。メンバーは、多分トーナメントにいない人たち。


頭を抱えながら周囲を見ると、私以外の1A女子がチアダンサーになってるじゃないか!随分可愛い姿に!


いや、私は着るタイプじゃないから避けて通れて良かったと思うけど。


「相澤先生、さっきのことなんですが、そんなこと急に決めちゃって大丈夫なんですか?ほら、いくらメディアに出ないと言っても、トーナメント出てる予定の子たちが可哀想じゃないですか」


グラウンドから退場口に移動して、周りの生徒に聞かれないように話す。インカムで話しているから、相澤先生たちの声は私にしか聞こえないけど。


「不満か」


「不満っていうか…..なんかそれ、ズルになりません?正々堂々しないっていうか….男らしくないと思います」


「そうは言うがなぁ愛嶋」


マイク先生?


「さっきの会話。俺たちにもさすがに聞こえてんだ。たしかに俺らはお前の存在や個性が世間に露出するのを恐れてる。けど、だからってお前がなんでもかんでも背負って我慢してねぇ理由にはならない。

やりてぇんだろ?」


そりゃあ…..やりたいかやりたくないかで言えばもちろんやりたい。けど、さすがに強引がすぎるんじゃ….。


「俺たちがただ時間稼ぎのためにお前たちに試合しろと言ってるわけじゃない。障害物競走に騎馬戦。あいつらが成長する機会があったのにお前にだけないのは、それこそ正々堂々としてないだろ」


そ、そう言われると、たしかに…..?


「まだ動きたりねぇって生徒はいるんだ。胸借りて練習させて貰え」


……うん?


「レクリエーションに参加してる生徒達に朗報だ!今から飛び入り模擬試合を行う!メンバーは、俺たち教師陣の独断と偏見だ!早速名前を読んでくぜ!

1年A組 蛙水梅雨!」


「ケロッ?!」


遠目から見てもわかる。梅雨ちゃんが驚くのも無理はない。


「1年B組!円場硬成!」


「円場今トイレです!」


「マイク、御手洗ですって」


伝えたのはミッドナイト先生。


「了解!1年B組!凡戸固次郎!」


…..相澤先生は胸を借りて練習させて貰えと言った。まさか、それは、…..いや、2対2だよなさすがに。梅雨ちゃんと組んで2人でB組の円場くんと凡戸くんを突破しろってことだな?


「そして!1年A組!愛嶋ゆう!」


切るところが、なんだか腑に落ちないのは気の所為かなマイク先生?


「マイク先生….あの、梅雨ちゃんはいいとして、円場くんも凡戸くんも、急にグラウンドに来いはちょっと無理があるんじゃ….」


「いや!どうやらノープロブレムだ」


入場口に2人の影が見える….や、やる気満々だ。


「そして愛嶋」


インカムから聞こえるマイク先生の声。


「この通信は一旦切れるぜ。それでは良い模擬試合を!」


「マイク先生?!」


と返事する間もなく、ブツンと一方的に切られてしまった。たしかに着いてたらズルになるし、仕方ない。

3人はセメントス先生が作ってくれた対試合用のステージに上がろうとしている。今の放送の間にレクリエーションをしていたみんなは退場したのだろう。迅速な行動だ。私も早くステージに上がろう。


「飛び入りで悪いなリスナーたち!協力感謝するぜ!今回は愛嶋強化訓練も兼ねているため、1対3で行う!

ルールはトーナメントと同じく、どちらかが場外または行動不能になったら勝敗が決まる。さて準備はどうかな

アーユーレディ?!」


NOに決まってるが?!何を言ってるんだ

1対3?!ミッドナイト先生!これは講義だ!

ミッドナイト先生の方を見ると、何やらコンパクトなホワイトボードに何か書いて私に見せてくる。


“ 現場のプロヒーローにも同じことが言えるの?人数不利だから引き返せって? “


「うっ…..」


た、たしかに…..。今日は体育祭。模擬試合。だけど現場に行ったらこんなことは日常茶飯事。急に決まったこととは言え、私を気遣ってくれてる所を見るとキャンセルでとか言えない….。


よし。腹を括ろう!

まずは相手を分析。梅雨ちゃんはカエルにできることはだいたいできる….水場が得意だからかなり厄介。B組の2人はあんまり顔合わせたことがないな….。


「作戦会議は終わったかァ?!」


「それでは両者位置について?」


『レディ・ゴー!!』


まずは凡戸くんが何やら白い物を吐き出した。とりあえず水で受けて….って、くっついた?!接着剤みたいな物か?私と同じ広範囲攻撃….!

後ろからの圧を感じて慌てて交わすと、ズザッと正方形のなにかが落ちる。これは….固い!檻っぽいのを作るのが円場くんの個性…..。

そして最も気をつけないといけないのがこの伸びる舌!!

身体を引いて交わす。接近戦の梅雨ちゃん・拘束の凡戸くん・ 逃げ道を塞ぐ円場くん。

即興でこれは良いコンビネーション。弱点が突きづらい!


そうだな….。

相手の動きとしては、円場くんで私の行く手を阻み、凡戸くんのトラップを形成の後、梅雨ちゃんが私を投げてトラップにはめて行動不能….ってところか。

そうすると、まずは凡戸くんが厄介だな。


この間のUSJ事件のあと思いついたことやってみるか。


3人の攻撃を交わしつつ、意識を背中に向ける。そんなに広い範囲じゃなくていい。私の身長くらいの横幅でいい。


「どうしたの愛嶋ちゃん。攻撃しないと勝てないわよ」


「う、うん」


わかってるんだよ梅雨ちゃん。だけどまず足場を整えないと、このままじゃ凡戸くんの有利な足場になってしまう、

3人を戦闘不能にする必要はない。場外にすれば勝ち。


円場くんが中距離からじわじわ追い詰めて来て、梅雨ちゃんが近距離で詰めて来る。このままじゃこっちが場外になっちゃうな…..なんて。

円場くんの檻を水で足場にして、3人がこっちに来るよう仕向ける。もっと。もっとだ。…..この後、凡戸くんが2人を守ったら厄介だ。円場くんの檻を水で浮かせて、3人の視界に入らないくらいまで上昇させる。昔から水遊びは得意だったんだ。


それを凡戸くんの背後から近づけて….途中で加速する!

凡戸くんは頭から接着剤を出して自分の前に広げてる。それって、お辞儀したら自分にくっつくとか、ないかな?!


「おーっとぉ!!円場の個性が愛嶋の水によって凡戸の後頭部を直撃ー!!したかに見えたが、凡戸!後頭部から接着剤を出して防御!」


さすが…..だと思うけど、それはフェイクに過ぎないんだよな!


円場くんが作り出す檻を水で打ち返したり操ったり。


「甘いわ愛嶋ちゃん!!」


梅雨ちゃんに向かって打ち返した円場くんの檻。正方形の檻は梅雨ちゃんに弾かれた。でも梅雨ちゃん。その方向に弾いたのは良くないな。

元々弾かれる前提で回転をかけて打ち返してたから、いい角度で、


「ぶっ?!」


「凡戸!!」


後ろの凡戸くんに当たるんだな!


そして怯んだ今がチャンス!!

背中で貯めてた水たち!大波を起こせ!!


「っケロ?!」


「っうわっ?!」


ただの大波だったら円場くんと凡戸くんがいたら止められてた。だけどこれはただの大波じゃない。

円場くんの檻と、凡戸くんの接着剤がくっついた、それはもう頑丈も頑丈なカウンターだ。


「っうわ〜っ!!」


「うわぁあっ?!」


「ケロォッ…..、」


床にくっついて頑張ってるのは梅雨ちゃんか。怪我させたくないんだけど、ごめん。


私は水の粒を高威力にして大量にぶつけた。小学校のプール前のシャワーって痛くなかった?圧迫された高火力の水が、欲しくなって威力を増して降って来たら、そりゃあ痛いよね。

梅雨ちゃんごめん。君にそれをする!


「! 蛙水さん!!」


円場くん、土壇場で檻のガードか…..。いいよ。押し流してあげる!!


違う!

本命はこっちじゃない!!


振り向くと梅雨ちゃんの舌が目の前まで来ている。どんなに伸びるんだよこの舌!

前線の水の威力は削いじゃいけない。むしろ増やすべき!!

この舌、本当は首を絞めて引きづろうとか、私を投げて場外にしようとしてたんだ。

恐ろしいな…..水でガードする?そんな時間は無い!だけど大人しく捕まるつもりは無い。周りは凡戸くんの接着剤。一部は硬くなって地面にくっついたままなんだ。

どうする!水の火力で押し切るなら、この舌が怯めばいい。一瞬、一瞬だけ….!!

殴る?いや、腕は掴まれちゃダメだ。いざという時に抜け出せない。首もダメだ。丸めの、……あぁ!


私は梅雨ちゃんの舌先に唇を当てた。

細い棒状の物なら今までたくさん巻き付けて来ただろう。でも、これは難しいんじゃない?視界も悪い状況で身体の一部を触らせると意外と分からないように、これは普段触るような場所じゃないから考えるでしょ。そのうちに….、


「押し切れェ!!」


大波の火力を上げて体制を立て直す暇を与えない!


「蛙水さん・凡戸くん・円場くん 場外!

勝利、愛嶋さん!」


よし!





トーナメントが始まるアナウンス。壁に持たれながら水分を補給していると。


「愛嶋ちゃん!!」


おぉ。梅雨ちゃん、どうした、


「さっきはありがとう」


いや、こちらこそ。


「自分を大切にしてちょうだい。男の子に、あんなことしたらダメよ」


まさか。しないよ。


「ならいいけど….」


梅雨ちゃんがヒーロー科の客席に戻って行く。


「いいなぁ。俺があの場にいたかった….!」


「汚らわしいですわよ 峰田さん!」


「どんまいやったね 梅雨ちゃん」


「えぇ。最初の連携は上手くいっていたのだけれど」


本当はみんなと一緒の席にいたかったけど….。


「Heyリスナー!お疲れィ!じゃ、放送室に戻ってきてくれ」


まぁそうだよな。

トーナメント戦が始まった。最初は緑谷くんと心操くん。緑谷くんにはぜひ勝って貰いたいと思う反面、心操くんが何をしようとしてるのか、期待している自分がいる。


「ごくろうさん」


放送室に入ると、相澤先生が声をかけてくださった。マイク先生は実況中。


「ありがとうございます」


「忠告だが」


うっ….やっぱり力でゴリ押しした方が良かったか、?


「ああいうのは絶対に男子にしないこと。いいな?」


え、あ、はい…..。そっちなんだ…..。さっきの試合で使った水分を補給しないと。




「1回戦!成績の割になんだその顔

ヒーロー科 緑谷出久!VS ごめんまだ目立つ活躍なし!普通科 心操人使!


ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にするか、あとは” まいった” とか言わせても勝ちのガチンコだ!!

ケガ上等!こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!道徳倫理は一旦捨ておけ!

だがもちろん、命に関わるよーなのはクソだぜ!!アウト!

ヒーローはヴィランを捕まえるために拳を振るうのだ!そんじゃ早速始めよか!

レディ….START!!」


まいった とか言わせるのもありだったのか….場外に出すことしか考えてなかった。

もしかして梅雨ちゃんはそれを狙って舌の攻撃をしてきたのか?本当恐ろしいな。


開始早々緑谷くんの動きが止まった….恐らく、個性にかかってしまったんだろう。


「だからあの試験は合理的じゃねぇって言ったんだ」


相澤先生は2枚の紙をチラつかせた。


「ん?何?」


私は見ない方がいいだろうと思ったので視線は反らしたが、気になる。まぁ同じ空間にいれば聞こえてしまっても仕方ない。


「二人の簡単なデータだ。個人戦になるからまとめてもらっといた。心操 あいつ、

ヒーロー科の実技試験で落ちてる。

普通科を受けてたのを見ると想定済みだったんだろう。あいつの個性は相当に強力なものだが、あの試験内容じゃそりゃポイント稼げねぇよ」


そういえば入試は戦闘用ロボットが相手だったと聞く。心操くんの個性は人間に効いても無機物には効かない…..。


緑谷くんが出口に向かって歩き出して….止まった。さっきから耳に入ってくるのは心操くんの声。ミッドナイト先生のインカムから意図せず入ってくるんだ。


「指を動かすだけでそんな威力か 羨ましいよ。俺はこんな個性のおかげでスタートから遅れちまったよ。恵まれた人間には分からないだろ」


!!


「誂え向きの個性に生まれて 望む場所に行ける奴らにはよ!!」


心操くんは緑谷くんに言っている。そんなのは分かってる。けど、私に言っているようにも聞こえるんだ。


私は恵まれている。

家族・環境・個性…..それ以外にも五体満足で生まれたこと。生活に支障がないこと。USJ事件があったのに、脱水症状で済み無事だったこと。

私は雄英高校の入試だって受けてない。それはプロヒーローたちが私の個性をヴィランが狙うからと言ったから。

災害のあと、調査を実施しなければ。私以外にも優秀な個性を持った人間はいくらでもいる。その中で私が選ばれた。私は、恵まれていた。気づいたら、それが当たり前になっていた。


でも、それは違う。


私は将来を期待されたんだ。将来、多くの市民を守るから。だから個性を守らなきゃ。まだ小さな幼虫が成虫になるまで、私は守られていた。


だからこそ、その期待を背負って強く在らねばならない。今はまだ蛹でも、早く成虫になるために蓄えなきゃならない。期待を。されてるんだ。


「心操くん場外!」


ミッドナイト先生の言葉でハッとする。


「緑谷くん 二回戦進出!」


投げられた心操くんは立ち上がって、それで、普通科のみんなから称えられていた。

あの金髪の子もいる。


あの子は正直気に食わない。私が嫌いだからって、ヒーロー科のみんなをバカにしていいわけが無い。

けど、それだけじゃない。あの子は、心操くんに期待してるんだ。私がヒーロー科のみんなのことが好きなように、彼女も心操くんが好きなんだ。……あの時、論破してしまった。感情に寄り添うことが出来たら、もう少し変わってたかな…..。


水分を摂ろうと水筒を開けると、中身が空だった。しまった。買いに行かないと。


「ちょっと自販機行ってきます」


「あんまり遅くなるなよ」




何があるか分からない。もしさっきみたいに尺を作ってくれと言われるかもしれないし、これだけ警備を強化してもヴィランが攻めてきて戦闘になるかもしれない。水分のストックは持っておくべきだ。…….と言っても、オールマイト先生もエンデヴァーさんもいる。なのに正面から攻めて来るヴィランってどうなんだとは思うが。


自販機自販機…..あっ!


「心操くん!」


「……なに」


ロビーの休憩用のソファに座りながら、グラウンドを見る心操くん。私は目的の自販機を通り過ぎて心操くんに近づいた。


「さっきの!その….恵まれてる個性っての、すごく、響いてきて、……自分のこと、見直すきっかけになったの。私も恵まれてる。それは思った、」


「何?自慢話なら他所で…..」


「っ続きがあるんだ、」


私は座ったままの心操くんの右手をとった。私は上手く話すことが苦手だ。いつも伝わらない。けど、これは伝えたい。


「だからね、心操くん、一緒に行こう!同じ目標を持ってるんだ。一緒に強くなろう!」


「……あの、」


しまった、喋りすぎてしまった。


「だ、だから…..その、言いたいことは….つまり、練習相手になって欲しいって、ことなんですけど…….」


「………..」


心操くんは何も言わず私を見上げた。伝わったかは分からないけど、とりあえず言いたいことは言った!


「考えといて?」


心操くんの手を離して、自販機に向かう。水でいいや。お金を入れて….ボタンを押…押…..いやこの自販機高さ高くない?!グローバル化か!!


後ろから ぬっ と伸びてきた手。私の頭を通り過ぎて、ボタンを押した。


ガコンと水が出て来るよりも後ろが気になって振り返ると、


「愛嶋さんさ。変わってるって言われない?」


心操くんが、立っていた。


「い…..言われる」


「ズレてるとか言われない?」


「言われる…..」


「やっぱりね」


不敵な笑みを浮かべて去って行く背中。


「あ、ありがとう!」


心操くんに助けられたのは、今日で2回目だな。




放送室に戻ると、もう二回戦が始まっていて…..っていうか終わっていて。轟くんの個性で氷付けにされた瀬呂くんが見える。


というか、轟くんの氷の範囲広すぎないか?!マイク先生は驚きすぎてサングラスズレちゃってるし。

私、エンデヴァーさんの “ うちの焦凍には敵わん。覚えておけ ” に対して気合いで 

” ご忠告ありがとうございます “ とか言ってしまったけど、正直轟くんに勝てる気がしない…..!


それから先も試合は進んでいき。

塩崎ちゃんVS上鳴くん は塩崎ちゃんの勝利。

飯田くんVS発目ちゃん は飯田くんの勝利…..というか、開発商品の説明に当てられたというか…..。

青山くんVS 三奈ちゃん は三奈ちゃんの勝利。

常闇くんVS ヤオモモ は常闇くんの勝利。

切島くんVS鉄哲くんは引き分け。引き分けは回復時間の後腕相撲….。男らしい!

次は爆豪くんVSお茶子ちゃんだ。

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