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その日も、主はいつも通りの平凡な一日を過ごしていた。21歳、東京のとあるオフィスで働くサラリーマン。毎日、長時間のデスクワークに追われ、やっと終わった仕事の後にふとスマートフォンを開いて異世界転生の小説を読むことが、唯一の楽しみだった。
「今日も、魔王を倒して最強の力を手に入れるパターンか…」
「でも、こういうのを見ると、なんか羨ましくなるんだよな。」
現実に満足しているわけではない。むしろ、何か刺激が欲しくてたまらなかった。異世界転生、チート、最強、冒険、そんな言葉に胸を躍らせては、日々の退屈さを紛らわせていた。
「俺も、転生して強くなったりして…」
「まぁ、あり得ないけど。」
その考えが頭をよぎった瞬間、ふと目を上げた。目の前には歩道を走っているトラックが見えた。そのトラックは、明らかにスピードを出しすぎている。そして、その前方に、無防備に道路に飛び出してきた小さな子供が見えた。
「危ないっ!」
声を上げたが、間に合わない。トラックは、居眠り運転のようでブレーキをかけることなく、子供に向かって一直線に走っていった。
「あの子供、避けなきゃ!」
無意識に駆け出す。しかし、反応が遅すぎた。子供が目の前にいるのを確認した瞬間、どうしても体が動かなかった。
「無理だ、間に合わない…!」
その時、身体が無理に動いた。目の前の子供を突き飛ばし、自分が代わりにトラックに突っ込んだ。
「…!」
トラックのタイヤが身体に直撃し、強烈な衝撃が全身を貫いた。痛みが一瞬にして全てを支配し、目の前が暗闇に沈んでいった。
意識が途絶え、世界は完全に静寂に包まれた。
意識が戻ると、そこは何もない空間だった。まるで、無限の白に包まれたような感覚。あたりは静寂に包まれており、どこにも道は、建物は、景色は見当たらない。すべてが白い空間に包まれている。
「…ここは?」
不安と疑念が頭をよぎる。あの瞬間、確かに自分は死んだはずだ。しかし、ここにいるということは、生きているのだろうか。それとも、これはどこかの異次元に迷い込んだのだろうか。
その時、前方にぼんやりと光が現れた。その光が次第に強くなり、そこから一人の人物が現れた。彼は、まるで神々しい存在のように、純白のローブをまとっており、その光だけがこの空間の中で輝いていた。
「君が転生する者か。」
その人物の声が響いた。
「転生…?」
「俺が…死んだのか?」
「そうだ。」
その神のような人物は淡々と話し続けた。
「君の命は、この世界で終わった。しかし、君には新たなチャンスが与えられる。」
「新たな命を与え、別の世界で再び生きることができるのだ。」
「異世界…?」
目の前で繰り広げられる現実が、まるで映画のワンシーンのように感じられる。現実にはあり得ないはずの話だが、目の前にいる人物の存在感が、それを疑わせることはなかった。
「その通り。」
「君の願いを聞こう。新しい世界では、君に力を授けよう。」
「そして、最強を目指すのであれば、それに見合った力を与えることもできる。」
最初、主はその話を信じることができなかった。しかし、次第にその人物の言葉が現実であることを理解し始めた。どうしても信じられない自分が、どこか遠くで死んでしまったことに、どうしても納得できなかった。
「最強…」
「俺、最強になれるのか?」
自分が最強になる?そんなことが現実になるとは思えなかった。でも、目の前の神のような存在がその可能性を示しているのなら、試してみる価値はある。
「君がその力をどう使うかは、君次第だ。」
「最強を目指すのであれば、君に与える力はそれに見合ったものとなる。しかし、力だけでは成し遂げられないこともある。」
「その先に待つ冒険、成長、試練が君を待っている。」
主は少しの間考え込み、そして決心した。
「わかった。最強になるために、頑張ってみる。」
「やっぱり、異世界で冒険して、強くなるのもいいかもしれない。」
その決意に対し、神のような存在は静かに微笑んだ。
「よろしい。」
「君には新たな命と力を与えよう。しかし、君がその力をどう使うか、どう成長していくかは君次第だ。」
「君の冒険は、これから始まる。」
その言葉が終わると、再び視界が光に包まれ、意識は遠のいていった。
次に目を開けると、主は広大な草原に立っていた。眼前に広がるのは、見慣れた風景ではない。青い空、遠くに見える山々、そしてあたりには風が吹き抜け、草花が揺れている。異世界であることを実感する一瞬だった。
「これが…異世界か。」
「本当に来ちゃったんだな。」
驚きと興奮が入り混じった感情が胸に広がった。これが自分の新たなスタート地点だと思うと、胸が高鳴る。しかし、同時に不安もあった。いったい自分がここで何をすればよいのか、どうやって最強になっていけばよいのか、全く見当がつかない。
「まずは、ギルドでも行ってみるか。」
「仕事でも探して、少しずつ力をつけていこう。」
そう決心し、主は歩き出した。その先に見える小さな村のようなものが、どこか安心感を与えてくれるように思えた。