※須藤北斗視点
「ボス! 対象の監視はいいんですか?」
「黙れケビン! 今の俺にはそれ以上にやらなきゃいけないことがあるんだよッ!」
この際アイツの弱みなんて二の次だ。
今は――そう。
アイツの家から出てきた謎の美女。
彼女を俺の女にするッ!!!
それにしても、まさかあんなに綺麗でエロさがあって俺にドストライクな女がいたとは……抱きたい。
今すぐに抱きたいッ……!!!
「りょうちゃーん」
「どうした?」
「呼んでみただけっ」
「名前だけ呼ばれること、最近多いな」
クソッ!!!
あの男、俺の目ェつけた女とベタベタ仲よくしやがって……!!!
イラつく!!! もうそいつは俺の女だぞッ!!!!
チッ……!!!!
どうすればあの女を俺のモンにできる!!!
定石どおりに行けば弱みを握って、そっからだが……クソッ!!
我慢できない早く抱きたいッ!!!!!
こんな感覚、久しぶりだぜ……。
もういっそのことさらっちまうか?
いや、こんな街中だとリスクたけぇし、万が一あっても揉み消すには……チッ!
あァークソッ!!!!
目の前にいるってのにもどかしいィッ!!!!
「ボス! 奴ら路地を曲がっていきました!」
「なにィッ⁉ 急いで追え! 絶対に見逃すなよ!!!」
「イェッサー!」
慌てて俺たちも路地を曲がる。
――しかし。
「あれ? どこにもいない?」
おかしい。
さっきここを曲がったばっかりのはずだ。
こんなすぐに姿が消えるなんて、そんなの……。
「俺たちに何の用だ?」
「ッ⁉」
後ろを振り向く。
するとそこにはさっき前を歩いていた男と、俺が一目惚れした女が立っていた。
な、なんでバレてんだァッ⁉⁉⁉
♦ ♦ ♦
須藤と体格のいい男二人と向かい合う。
三人は俺と瞳さんを驚いたように見ていた。
そりゃそうだ。
俺たちが“最初から”尾行に気が付いているなんて思ってもいなかっただろう。
実を言うと、俺が一ノ瀬や花野井と帰っているときから須藤がついてきているのには気が付いていた。
でもまさか家の前まで待ち伏せされているとは……やはり相当恨みを買ってしまったらしい。
「で、一体何の用だ?」
「っ!!!」
それにしても、変な変装だな。
カツラにメガネ、そしてマスクって……普通に不審者だろ。
「い、いやぁすみません。ちょっと気になりましてね!」
須藤がいつもの優等生モードで接してくる。
あれ? もしかして今、俺が九条だってバレてないのか?
いや、そうか。
今は髪もセットしているし、これで一ノ瀬にはバレなかったわけだし。
「何がだ?」
「つかぬことをお聞きしますが……そちらの女性とはどういう関係で?」
「どういう関係って、それは……」
「将来を約束した仲、かなぁ?」
「なにィッ⁉⁉⁉」
「ひ、瞳さん?」
「私はそのように解釈してるけどなー?」
「俺はしてないんだけど」
なんで俺の周りは、勝手に俺を巻き込んだ解釈をしているんだろう。
別に俺はフリー素材じゃない。
「で、では交際しているとか?」
「してるよ?」
「してない」
「じゃあこれからしまーすっ!」
「そんな話聞いてない」
「いやどっちィッ⁉⁉⁉」
咳ばらいをして、俺が先に答える。
「してないよ。どういう関係かと聞かれるとかなり難しいけど」
「そ、そうですか。ふぅ、ならよかった」
須藤が安心したように爽やかな笑みを浮かべる。
そしてメガネとマスク、そして最後にカツラを外すと瞳さんの前まで歩いてきた。
「すみません、わけあってこういう恰好をしてたんですが……本当はこっちです」
「へぇー。変装とかイマドキの人はするんだね」
「しないから」
俺のツッコみに須藤は小さく微笑むと、瞳さんに白い歯を見せて言った。
「実は僕、あなたに一目惚れしてしまいまして。もしよかったら、今からお茶でも行きませんか?」
なんと、びっくりした。
まさか須藤が瞳さんに一目惚れするなんて。
いや確かに、この人の容姿の美しさは群を抜いている。
実際店でも大人気だし。
さて、瞳さんがどう出るか気になったのだが。
瞳さんは考えるまでもなく、さらりと答えた。
「ごめんね? 私、りょうちゃん以外眼中にないんだー」
にへらと瞳さんが俺を見て笑う。
「……え?」
「お誘いはありがたいんだけど、君なら他にいくらでもいるでしょ~? そっちでお願いしますっ」
そう言いながら、瞳さんが俺の手を取る。
「ほらりょうちゃん、行くよ? 買い出しに時間かかるんだし」
「う、うん」
須藤は固まり、俯いていた。
その横を通ろうと歩き出す。
「ちょっと待った」
すると須藤が引き留めてきた。
「……いくら欲しいですか? いくらでも出しますよ?」
なるほど。
実に須藤らしい手だ。
――しかし。
「お金じゃ愛は買えないからねぇ。ごめんね?」
「ほ、ほんとにいくらでも出しますよ? あなたが望む額を言ってくれれば……」
「お金じゃないからさー」
「じゃあなんですか? 俺はそこそこイケメンだし、スペックもかなり高いですよ?」
自分で言うかそれ。
「そういうのでもないんだよねぇ。なんていうか結局、その人と一緒にいる時間とか思い出が愛を育むからさ。だから難しいねー」
「ッ!!!」
「じゃあねー」
瞳さんが歩き始める。
俺も並んで元の道に戻ろうと進んでいく。
――しかし。
「ケビン、ブラッディ」
立ちはだかるガタイのいい男二人。
……なるほど、そう来たか。
♦ ♦ ♦
※須藤北斗視点
……嘘だろ?
なんでこの女も俺に靡かねぇんだ!!!
おかしいだろ最近ッ!!!!
クソッ!!! クソクソッ!!!!
俺様がこんな無様に女に振られるなんてありえねぇ!
あっちゃいけねぇ!!!!
俺が欲しいと思ったものは、もう俺のモンなんだよ……!!!
ヒヒッ。
逃がすかよォ……そいつはもう、俺の女だぜェ?
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