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ガタイのいい男が二人、俺と瞳さんの前に立ちはだかる。
「何のつもりだ?」
「欲しいと思ったものは必ず手に入れたくなるタチでねぇ。このまま帰すわけにはいかないなぁwww」
須藤が俺たちの退路を塞ぎながら、嘲笑交じりに言う。
「彼女を置いていけば僕たちからは何もしません。……でも、断るって言うなら痛い目に遭ってもらいますよ?w」
「痛い目、ね」
男二人が余裕のある笑みを浮かべながら指を鳴らす。
体つきを見るに、相当実戦経験を積んでいそうだ。
それにそもそも数的不利。
須藤が得意げになるのも頷ける。
――しかし。
「瞳さんは渡さない」
力強く言い放つ。
「さすがりょうちゃん! 頼りがいあるぅー!」
「瞳さんはもう少し危機感を持ってくれ」
「危機感? なんで私が持たないといけないの? だってりょうちゃんが味方してくれるんでしょ? なら怖いものなんてないよ」
「そ、そっか」
どうやら俺は瞳さんに相当信頼されているらしい。
傍から見れば圧倒的に劣勢なこの状況でも。
「いいんですね?wあとから後悔しても知りませんよ?www」
「後悔するのはどっちかな」
「ッ!!! このヤロォ……!!!!!」
須藤が顔を歪ませる。
そして自信に満ち溢れた様子の男二人に声をかけた。
「ケビン、ブラッディ!!! そいつをボコボコにしろッ!!!!」
「「イェッサー」」
野太い声で応答すると、少しずつ近づいてくる。
「逃げるなら今の内だぜボーイ?www」
「二度と歯向かえないようにしてやるぜwww」
ニヤリと笑みを浮かべると、二人が同時に俺に襲い掛かってくる。
顔面狙いの素早いパンチ。
――しかし。
「ッ⁉⁉⁉」
二撃ともさらりと避けてみせる。
「ハッ! 少しはやるみたいだな……」
「次は必ずぐっちゃぐちゃにしてやるぜ!」
軽いフットワークで再び距離を詰めてくる。
今度は懐に入り込み、顎狙いの攻撃。
しかしそれも避け、待ち構えていたもう一人の蹴りもしゃがんでかわす。
「ッ⁉ な、なにやってんだお前ら! 早くやれッ!!!」
「わ、わかってる!」
「畳みかけるぞブローッ!」
立て続けに攻撃を繰り出してくる。
しかし、そのすべてを俺は避けた。
確かにこいつらは強い。間違いなく実力者だ。
でも俺には通用しない。
なぜなら俺の方が――強いからだ。
「ッ⁉」
攻撃を避けるとすぐさま懐に入り込み、みぞおちに一発叩き込む。
「ぶはッ!!!!」
「ブローッ!!!!!」
倒れこむ男。
「ウオォオオオオオオオオオ!!!!」
もう一人の男は怒りに任せ、猛スピードで俺に突っ込んできた。
しかし、寸前でかわし男の背後に回る。
そしてガラ空きになった後頭部に手刀を入れた。
「ッ!!!!」
なすすべなく地面に倒れこむ男。
どうやら狙い通り気絶したようだ。
「なにィッ⁉ け、ケビンとブラッディがこんなにもあっさり……!!!」
「次はお前か?」
「ひぃっ!!!!!!」
須藤が後ずさりする。
俺はさらに須藤との距離を縮めた。
「瞳さんを置いていかなきゃ痛い目に遭う、だっけ?」
「ッ!!!!!」
あの二人より須藤が弱いことは明らか。
須藤もそれを自覚しているからこそ、真っ先に出てこなかったのだろう。
つまり、これで勝負あり。
俺たちのか――
「――フッ。やれェッ!!!」
須藤がニヤリと笑うと、背後から殺気を感じる。
振り返ると先ほどみぞおちに一発入れた男が立ち上がり、俺に襲い掛かってきていた。
そして間もなく俺の顔に拳が到達するだろう――そのとき。
「――りょうちゃんに触るな」
「ッ⁉⁉⁉」
瞳さんが男の腕を掴み、勢いを利用して投げ飛ばす。
男はそのまま地面に叩きつけられ、白目を剥いて倒れた。
「えぇッ⁉ け、ケビンが投げられたァッ⁉⁉⁉」
須藤が瞳さんを見て、驚いたように尻餅をつく。
「さすが瞳さん。やっぱりまだまだ鈍ってないね」
「当たり前でしょー? 伊達に治安の悪い路地裏で暮らしてきてないからねぇ」
瞳さんは高校卒業後、一人で家を出て暮らしてきた。
瞳さんのような美人がこういうところを一人で歩いていたら、そりゃガラの悪い男に絡まれるわけで。
そこで身を守るために護身術を身に着けたらしく、こうして実はめちゃくちゃ強い。
場数も幸か不幸か踏んでおり、実力者とは言え手負いの男には絶対に負けない。
「で、私に一目惚れしちゃったんだっけ?」
「へ⁉ え、えっと……」
瞳さんが須藤に近づく。
そして須藤を見下ろすと、いつものゆるゆるとした表情のまま言い放った。
「りょうちゃんより強くなってから出直しな、坊や?」
「ッ⁉」
瞳さんは普段ゆるいが故に、こういう時の怖さはレベルが違う。
その凄まじさを須藤は痛感したようで、自信に満ち溢れていた顔が今は恐怖に染まっていた。
「く、クソォオオオオオオオオオオオ!!!!!」
須藤が走り去っていく。
その背中を眺めていると、瞳さんが俺の腕にくっついてきた。
「あぁー怖かったー。守ってくれてありがとね、りょうちゃんっ♡」
「あはは……」
守ったというか、守られたというか……。
とにかく、何事もなく解決できてよかった。
♦ ♦ ♦
※須藤北斗視点
なんなんだよ! なんなんだよォッ!!!!
あの美女強すぎんだろ!!
あの男強すぎんだろォッ!!!!!
俺の中で最強の手駒だったのにィッ!!!!
しかもあんなのが九条の家にいるなんて……!!!!
だが、須藤北斗という人間がこのまま終わってはいけない!
俺は常に勝ち組でなきゃいけないんだァッ!!!!
俺は急いである場所に向かった。
場所は――高層ビルの最上階。
重々しい扉を勢いよく開く。
「聞いてくれよ、父さんッ!!!!」
声をかけると、窓の方を向いていた椅子がくるりと回転した。
「どうした、“息子”よ」