テラーノベル
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天界には時間の流れがほとんどなかった。
朝も夜もなく、空はいつだって淡い光に包ま
れている 。
その中で2人の天使は出会った
一人はよく笑う子だった。
初めて会った日から人懐っこくて
「 ねぇねぇ、君のお名前は?」 と
距離をつめるのが早かったのを今も覚えて
いる
もう1人は静かな子。
必要なことだけを話し、あまり感情を出さない
けど誰よりも周りを見ていて、困っている
天使がいれば黙って助けていた。
性格は正反対
なのに、いつも一緒にいた
「今日も人間界見てもいい?」
天真爛漫な天使が雲の端から下をのぞき込む
「 ……規則、知ってるでしょ」
クールな天使はそう言いながらも止めはしない
自分も興味があったからだ、人間に情を持っていた
「大丈夫だよ、ちょっとだけだもん」
「ちょっとが長いんだって」
そんな会話を繰り返しながら、
2人は同じ空を見て、同じ景色に心を動かしてきた。
人間が笑うところ
泣くところ
誰かのために、誰かが手を伸ばす瞬間
「ねぇ、不思議だね」
天使の子が言う
「あんなに弱いのに、あんなに優しい」
クールな天使はその言葉に答えなかった。
ただ、胸の奥が少しだけ痛んだ。
その”痛み”の理由に、気づかないふりをして。
裁きの日は、突然だった
「 人間に情を向けすぎた」
それだけで、十分だった。
静かな天使は弁解をしなかった。
否定もしなかった。
ただ、一つだけ思った。
“あの子に、知られたくない。”
堕天を告げられ、天界を離れる直前。
彼女は振り返って友達を見た
天真爛漫な天使は何がおきているのかわからない顔をしていた。
それでもいつも通り笑おうとして_
途中で唇が震えた。
「…行かないで」
その声に胸が締め付けられる
「大丈夫」
堕天使となった天使は精一杯優しく言った
「私は、平気だから」
嘘だった。
怖くて、寂しくて、戻れないことをわかっていた。
それでも笑った
「あなたは、ここにいて」
それが最後のお願い
光が落ちる。
羽が消える。
天界の空が遠ざかっていく。
残された天使は、ただその名前を呼んだ
何度も、何度も。
名前を呼び続けても、返事はなかった
天界は相変わらず淡い光に満ちていて、何事も無かったかのように静かだった
それが余計に残酷だった
「……なんで」
天真爛漫だった天使は初めて声を震わせた。規則も、裁きも、堕天も何一つちゃんと理解できなかった。
ただひとつ分かるのは
隣にいたはずの存在が、もういない
ということだけ。
それから彼女は人間界を覗かなくなった
笑顔も減った
雲の端に立つこともなくなった。
周りの天使たちは言った
「時間が経てば、忘れるよ」
「感情は薄れていくものだ」
でも、天界に時間がほとんど存在しないのなら
忘れるということも起きなかった。
胸の奥に小さな穴が空いたまま、埋まることはなかった
一方人間界。
堕天した彼女はそらを見上げることをやめていた。
見上げてしまえば、もう戻れない場所を思い出してしまうから。
翼はない。
光はない。
名前さえ、呼ばれなくなった。
それでも。
人間の中で、彼女は変わらなかった
泣いている女の子がいれば、そっと寄り添った
助けを求める声があれば、気づかれないように手を差し伸べた
「やっぱり私は…」
独り言のように呟く
「情を捨てきれない」
その瞬間、胸の奥が_
天界にいた頃と同じように、少しだけ痛んだ。
そしてある日。
人間界の空に、見慣れない光が揺れた
堕天使は思わず立ち止まる
ありえない。
ここに、あの光があるはずがない。
それでも心が先に理解してしまった
「…嘘」
空からゆっくりと降りてくる影。
羽はある
でもどこか以前より不安定で
光は以前より弱い
「…やっと見つけた」
震える声。
堕天使は息をのんだ。
「 …なんで来たの」
天真爛漫だった天使は昔のように笑おうとして
でも、上手く笑えなかった
「だって…」
1歩、近づく
「置いてかれたままなんて、無理だった」
天界の規則を破ったこと
罰が下るかもしれないこと
全部わかってた
それでも。
「一緒に居たいって気持ちの方が強かった」
幼い子供のように笑った
堕天使は何も言えなかった
言葉にすればもう戻れない気がして
代わりに、ただ_
そっと手を伸ばした、
触れた瞬間2人の胸に同じ痛みが走る。
でもそれはもう
逃げるための痛みじゃなかった
「…ただいま」
その一言に天使の瞳から光の粒がこぼれ落ちた
「おかえり」
天界でもなく、人間界でもない場所で
2人はようやく、同じ時間を生き始めた。
コメント
1件
作者のひなのと申します🙇♀️ なぜ1人しか堕天しなかったのか 堕天してしまった天使は自分が情を持ってしまったことを自覚していた、情を選んだ存在、だから堕天してしまった。 天真爛漫な天使も間違いなく情を持っていたのは確かです、ただ情を選んだのではなく、感情としてもっていた 裁かれるほどの覚悟をしていなかったということ。語彙力ないですね 情を持ってはいけないと解釈してくださった方がいいです!