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Side 健治
朝、会社のデスクに積み上げられた書類を前に、ため息を落とし仕事を始める。
左手の薬指に嵌められた結婚指輪に視線が止まり、ふと美緒の事を思い出す。
昨晩、お風呂から上がると、既にリビングが暗くなっていて、酷く寂しく感じられた。
可愛く頬を膨らませて怒っていた美緒だったのに、抱きしめた後は、なぜだか素っ気なさを感じてしまい不安が胸に広がる。
だが、秘密を抱えた後ろめたい気持ちが、そのように見せているのだろう。
気持ちを切り替えて書類に向かうとデスクの電話が鳴り響く。
一瞬、野々宮関連の言い掛かり的なクレームを想像したが、そんな事はなく同僚の立石から病欠の連絡だった。
過剰に反応している自分に苦笑する。
予定を組み替え、病欠した部下の穴を埋めなければならない。
自分のスケジュールを組み直し、後日に変更出来るもの、急ぎのものと振り分け、病欠した立石のフォローに回る。
そして、病欠した立石の予定をチェックする。
「立石の今日の予定は……」
予定表には、藤川区の医院にお昼休みを利用しての勉強会が入っていた。
こればっかりは、既に何日も前から医院と日にちの調整を行い。お弁当の手配をし、資料を準備しているはずだ。絶対に穴を開けられない予定だ。
具合の悪い立石には悪いが、折り返し連絡を入れて、詳細を確認する。
聞けば、準備はすでに昨日の内に終わっており、機材を車に積むだけで、仕出し弁当予約などの手筈は整っていた。
「おだいじに」と電話を切る。
もしかして、と期待を込めて詳細の資料に目を通す。
すると、やはり、美緒の勤めるさくら薬局の隣にある、蒔田医院での新薬説明会だ。
*
お昼の時間帯を利用して開催される新薬説明会。
午後12時半には、藤川区にある蒔田医院に到着した。
駐車場に車を止めて機材の最終確認をしながら仕出し弁当屋の到着を待つ。
午後1時頃まで午前中の患者さんの診療が残って居るようだ。蒔田医院の受付に行き、挨拶を済ませ車の中で待機する。
少しすると仕出し弁当屋さんが来たのでお弁当を受け取り、午前の診察の終了を待つ事になった。
蒔田医院から出た患者さんが、となりのさくら薬局に入って行くのが見える。
あの中で美緒が忙しく働いているんだろうなと想像すると、退屈な待ち時間も楽しく思えた。
先程、声を掛けた受付の事務員さんが医院の中から出て来て、午前の診察が終了したことを教えてくれる。蒔田医院長へ挨拶しに医院内に入り、挨拶が終わると受付の待合室に仕出し弁当を配る。すると、受け付けの事務員さん達が、テンション高めで分配を始めた。
そうだよなぁ。豪華弁当だもんなぁ。と心の中で思いながら事務員さんの喜んでいる様子を見てホッとする。
機材を運び込んでスライドのスクリーンを設置していると事務員さん達の話が、どうしても耳に入る。
「となりの薬局5個だっけ?」
「そうそう」
「そういえばさぁ。となりの菅生先生、三崎先生と仲がいいよね」
《《となりの菅生先生》》⁉という、言葉が聞こえ、どうしても聞き耳を立ててしまう。
「知っている。この前、お昼休み菅生先生が具合悪いとかで、二人っきりで処置室に入って治療してたんだよ」
「えーっ!なんか、やらしー」
ハハハと、笑いながら話す事務員さん達の話の内容に心臓がバクバクと音を立てている。
腐女子の栗