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prmz
地雷 さん ばっく 。
えせ 関西弁 ちゅーい 。
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差し出された皿の上で 、 立ち上る湯気が淡いヴェールのように俺らの視線を遮る 。
無造作に盛られたパスタからは 、 香ばしいニンニクの匂いと 、 どこか懐かしい体温のような熱が漂っている 。 それは 、 この数時間 、 雨に打たれ続けて麻痺していた俺の嗅覚を 、 鋭い爪でひっかくように刺激した 。
「 … 食えよ 。 冷めるぞ 。 」
促されるまま 、 俺は震える手でフォークを握った 。
けれど 、 一口食べる前にたまらなくなって 、 自分からおにーさんが座る椅子のすぐ近くまで 、 自分の椅子を引き寄せた 。
ガタ 、 と床を擦る音が 、 静まり返った部屋に不器用に響く。
ほんの数センチ 、 肩が触れそうな距離 。 おにーさんは自分から距離を詰めたりはしないけれど 、 俺が踏み込んだその領域を 、 追い出すこともなく黙って受け入れた 。
一口 、 熱い塊を喉の奥へ流し込む 。
それは 、 凍てついていた俺の五感を乱暴な優しさで叩き起こし 、 胃の腑の底に重たい鉛のような安心感を落としていった 。
噛み締めるたびに 、 自分の中にあった “ 孤独 ” という名の氷が 、 不快な音を立てて砕けていくのが分かる 。
「 … うまい 、 かも 。 」
「 だろ 。 俺 、 意外と器用なんだよ 。 」
おにーさんが少しだけ誇らしげに目を細める 。
その時 、 俺を覗き込んだおにーさんの瞳 。
暗闇を鋭く射抜くその光は 、 出会った時の刃のような冷たさを潜め 、 今は蜂蜜を溶かした水面のように穏やかで 、 けれど底知れない深さを湛えて 、 俺の食事をじっと見守っていた 。
その光が 、 何の宝石に似ているのかなんて 、 今の俺にはまだ分からない 。 ただ 、 その光に照らされている間だけは 、 自分が透明なゴミではないような 、 そんな錯覚に陥りそうになる 。
温かいものを胃に入れるたび 、 俺の中にある棘は鋭い殺意を逆立てて暴れだす 。
この熱を知ってしまったら 、 次に外の冷たい雨に打たれた時 、 俺は今度こそ立ち直れなくなるんじゃないか 。
そんな予感が 、 喉の奥を甘い毒のような恐怖で痺れさせた 。
「 …… 名前 、 聞かへんの 、 ? 」
俺は縋るような思いで 、 隣に座る彼の袖をそっと 、 指先で摘んだ 。
自分から触れていなければ 、 この温もりが夜露のように蒸発して消えてしまいそうな気がしたんだ 。
彼は一度だけ 、 俺の指先が作る袖の皺を見て 、 それから視線を窓の外の闇へと投げた 。
「 … いらねーよ 、 そんなもん 。 今はただ 、 飯食って寝るだけでいいだろ 。 」
その突き放すような 、 けれど俺を何者でもなくしてくれる言葉は 、 透明な刃となって俺を縛る過去を切り離していく 。
俺は摘んでいた袖にぎゅっと力を込めて 、 その瞳から零れ落ちる淡い黄金色の静寂に 、 もっと深く沈んでいたいと願った 。
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コメント
1件
なんでそんなにうまくかけるの~~~~? 続きが楽しみすぎて仕方なくなっちゃったじゃん!