そういえば…
「 不破さん、頭に激痛とかありませんか? 」
「 ? んや、特にないっスね… 」
不破さんは頭をグラグラと揺らし、軽く叩き、確かめた。私が偽ワタクシの横腹からナイフを抜いた時、とてつもない激痛が私の横腹にも走った。今も尚痛みは続いている。先程不破さんは偽不破さんの頭を銃で撃ち抜いていたから、同様に痛みを感じてるのでは無いか?と思ったが、そうでもないらしい。
私が偽ワタクシからナイフを抜いた時と、不破さんが偽不破さんにトドメを刺したのとで、何が違うのだろうか。ただ単に、偽の自分と痛覚共有をしている、という訳では無いようだ。
「 社長はどっか痛いんスか? 」
「 えぇ、まぁ … 正直喋るのが辛い程、脇腹が結構痛くて 」
「 えぇ!? 全くそんな感じしなかったっスけどね 」
束の間のいつも通りの雑談に、楽しいな、と感じた。
「 … と、そんな話してるヒマは無さそうッスね、社長 」
「 です … ね 。 私も微力ながら不破さんに御力添えさせて頂きますよ。 」
“ まだ寝ている高校生に、指1本触れさせる訳にはいかない “
… そんな共通認識を、互いに見つめあって、確認した。それぞれ、私はナイフ、不破さんは拳銃を握り締めて。
痛む横腹を抑えながら、ヨロヨロと立ち上がってくるワタクシを見つめた。
同様、比較的軽傷だった偽の剣持さんも起き上がってくる。不破さんは剣持さんを冷たい眼差しで見据えていた。
『 …やりますね、ウチの不破くんを殺るなんて 』
『 流石、コピーといった所でしょうか 』
刀をちゃき、と構え、こちらを突き刺すような瞳で見ている。
冷静を装う彼の声色は、どこか怒りを含んでいた様な気がした。
『 … 社長 、 まだ動けそう ? 』
『 えぇ、なんとか … 』
『 あまり無理はしないでよね 。こっちは甲斐田くんが来るまで耐えなきゃいけないから 』
『 もちろんです … ただ、少し時間をください。 傷を回復させなければならないので 。 』
『 分かった、時間は稼ぐ。だけどなるべく早く来てよね 。 』
…そう、会話をしているニセモノ達に、不破さんは静かに拳銃を構えていた。
狙いを定め、息を潜め。
その姿はまるで、手馴れのスナイパーの様だった。
ゆっくり、引き金に指をかけて、
不破さんは、躊躇いなく、引き金を引いた。
___ バン!という銃声音と、弾丸を弾く金属音が辺りに派手に鳴り響いた。
続く






