短編集です。
knhb
1顔合わせで初めて出会った世界線
「こんちはー!!渡会雲雀です!!」
挨拶の声を聞いた時に、自分の中の心臓がぎゅ、と掴まれた感覚がして、退屈な控え室で項垂れていた顔が反射的に上がる。
その時からもう、僕の心は、雲雀の手の中にあったのかもしれない。
この心臓にはもう、雲雀がいる。
雲雀がいれば、どんな危険な時でも脈を打つ。
雲雀が居なくなったらきっと、脈は止まるだろう。
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2出会っていない世界線
冬の駅前、16時30分。もう日が傾いて月が顔出す頃。
イヤホンで世界の音をシャットダウンしていたが、不意にギターの音が聞こえて外してみると、心地のいい、でも力強い音が耳に入って、音の在処を探しながら歩く。
バンドだろうか、顔のいい4人組がギターをかき鳴らして、そのうちの1人は歌っている。
その歌は太陽のように人々を照らして行くような、夜に似合わない声。ーーいや夜だからこそ、惹かれていくのかもしれない。
月を押しのいて、世界の均衡を崩してでも輝きそうな、光の種。
立ち止まって聞いているとボーカルの人と目が合って、くしゃ、と顔を崩して笑いかけられる。
その瞬間に、星が舞うような感覚に陥って、こいつは太陽で、月を押しのけようともしずに、月や、星々をただ輝せ続けるのだろうか。
そこまで考えて、涙が滲むのを感じて踵を返し帰路につく。
17時30分。もう真っ暗で、星が出てきていた。
星が出てきた時、あの人を思い出す。
あの人の顔を思い出すと、元気が出て、自分も頑張ろうと思える。
不思議な感覚。初めての感覚。なのにいい気分だ。
僕は太陽に恋焦がれる輝けない星みたい。
「がんばろ〜っと」
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3奏斗を愛している雲雀の話
奏斗の髪が好き。光が当たるとキラキラと輝く黄金の糸。
奏斗の瞳が好き。キラキラと輝く星空のような瞳。宝石のような瞳。
奏斗の口が好き。綺麗な色で形の良い口。
奏斗の手が好き。手の皮が厚く、すらっとした触り心地のいい手。
全てを愛してる。
全部が好きなの。
でも見返りは求めない。大好きだから。
奏斗が愛するものを愛していきたい。
それが俺じゃなくとも。
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4 叶わない恋
好きにならなかったら、僕は幾分か楽だったのかもしれない。雲雀と出会わなかったら、楽だったのかもしれない。
でも今じゃもう、雲雀が居ないと生きていけない。雲雀がいない自分がどう過ごしているのか想像ができない。
どんどん雲雀への愛が強まってくと同時に、叶ってはいけないという心のモヤが離れようとする。
その心に気づいてしまって、伝えられるはずの言葉は途切れる。
叶わない恋というのは、なんて残酷なんだろう。
こんなにも雲雀を求めているのに、求める自分が嫌になる。
諦めたい。諦めたくない。雲雀が好き。大好き。
そんな耐えきれない愛は捨てきれなくて僕の心を重くする。
たすけて。雲雀。たすけないで。雲雀。
苦しくてたまらない。
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コメント
2件
もう、最高としか言葉がでません、😖💕💕