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「さーて、取り巻きBくんは気を失っちゃったかなぁ? Aくんはまだ起きてるみたいだねえ。ナイス根性!」
俺はそう言って取り巻きAのもとに跪き、エアリアルの切っ先を顔に突きつけた。
「ひっ……!」
「まだやる?」
言葉を返せないまま、涙目になる取り巻きA。
はい、勝負ありっと。
これ以上やったら弱いものイジメになっちゃうからな。
「——つーわけで、セルビスくんに言っといてくれ。俺はこれからもアシュレイくんに近づきまくるし、なんならくんずほぐれつチュッチュッの仲を目指すってな」
俺はエアリアルの実体化を解除して、立ち上がった。
「それに対して文句があるなら……テメーで直接言ってこい、腰抜け野郎」
取り巻きAにそう宣言し、踵を返す俺。
アシュレイと視線が交わった。
不安げだったその表情に、安堵の色が滲んでいっているようだった。
俺はサムズ・アップして、アシュレイに笑いかける。
こうして本件は一件落着——
「これですむと思うなよ! ブラッドレイ!!」
と思いきや、取り巻きAが大声を上げた。
(……んだよ、まだやられ足りないのかよ)
俺は若干うんざりしながらも、振り返る。
「あのさぁ、いい加減にしてくれる? しつこい男は嫌われるぞ?」
「お前は完全にギルモア公爵家に楯突いた! ただでは済まないぞ! セルヴィスさまの力で、お前なんかすぐに退学にしてやるからな!?」
取り巻きAは声を張り上げるが、その目には明らかに怯えが混じっている。悲しいほどの虚勢である。
「あーはいはい、セルビスくんに泣きつくのね。そんでセルビスくんはパパとママに泣きつくのかな? あーダサ。どーぞどーぞご自由に。こっちは逃げも隠れもしないんで。あ、でもアシュレイやリオンを巻き込むなよ。それやったらマジで殺すからな?」
いい加減早く帰りたかったので、俺は取り巻きAにはまとも取り合わずに、そのまま引き上げることにした。
「ほっといて行こうぜアシュレイ」
「しかし……」
「いーから、時間も無駄だ」
「あ……」
俺はそう言って、アシュレイを連れて歩き出す。
「後悔しろよ! ブラッドレイ!! 絶対に退学にしてやるからなぁ!!」
負け犬の遠吠えは、背後からいつまでも響いていた。
***
そうしてようやく辿り着いたマギナ寮の前。
あー疲れた。せっかく自室でも勉強しようと思ってたのに、その気がなくなっちゃったよ。
とっとと風呂入って寝よ寝よ。
「……グレイ」
「ん?」
入り口前で立ち止まった俺に、アシュレイがおずおずといった感じで声をかけてきた。
「本当にすまない。私のせいで……」
「もしかしてさっきのこと?」
「ああ」
アシュレイはうつむきながら頷く。
「いやいや、アシュレイが謝ることなんて何もないって。なにを勘違いしているのか知らないけど、セルビスのアホが暴走してきただけっしょ? ホント、キモいよな。ああいうヤツがストーカーとかになるんだぜ、きっと――」
「それでも、ギルモア公爵家の権力は本物だ! もし、今回のことで本当に君が退学になってしまったら……! そうしたら私はッ……!」
アシュレイは、俺の言葉を遮るように、取り乱した様子で声を上げた。
「大丈夫だって、心配すんな」
俺はそんなアシュレイの肩をポンと叩く。
アシュレイは不安げに俺の顔を見つめる。
「セルビスがどんな嫌がらせしてくるかは知らないけど、所詮は学生だろ? パパの力を使って学校に泣きついたところで、学校もそんなにヒマじゃねーよ」
「そうだろうか……」
「あーもう、そんな暗い顔すんなって! 俺は絶対に退学にならない! せっかくこうしてアシュレイと仲良くもなれたんだ。そんで、いざとなったらアストリッド家の使用人として再就職。それで万事オーケーよ」
「……それって、退学してるじゃないか」
「あ、そっか」
「……ふふっ」
俺の言葉を受けて、ようやくアシュレイはほんのり微笑む。
つられて俺も笑ってしまった。
「グレイ」
「ん?」
「今日は、ありがとう。……かっこよかったよ」
「え……かっこいい?」
俺が自分の顔を指差してそうつぶやくと、アシュレイはハッとしたように口を抑えた。
「あっ、いや、すまない! かっこいいっていうのは、その……! 魔法が凄かったってことだ……!」
顔を真赤にして、アタフタしだすアシュレイ。
「すす、すまない。グレイ! 今日はもう遅い。また明日にしよう! 失礼する!」
そのまま彼女は、寮の中に駆け込んでいってしまった。
一人残された俺は、しばらくその場に立ち尽くした後――
「好感度あがった~~~~~!!」
夜空に向かって拳を突き上げ、ガッツポーズ。
見たか? さっきのアシュレイの様子!
俺に対する好感度が上がったのは確定的に明らか!
セルビスの野郎さまさまだぜ。アイツがいい感じに引き立て役になってくれたおかげだ。
素晴らしい、素晴らしいぞ!
まだ入学初日なのに、このパーフェクトコミュニケーションっぷりはどうだ!?
このペースでどんどんアシュレイと仲良くなっていいけば、一週間後にはベッドインも夢じゃない――
「ふはははは……はーっはっはっはっ!!」
そんなアシュレイとのバラ色の未来に思いをはせながら、俺は一人高笑いを上げる。
そのとき。
「……なにしてんのさ、グレイくん」
「え?」
振り返ると、そこにリオンが立っていた。
「リオン? なんでここに?」
「なんでって、グレイくんの帰りが遅いから、探しに行こうと思ってたんだよ」
リオンは少しムッとした様子でそう答える。
「そうか、悪かったな」
「で、なにがあったの?」
「いーや、別に? ただちょっと俺の熱狂的なファンにサインをねだられちゃってさぁ、心を込めてファンサをしてたところだ。人気者はつらいぜ」
「ファン……?」
「ま、いいからいいから、部屋に戻ろうぜリオン」
「わ、ちょっ……!」
首を傾げるリオンの背中をぐいぐい押しながら、寮の玄関を潜った。
こうして長い一日がようやく終わった。
そして、後日――
俺は校長室に呼び出されていた。
コメント
1件
えーもうグレイかっこよすぎない!?😭💕取り巻きに「腰抜け野郎」って言い放つとことか、アシュレイを守るために戦う姿がまじヒーローすぎるんだが…!!そして「かっこよかったよ」って言われて照れるアシュレイが尊すぎてキュン死に寸前でした♡最後のリオンの登場も気になるし、次回が待ちきれない!!
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