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「どうした? この状況は予想出来て無かったか?」

「そうだな、これは想定外だったよ」


降参するのかと思いきや、榊原も懐から銃を取り出すと伊織に銃口を向けて威嚇する。


「俺とやり合う気か? まあ、負けねぇけど」

「まさか、そんな事する訳なかろう? 私はこうする為に出したまでだよ」


言って榊原は伊織たちの左横目掛けて数発の銃弾を撃ち込むと、横に積んであった木材の束が崩れ円香目掛けて倒れ込んでくる。


「円香、危ねぇ!」

「きゃあっ!?」


既のところで伊織が彼女の腕を引いた事で当たらずに済んだものの、その事に気を取られて榊原から銃口を外してしまったので、木材の束を撃って再び銃口を向け直した相手の方が優勢になってしまう。


「動くな! 動くと女を撃つぞ」

「……っち」

「形勢逆転だな。さて、どうする? 女を見捨てて私を撃つか? それとも、女と共に撃たれてここで死ぬか?」

「…………」

「伊織さん……私の事はいいですから、榊原を撃ってください」

「いい訳ねぇだろうが」

「決められないかい? それじゃあまずは、銃を捨ててもらおう」

「……ほらよ」


榊原に言われた伊織はすんなり持っていた銃を地面に投げ捨てる。


「素直だね。それじゃあ次は、円香、こちらへおいで」

「…………っ」

「行く事ねぇよ」

「円香、伏見くんを助けたいだろう? 大丈夫だ、今度はきちんと約束を守ろう」

「その手には乗らねぇ。円香、アイツの言う事は一切聞くな」

「で、でも……このままじゃ……」

「早くしたまえ、来ないと言うなら君たち二人のどちらかに急所を外して銃弾を撃ち込むぞ? 相手が苦しむ姿を見たいなら、そのままで居るがいい」


この状況、伊織は圧倒的不利でどうすべきか悩んでいた。


榊原は円香を自分の元へ呼び寄せた後、彼女を盾にして逃げるつもりだろうと伊織は睨んでいる。


(正直一番使いたく無かった手だが、これしか打開策がねぇ……)


「……円香、何があっても、俺を信じられるか?」

「……はい、信じます」

「分かった。それじゃあ、お前はアイツの言う通り、そっちへ行け」

「え?」

「いいから行け」

「…………分かり、ました」


突然伊織から榊原の元へ行けと言われた円香は驚くも、何か考えがあっての事だと彼を信じて頷いた。


「賢明な判断だな」


伊織に言われた円香は嫌々ながらも榊原の元へ近付くと、腕を引かれて身体を引き寄せられる。


「嫌っ……」

「暴れるな、大人しくしていなさい」

「…………っ」


離れようとするも、腰を抱かれてしまい身動きが取れなくなる。


「それじゃあ、私は円香とここを出る事にするよ。私たちが出るまで伏見くん、君はその場から動かないように。いいね?」

「ああ、この場からは動かねぇよ」


未だ伊織を警戒しているようで円香を盾にしつつ銃口を向け続けている榊原が倉庫のドアを開けようと一瞬銃口を下げた、その時、


パンッと乾いた音が聞こえたと同時に、


「うあぁ……っ」


呻き声を上げた円香は榊原の腕から崩れ落ちるように離れていく。


「なっ!? お前、女を撃ったのか?」


榊原が円香に目をやると、彼女の左ふくらはぎ辺りに銃弾が当たったのか、白いワンピースが血に染っていた。


「どうする? 盾に使う予定だった円香がそれじゃあ、使い物にならねぇよな?」

「まさか、その為に女を……」

「さてと、もうお喋りは終いにしよう」

「ま、待て! 話せば分かる! そうだ、金だ! 金をやる! 好きなだけくれてやる! だから考え直せ!」


この状況で自分に勝ち目がないと悟った榊原は一転して命乞いを始めるも、


「悪いが、俺は金に興味ねぇんだよ」

「なら、欲しい物は全てくれてやる! だから考え直してくれ!」

「うるせぇよ。そういう台詞は聞き飽きた。後悔するならあの世でしな」

「や、止めてくれぇ!!」


その叫びが、榊原の最期の言葉だった。


迷わず心臓に一発の銃弾を撃ち込んだ伊織によって榊原は生涯を終えた。


「……伊織、さん……」

「円香!」


榊原が動かないのを確認した伊織はすぐに円香の元へ駆け寄った。


「痛むか?」

「大丈夫……です、掠っただけ、ですし」

「悪かった。アイツを油断させて引き離すには、この方法しか無かったんだ」


伊織はポケットからハンカチを取り出すと、円香の脚に巻いて止血をする。


「分かってます。伊織さんが言ってくれたあの言葉で何か意図があるのは想像つきましたし、あのまま二人で居ても危険なだけだった。だから、私を一旦彼の人質として油断させて隙を窺っていたんですよね」

「ああ、そうだ。よく分かったな」

「それに、脚を狙った理由も、 分かりましたから」

「そうか……。けど、お前を傷付けてまでやる事じゃなかった……本当に悪かった」

「ううん、いいんです。私、ただ守られているだけは嫌だから。役に立てるなら、このくらいの痛み我慢できますよ」

「……円香、ありがとう。とりあえず、ここから出よう。外には忠臣さんや雷が来てる筈だ」

「はい」


円香を抱き上げた伊織が倉庫から出るや否や、


「伊織! 無事か!?」

「円香ちゃんも、大丈夫?」


忠臣と雷斗が二人に駆け寄って来る。


「円香ちゃん、脚怪我してるの?」

「ああ、すぐに手当してやりたい」

「あっちに救急車を用意してある。すぐに手当をしてもらおう」


忠臣たちはHUNTERの後処理を担う別組織や警察の上層部を呼んでいたようで、倉庫から次々に遺体が運ばれていく。


円香の手当をしてもらう為皆で救急車が停まっている場所まで向かっているさなか、少し離れた場所で一瞬何かが光っているのに気づいた伊織。


しかし、十時の方向から何かが飛んでくる気配を察知した時には既に遅く、円香を抱えて歩いていた事もあり反応が遅れた伊織は彼女に当たらないよう身を呈して庇うのが精一杯で、飛んできた何かに胸を撃たれてしまった。

愛を教えて、キミ色に染めて【完】

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コメント

1

ユーザー

伊織さん!大丈夫かな?💧

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