暁の才と呼ばれる才を持つ者が闇という怨念と戦ってきた歴史は古く、平安時代から討伐士は存在したという。時代が新しくなろうとも人間による怨念は消えない。怨念が発生する理由は様々だが結局は同じ形になる。それが闇。闇となった怨念は不特定多数の人間に害をもたらす。そのために討伐士は存在している。現代でも。
悲劇は突然だった。目の前に暗い靄のようなものが迫ってきて、襲われると思った瞬間何かが、自分の上に覆い被さった。それに不安をぶつけるように強く抱きついていたら抱き締め返されていた力が急に弱くなった。上を見上げると武器を持った傷だらけの見知らぬ男の人とそばには目を閉じて倒れている母がいた。何が起こったか分からなかった。母に話しかけても返事はない、触れてみたら冷たい。その時は幼く、死というものは知らなかったが本能的に母から話しかけられることはもう無いんだ、抱き締められることも一緒に買い物に行くこともないのだと悟った。
その後はその見知らぬ男の人に連れられ学校の寮に住むことになった。闇と暁の才についてとりつかれたように調べた。
そして迎えた15歳の春。晴れて闇討伐士を育てる教育機関である、暁光(ぎょうこう)学院に入学した。
入学式が終わると、学院の説明で自分の寮部屋が分かる。内心、結構緊張していたが寮部屋と寮のルームメイトが記された紙が掲示され、近付きながらも座堂日光(ざどうひかり)という名前を探す。案外すぐ見つかり、目を隣のルームメイトの名前の方に移す。
「あかしの,,,?」そこには朱篠緋風と書かれていたが何と読むのか日光は分かっていなかった。首を傾げながらルームメイトの名前を見つめていると
「あかしのひかぜ、だ」後ろから声がして振り返るとそこには、日光より少し上背があり目を見ると透き通った赤色が目に収まっている世間では美形と呼ばれるような青年が立っていた。
「もしかして、お前が俺のルームメイトか?」緋風は先ほどよりもキリッとした厳しい目で日光を見た。 「そう俺は座堂日光。よろしく」日光は軽い挨拶を交わした。 「俺はお前と馴れ合うつもりは無い。もし授業などここで協力することがあれば絶対に足を引っ張るなよ。もしそのような行為があればお前の首は飛びかねない。」緋風は長い言葉を早口で表情一つ変えず喋った。
「俺は少しずつ緋風と馴れ合いたいけど、嫌そうだから気付かれないように距離近くするな!!」気の強い笑顔を顔に浮かべ自信満々な様子で返した。 「それを本人に言ってどうするんだ。全く,,,こんな奴がルームメイトとは,,,悉く運が無いな」最初は驚いていた緋風だが途中から呆れていた。
「あ!!確かに、言っちゃったな,,,まぁでも三年間ルームメイトな訳だし色々とよろしく!」明るい笑みを見せながら日光は緋風の手を取り握手をした。 「,,,お前といたら調子が狂いそうだ,,,」落胆した様子ながらも日光に握手された手を無理矢理振り払うことはしなかった。 そこで緋風はただの冷たい人では無くて、冷たくするのに理由があるのではと日光は思った。