テラーノベル
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nmmnです。👻🔪×🐙🌟となっております。地雷の方、上記の内容のどちらかでも分からない方は、閲覧なさらないようお願いいたします。ご本人様とは一切関係ありません。
『🐙🌟』「👻🔪」
VTA表現有り
🔞、 喘ぎ声等の表現有り
///や♡は使うのが得意ではないのでありませんが、濁点はあります。
今回含まれる特殊(?)な要素
→激重感情
🐙🌟が情緒不安定です。
投稿頻度低い宣言しましたが、今は高い時期みたいです。恐らく来月あたりからとても低くなります。
解釈不一致を少しでも感じた際は、無理せずブラウザバックすることを推奨いたします。
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『ぴょーん』
落ち着け。
ゲームの中の話だろ。
『ぴょんっ、今のジャンプうまくね?』
顔に出すな、絶対に。
『ほら、ぴょんって、こっち飛びな』
やめてくれ。
思い出してしまう。
お前の前では前の話はしないと決めているのに。
『はやく、ぴょんって』
『ねーえ、ぴょん?』
『あはは、顔色悪いよ。どうしたの?』
「………わざとかお前」
『ん?どうだろ』
「どうだろって…確信犯だろ」
『だって、面白くて』
「なにが?」
『おれがぴょんって言うと、コントローラー持ってる手がちょっと震えるの』
『ねえ、ぴょんって言葉、なんかあるの?』
こいつには過去の切り抜き動画も、時折流れるVTA関連のコメントやポストも全て見せていない。彼は知る必要がない。
『当ててあげようか』
「何も無いよ」
『昔付き合ってた人でしょ』
ほぼ正解と言っていいだろう。俺のことをぴょんと呼んだ彼とは付き合っていたのだから。記憶のない彼にそんな話をしても困らせるだけだと話してはいなかったが。
『あたり?』
「ほぼね」
『ぴょんってあだ名でしょ。なんて名前の人だったの?』
「小柳ロウ」
『え、同姓同名?』
「俺がぴょんって呼ばれてたんだよ」
『そっちのパターンか。なかなかイチャラブみたいだね』
彼は割と淡白だったと思う。もちろん俺にだけ甘くなった部分があった事を否定はしないが、その程度の距離感が丁度良かった。記憶を無くしてもう一度付き合った今でもそれは変わらないのだから笑ってしまう。やはり彼はそういう人間なのだろう。
「言っとくけど、他にもぴょんって呼んでる奴いたからな」
『え、友達にも呼ばれてたの?』
「まあ」
『ふーん。ロウきゅんはダメなのにぴょんはいいんだ』
「あのな、昔の恋人の話とか掘り下げてもいいことねえよ。お前だって嫌だろ」
『ぴょん』
『ほら、こんなに動揺する。今までこんなこととなかった』
「…もう寝る」
『待ってよぴょん』
「黙れ」
怒りを滲ませながら振り返ると、彼は泣きそうな顔をしていた。
ほら、こうなる。だから嫌だったんだ。
星導晶のことになると俺も上手く隠し切ることが出来ない。記憶の無い彼に昔の話をしたところで悲しませるだけだと分かっていた。だから話してこなかったのに。
『なんとなく分かっちゃうんだよね』
『昨日俺が行きたいって言ってデートした水族館、行ったことあるんでしょ』
星導晶は水族館が好きだった。
彼との初デートの場所に、記憶を無くした彼ともう一度足を運ぶことになるとは思っていなかった。
『あんな懐かしそうな顔して、水槽の場所も分かってるみたいだったし、隠せてないよ』
『俺記憶無いからさ、覚えてないんだけど、ぴょんって呼んでたのって前の俺じゃないの?』
「だったらなんだよ」
『前の俺の方が良かった?』
「なんでそうなる」
前の恋人と比較したことなんて無いし、するものでも無いだろう。そもそも、俺は前の話をしないだけで星導晶と星導ショウを区別していない。記憶が無くても、彼は彼だ。
『懐かしそうなさ、でも、悲しいんだろうなって顔してるよ。俺とは思い出話出来ないもんね』
星導晶との思い出。もう俺の中にしかないそれが頭を駆け巡り、罪悪感で口を噤んだ。
『ほらね』
「前のお前の方がいいなんて思ったこと無い」
『じゃあ、俺が覚えてなくて悲しいって思ったことは?あるでしょ?』
「あったとして、今のお前に話してもお前が悲しむだけだろ」
『あはは、うん、そうかもね。前の俺が何してたとか、興味はあるけど』
小柳くんは優しいねと俯きながら小さく呟いたのが聞こえた。
『俺は比べちゃうよ、前の俺と今の俺』
「必要ない」
『うん、でも、俺には何も無いから。覚えてないって怖いんですよ、空っぽで。小柳くんとか、他の同期とか、それしか持ってないから』
「十分持ってるだろ」
『俺はリトとかイッテツとは違って昔の小柳くんを知らない』
「俺はお前にしか見せてない面もあるよ」
『でも、それって晶に対しても同じでしょ?晶は昔の小柳くんを知ってるし、ぴょんって呼ぶ他の友達のことも知ってる』
名前まで知っていたのか。どこから情報が漏れたのだろうか。
『イッテツが口を滑らせちゃったんです。責めないであげてください』
そう言って彼は弱々しく笑いながら、縋り付くように俺の服の裾を握りしめた。
『抱いて』
「…」
『お願い、ぴょん』
「そんなに辛そうな顔するんだったら、呼ぶのやめろよ」
『だって、こうやって呼んだら、すごく優しい目するんだもん』
「…」
『俺は、そんな目で見られたことない』
『分かってるよ。前のこと思い出して、懐かしいなって思うんでしょ。だからそんな目するんでしょ』
『こんなこと言ってるけど、前の俺のことも同じくらい好きでいてくれたってことはさ、嬉しいんだよ、俺も。だって、イッテツが前の俺と同じように接してるって言ってたし』
彼の頬を大きな涙の粒が伝っていく。
今の俺に、その粒を払う資格はあるのだろうか。
『小柳くんはさ、記憶がなくなった俺にも変わらず接してくれて、区別しないでくれてる。でも、俺にとって晶はあんまり実感なくてさあ、別人みたいに思っちゃうんだよね』
確かに、彼からしてみれば記憶をなくす以前の自分なんて実感も湧かないだろう。
『だから、嫉妬するんだよね。おかしな話でしょ、自分に嫉妬するって。でも前の俺に嫉妬しちゃうんだよ』
彼の手の力が強くなる。
『お願い小柳くん、抱いて。自分勝手なのも分かってる。でも、今の俺なんかダメ。全部悪い方向に考えちゃう』
「抱いたらお前は安心できるの?」
『どうだろう、分かんないや』
思い出すまで安心できないかもなんて言って、彼は自嘲気味に笑った。
『っぅ゛〜〜〜っ、ぁ゛っ、ぁっ』
「善さそうじゃん」
『んぅ゛、はっ、あぁ゛、や、ぁ』
「気持ちいいな」
『ぁ゛、んっ、はぁ゛っ、』
「前のお前はさ、髪短かったんだよ」
『まぇ゛っ、やだ、やぇ゛て、ききたくな、ぁ』
「髪伸ばしてみたらって話したこともあったっけな」
『ね゛、やだぁっ、ぅ、ぅ゛っ、ぅあ、』
「記憶無くす前の話とか、お前が悲しむと思って話してなかったんだけどさ。俺もおかしいんだよなー、多分」
『っ、な、っぁ、でっ、?』
「お前が前の自分に嫉妬するって言った時、可愛いなって思った。お前も自分で言ってたけどさ、俺からしたら同一人物だと思ってるからおかしな話すぎて」
『ぅ゛、ひどっ、ぃ、あっ、んぅ゛っ」
「うん、ひどいんだよ俺。可哀想だよな。俺に好かれてさ」
『っは、ぁ゛、うぅ゛〜っ』
「ごめんな、泣かせるような男で。離してあげられなくてごめん」
『ぁ゛、あぁ゛っ、ちが、っぅ、すきっ、』
「うん、俺も好き」
「思い出話とかなくてもさ、作っていけるじゃん。それで、今の自分は前の自分より沢山俺との思い出持ってるってマウント取ってやりゃあいいじゃん」
『っいぃの?、っ゛、こやなぎくん、いやっ、じゃ、ないの?』
「俺からしたら同一人物って言ったろ。だから、面白いなー、可愛いなーって思いながら見とくわ」
『ひっど、ぉ゛っ、んっ、や、あ゛っ、』
「うん、でも俺のこと好きなんでしょ。だから許して」
『っぁ゛、ずる、いぃっ、』
「はは、うん、俺ずるいわ」
『ぅ、う゛、ん゛っ、〜〜〜〜っ』
「俺まだイってないから、もう少し付き合って」
『はっ、ぁ゛、うっん、もっ、と、したいっ』
「言ったな。やめないよ」
『んっ゛、いいよっ、っぁ、」
俺の下で善がる彼の頬を伝う涙を払ってやり、 前と変わらぬ彼の甘い声に酔いしれる。
可哀想な男だ。俺は長生きだから、ずうっと離してやれない。そんな奴に好かれるなんて、大概お前も不憫だな。
彼が安心出来るように、記憶が無くともお前はお前だと教え込むように愛を注ぐ。
少しでも、彼が救われますようにと願いながら。
コメント
2件
涙が出そうでした、というか半分出ました こういうお話大好きです…