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____それから五分後。彼女が服を着たと言ったため俺は彼女の方を向いた。
そこに立っていたのは金色の長髪と金色の瞳と黒いパーカーと水色のジーンズと白い靴下と白い運動靴が特徴的な美少女……いや美幼女だった。
「……」
「どうしたんだ? ナオト。見とれているのか?」
「え、あ、いや、その、予想してたやつよりも遥かにクオリティが高かったから……その」
「要するに、今の私は美しいということだな?」
「ま、まあ、そういうことだ」
「ほほう、お前は幼女が好きなのか」
「いや、別にそういうわけじゃないけど……」
「嘘《うそ》をつくのは良くないぞ? 私が知らないとでも思っていたのか?」
「な、なんの話だ? 俺には何のことだかさっぱりだ」
「私はお前の血液を浄化したのだぞ? その時に何もしてないとでも思っていたのか?」
「も、もしかして、俺の名前を知ってたのも……」
「無論、お前の血液から情報を得た」
「……さ、さあて、用も済んだことだし、俺たちはそろそろ……」
ナオトが逃げようとした時、『イエローズ』(幼女形態)は彼に抱きついた。
「私がこのまま逃がすわけがないだろう?」
「ですよねー。あははははは」
ナオトが笑っていると、彼女はナオトの耳元でこう囁いた。
「ナオト、私と一緒に世界を見に行かないか?」
ナオトは笑うのをやめて、真面目モードになった。
「それは……どういう意味だ?」
「そのままの意味だ。今のお前のままでは、いつか大切なものを失うことになる。だから私と……」
「悪いが、俺はお前と一緒に旅をする気はない」
「……そうか。なら、せめて私が納得するような理由を言ってくれないか?」
「理由? そんなの今の俺にとっての居場所が……帰るべき場所があるからに決まってるだろう?」
「帰るべき場所……か」
「ああ、そうだ。今の俺には居場所がちゃんとある。だから……」
「……もういい、それ以上は言うな」
「……そうか」
「……では最後に一つだけ、私のお願いを聞いてくれないか?」
「お願い?」
「ああ、そうだ。あー、でも別にエッチなお願いはしないぞ?」
「……そういうことは言わなくていいから。あー、まあ、俺は俺にできる範囲でお前の願いを一つ叶えてやらなきゃならないよな。それで? お願いってのは何なんだ?」
「ああ、それはな……私を……殺してほしいんだ」
「…………俺の耳、ちょっと壊れてるみたいだな。すまない、もう一度……」
「殺してくれと言ったんだ。聞こえなかったのか?」
「聞こえてたよ、しっかりと。けど、どうしてそんなこと言うんだよ! お前は今までここを守ってきたんだろ! なのに、なんでお前が死ななきゃいけないんだよ!!」
ナオトは彼女をギュッ! と抱きしめると、涙が出ないようにしながら、そう言った。
『イエローズ』はナオトをさらにギュッ! と抱きしめると。
「出会って間もない私に対して、そこまで感情をさらけ出す人間はお前が初めてだよ」
「う、うるさい! 俺はこういうやつなんだよ! 仕方ないだろう!」
「ははは、そうだったな。たしかに、お前のDNAの中にたくさん入っていたよ。『お人好し』成分が」
「俺は……人を殺したことなんてないんだぞ?」
「私は花だ。ここにあるたくさんのタンポポたちと同じだ。どうして躊躇うのだ?」
「そんなの……そんなの決まってるだろう! 今のお前は心を持った一人の人間だからだよ!!」
「なら、一人の人間としてお前に要求する。私を……殺してくれ」
「なんでだよ……意味分かんねえよ……」
「私はここに長く居たせいで命のほとんどをここにあるタンポポたちに分け与えてしまった……。だから、私はもうじき死んでしまうのだ」
「なんとかならねえのかよ……」
「それは……無理な相談だな」
「何か方法があるはずだ。今からでも探しに……」
「ありがとう、ナオト。気持ちだけもらっておくよ。しかし、私は日没と共にこの世を去る運命なのだ」
「そんなの知るか! 俺が……いや、俺たちがなんとかしてやる! だから、死なないでくれ!」
「…………方法が……一つもないわけではない。しかし、それらを入手するには試練が待ち受けている。それでも聞くか?」
ナオトは泣くのをやめて、ニシッ! と笑うと、彼女の両肩に手を置いて。
「可能性が僅《わず》かでもあるなら、俺たちは全力で探してみせる! だから教えてくれ! その方法を!」
「……いいのか? リスクしかないぞ?」
「ああ! それでも構わない!」
ナオトの真っ直ぐな瞳は彼女にわずかながらの希望を与えた。
「よし、分かった。ならば、心して聞け。いいな!」
「はい!!」
「よおし、いい返事だ。それじゃあ、みんなのところで話そうか」
「ああ、そうだな。そんじゃあ、行こうぜ! お前の命を救うための使命《ミッション》に!」
「……ああ、そうだな。お前となら、うまくいきそうな気がしてきたよ」
「よおし、それじゃあ、まずは作戦会議だ! ……って、もうみんな集まってたのか」
ナオトと『イエローズ』がみんなの方へ向かおうとしたその時、みんなはナオトと『イエローズ』を取り囲んでいた。
「当然でしょ? あたしたちは家族なんだから、困った時はお互い様よ。そうよね? ナオト」
ミノリ(吸血鬼)の発言に対して俺は。
「ああ、そうだな。その通りだ。俺たちは血の繋がりはないけど、家族だ。どんな困難が待ち構えていようと足りない部分を補い合って生きていく。だよな? ミノリ」
ミノリはニシッ! と笑うと。
「ええ、そうよ。あたしたちは家族。血が繋がっていようといまいと誰が何と言おうと家族よ。だから、今回の件だって、みんなの力を合わせれば、きっと解決できるはずよ!」
「ああ、そうだな。……それじゃあ、そろそろ話してもらおうか。お前の命を救える唯一の方法を!」
ナオトが『イエローズ』にそう言った直後、彼女はゆっくりと語り始めた。
「私を救える唯一の方法……それは……」
*
____その頃、とある殺し屋がその花畑に来ていた。『ケンカ戦国チャンピオンシップ』に参加していたナオトに弟子入りするためだ。
彼女の名前は『マリー』。幼い頃から人を殺すための訓練を受けてきた身長『百三十センチ』の幼女。
彼女は自分の体を細胞レベルで自由自在に操ることができる『肉体変形魔法』を使える。
この魔法は『ケサランパサラン』を主食とする『イビルシープ』百体を捕獲または討伐し、まちに報告すると『報酬魔法《トレジャーマジック》』として与えられるものだ。
ちなみにその『イビルシープ』は見た目は普通の羊だが、戦闘態勢に入ると攻撃力などが毎秒、倍増していくため倒すのは容易ではない。
彼女はいつも黒いローブで身を隠している。こうしていないと落ち着かないからである……。
さて、彼女は無事、ナオトに出会うことができるのだろうか……?