「ほら、こっちだって! 鳥取!」
鳥取は愛知に引っ張られるように、名古屋城の影にある広場に連れてこられていた。
そこには、煌びやかな光景と、どこか異様な静けさがあった。
「ここが俺の修行場。“喧騒の中の静寂”。感覚を研ぎ澄ますにはうってつけだ。」
愛知の声は、どこか芝居がかっていた。だが、それに気づく余裕は、鳥取にはなかった。
「さあ、目ぇ閉じろ。お前の中に眠る、“本当の鳥取”を目覚めさせるんだ。」
鳥取が目を閉じた瞬間――世界が変わった。
舞い上がる砂、切り裂く風、過去の戦い、兵庫の無駄のない動き、大阪の爆発的な攻撃、広島の鋭さ……
すべてが再現されたように鳥取の脳裏にフラッシュバックする。
「……これ……は……?」
目を開けると、そこはもう“名古屋”ではなかった。
鳥取の周囲は、無機質な広い空間――まるで「審判の場」のようだった。
その中央に、**黒い着物を纏った“日本”**が立っていた。
「――気づいたか。ここは現実ではない。“仮想の修行”、いや、“試験場”だ。」
「……試験……?」
「貴様の旅を、我は最初から見ていた。」
日本はゆっくりと、鳥取の前に立つ。
「この国の未来を左右する者に、真にふさわしいかを試していたのだ。
だが、我の判断は――“不合格”だった。」
「……!」
「貴様は確かに変わろうとしている。だが、それは“他人の模倣”だ。
独自性がなく、芯もまだ弱い。そんな者が、この国の命運を握る戦いに出る資格はない。」
その言葉に、鳥取は何も言い返せなかった。
――だが。
「やっぱり……そういうつもりやったんか、“日本”さんよォ。」
その場に、大阪が現れた。
「勝手に“不合格”とか言いよってからに……こいつの何を見とったんや?」
「大阪……お前が、なぜここに……」
「全部聞いとったで。こいつが本物かどうか――最初からアンタが見定めるつもりやったことも。」
大阪は鳥取の前に立ち、睨みつけるように日本を見上げる。
「でもな、日本。俺はこの目で見たんや。こいつがどれだけボロボロになっても諦めんかったか。
どれだけ未熟でも、必死に食らいついてきたか。」
「それがどうした。努力だけで、国は動かせぬ。」
「せやけどな、“変わろうとし続ける心”ってのは、国を変える“原動力”にはなれる。
俺はそれを信じとる。」
日本は目を伏せ、そして静かに呟いた。
「……まったく。貴様は昔から、感情に流されやすい。」
「上等や。それが俺の“スタイル”や。」
沈黙の後、日本は再び鳥取へ視線を向ける。
「鳥取。貴様の真価は、これからの行動で証明せよ。
この試験は――仮免許合格ということにしておこう。」
「……!」
「だが忘れるな。これは“大会の前哨戦”に過ぎぬ。」
日本の姿が、次第に揺らいでいく。
「さあ、目を覚ませ。鳥取。お前の戦いは、まだ始まってすらいない。」
――――
「……ッ!!」
鳥取が飛び起きた。そこは、名古屋城の影――愛知の修行場だった。
「……え? 夢……? いや、違う。あれは、確かに……」
愛知がこちらを見てニヤリと笑う。
「目覚めたな、“鳥取”。お前に必要だったのは、きっと“信じる仲間”と、“試される自分”だったんだろ?」
鳥取は拳を握った。
「……大会に、出られるんだな……!」
その拳に、熱が宿っていた。
〈続く〉
コメント
5件
神すぎですよ、アニメ化しましょう 日本ちょっとこっち来な?(*^^*)
愛知が…愛知が出てきた…!!!!☺️☺️☺️ 鳥取…大会に出れてよかったね…🥲