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「 アルビノ 」
もとぱ
「 元貴……ほんとに外、行くの? 」
滉斗の声には、心配がにじんでいた。
大きな麦わら帽子に、真っ白な長袖。手袋。
UVカットのサングラス。
徹底的な日焼け対策をしても、元貴の肌は不安そうに震えていた。
「 ……うん。でも行ってみたいんだ。夏の野原 テレビでしか見た事ないから 」
声は小さくて でもどこか決意が籠っていた。
元貴は先天性白皮症(アルビノ)。
皮膚も瞳も色素が薄く、紫外線には極端に弱い。
日差しを浴びれば、皮膚は赤く腫れ 火傷のようになる。
だから彼は、いつも室内にいた。
蛍光灯の下 レースのカーテン越しの光しか知らなかった。
だけど 滉斗に出会って、少し変わった。
「 ……じゃあ、俺が絶対守るから。」
滉斗がぎゅっと彼の手を握る。
「 日傘もあるし こっちが日陰だからね。行こう 」
2人は歩いた。
真夏の光が照り付ける中、滉斗は元貴に寄り添い、日陰を選んで。
滉斗の大きな日傘が すっぽりと元貴を包む。
風は生ぬるいけど、彼の隣だけは、どこが涼しい。
「 ……草って こんなに、緑なんだね 」
野原の真ん中、誰もいない小道で 元貴はぽつりと呟いた。
頬には汗。けれど、笑顔だった。
「 ……元貴、ほら 顔が赤くなってる。もう限界じゃない? 」
「 ……ううん、まだちょっとだけ… 」
そう言ったけど、声が掠れていた。
手首の皮膚がうっすら赤くなっている。痛みもあるだろう。
「 ……戻ろっか 」
滉斗が優しく言った。
元貴は、しばらく目を伏せてから うん と頷いた。
帰り道
少し歩いただけなのに、元貴は足取りがふらついて ついにその場にへたり込んでしまった。
「 元貴!大丈夫!? 」
滉斗が慌ててしゃがみこみ、彼の身体を抱き留める。
「 ……皮膚、痛い…… 」
呟くような声。赤く腫れた腕がひりつくように熱を持っていた。
その場で日傘を開いて影を作り、滉斗は上着を脱いで、元貴に被せた。
「 ……バカ。無理すんなよ……俺、ちゃんと考えとくべきだった…… 」
滉斗の声は震えていた。
元貴の顔に手を伸ばすと、指先が少し冷たくて、滉斗は焦った。
「 救急車……いや、病院に電話する……! 」
「 ……やだ 」
かすれた声で、元貴が止めた。
「 ……今日は、すごく……楽しかったの。……痛いけど、でも……幸せだったから 」
その笑顔は涙ぐんでいて、滉斗の胸を刺した。
「 ……元貴… 」
滉斗は、元貴をそっと抱きしめた。
「わかった。じゃあ、俺が……家まで、背負って帰るから」
「 ……重いよ…… 」
「 バカ、おまえ、こんな細くて軽いくせに…… 」
愛おしげに笑って、滉斗は元貴の身体を優しく持ち上げた。
陽が落ちる頃、
二人の影が、ひとつの形になって、ゆっくりと揺れながら帰っていった──────。
#12.「 白く 淡く。 」
めっちゃ余談なんですが、皆さんどうやってノベルでHな雰囲気を醸し出してるんですか……。
教えてください泣