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御子柴聖と早乙女隼人の木刀が重なり合う音が、カンッと体育館に響いた。
ブンッ!!!
御子柴聖は早乙女隼人の攻撃を軽々と防ぎ、木刀を払い除け、一歩後ろに下がる。
早乙女隼人は御子柴聖を追いながら木刀を振ったと思いきや、フェイントを加えながら御子柴聖に回し蹴りをして来た。
ブンッ!!!
早乙女隼人の蹴りして来るのを読めていたかのように、御子柴聖はタイミング良く木刀で早乙女隼人の蹴りを止めた。
カンッ!!!
「っ!!!?」
蹴りを止められた早乙女隼人は驚きの表情を浮かべながら、御子柴聖から距離を取り木刀を構え直す。
だがすぐに御子柴聖と距離を詰め、早乙女隼人が至る角度から木刀を振るうも、御子柴聖は淡々と早乙女隼人の攻撃を受け流し、次の攻撃に繋げていた。
カンカンカンッ!!!!
「チッ!!!涼しい顔しやがって!!!」
ブンッと怒り任せに早乙女隼人が木刀を振るうも、御子柴聖は片手で木刀を持ち替え、攻撃を避けながら木刀の先端を早乙女隼人の喉に向けて突き刺す。
「チッ!!!」
カァァァンッ!!!
早乙女隼人は体勢を崩しながらも、御子柴聖の攻撃をなんとか防ぐ。
「嘘だろ?聖ちゃん、本当に隼人と互角にやり合ってる…。何者なんだ?聖ちゃんは…」
「俺の姉ちゃんが、あんな男に負ける訳ねーだろ」
前田大介が振り返ると、太々しい顔をした鬼頭楓が立っていた。
「鬼頭楓!?」
「フルネームで呼び捨てしてんじゃねーよ、お前」
「ご、ごめん?聖ちゃん、どうしてあんなに強いの?」
前田大介の言葉を聞いて鬼頭楓は、悲しそうな顔をした。
御子柴家に良いように使われていた御子柴聖のお姿が、鬼頭楓の脳内に再生されて行く。
妖怪討伐から帰ってきた血だらけの御子柴聖の姿、御子柴陽毬が満足気に笑う嫌らしい顔が、今でも鮮明に思い出される。
「俺の姉ちゃん…。ただ、それだけだよ」
「?」
前田大介と鬼頭楓の二人が話している光景を、本城蓮は静かに見ていた。
***
早乙女隼人 十七歳
最初にあの女に会った時、初めて会った気がしなかった。
カンカンカンカンッ!!!
木刀の打つかる音か体育館中に響く、周りは黙って息を呑みながら俺達を見ていた。
鬼頭聖は俺の攻撃を涼しい顔をして次々に止め、痛い所に的確に突いてきやがる。
何だよ、この状況は…。
側から見たら互角の戦いだと思ってるらしいが、そんな事は全くない。
鬼頭聖、めちゃくちゃ戦闘慣れしてやがる。
いや、俺が今まで会って来た奴等よりも強いのが分かるし、鬼頭聖が手加減して闘ってるのが分かった。
決闘が始まった瞬間、鬼頭聖から感じるプレッシャーそれだけで、相手を萎縮させる事が出来るだろう。
何だ、この威圧感は…。
普通の女じゃないのか?
「上の空みたいだけど、大丈夫?」
そう言いながら鬼頭聖は木刀を持ち替え、俺の右脇腹を叩き付けようと木刀を振るう。
ビュンッ!!!
「この野郎っ!!!」
カァァァンッ!!!
木刀を持っている手の手首を捻らせながら、鬼頭聖が仕掛けてきた攻撃を何とかして防ぐが体勢が崩れそうになる。
立っている足に力を入れて体勢を持ち直そうとするが、鬼頭聖は素早く腰を低くし木刀を構えて、俺の間合いに入り込んできやがった。
ダンッ!!!
「聖ちゃんが隼人の懐の中に入り込んだ!?あんな事したら、木刀で叩き落とされるぞ!?」
大介の言う通り、鬼頭聖は何を考えたのか至近距離戦に持ってきやがった。
今なら、鬼頭聖は攻撃を避けようが無い筈だ。
パシッ!!!
木刀を短く持ち替え、鬼頭聖の右肩に向かって力強く木刀を振り下ろす。
ブンッ!!!
カァァァンッ!!!
鬼頭聖が下から上に木刀を振るい上げ、払い除けられた木刀は俺の手から離れ、勢いよく木刀が空中に舞う。
ドカッ!!!
気を取られた瞬間、右の脇腹に激痛と両足が浮く感覚がした。
「ハッ、俺の姉ちゃんが簡単に一本取らせる訳ねーだろ。姉ちゃんは一瞬の隙を見逃す筈はねーんだ」
鬼頭楓の言葉を聞きながら鬼頭聖に視線を向けると、鬼頭聖の右足が上がっているのが見え、俺の右脇腹に思いっきり蹴られた反動で後ろに吹き飛ばされていたのだと理解が出来た。
ドサッ!!!
床に勢いよく尻から落ち、体勢を整えようと立ちあがろうとした時、鬼頭聖が素早い動きで走って来る。
鬼頭聖…、何者なんだよ!?
「大した事ないね、早乙女隼人」
ドンッ!!!
俺の目の前まで来た鬼頭聖は、見下ろしながら小声でボソッと呟き、床に木刀の先端部分を叩きつけた。
「あ?」
「壱級だから強いのかなって思ったけど。本当はさ、武器を使う戦い方じゃないよね?早乙女隼人」
鬼頭聖は汗一つ流していなく、息も荒くなっていないし、涼しげな顔をして、俺を見下ろしている。
それに、俺の本来の戦い方まで見抜いて来た。
「何で、分かった…?」
本来の俺は、武器を使う戦いをしない。
拳や足技を使うやり方、つまりは体術系だ。
妖怪退治専用の呪符が書かれた包帯を拳に巻き付け、妖怪共達を殴り飛ばす戦い方が性に合っているからだ。
「手に木刀が、馴染んでないからね?さっきから手や足が出そうになってたし」
俺はそう言われて、鬼頭聖の手を見た。
木刀が手の平にしっくりと馴染んでいる、刀で高い慣れている証拠だ。
初めて教室で見た時から、俺の中で違和感が生まれた。
何処かで、彼女の事を見た事があると、俺は改めて鬼頭聖の顔をよく見める。
雪のように白い肌に、茶金色の綺麗な大きな瞳を持つ彼女。
この顔…。
あぁ…、やっぱり俺の違和感の正体が分かった。
そうか、俺はアンタの事を…待っていたんだ。
***
今から、十一年前の一月一日の正月、白い雪が町を覆い尽くす、冬の季節の頃。
当時、俺が六歳だった。
俺の家、早乙女家は御子柴家と言う家の傘下に入っており、御子柴家の当主に親子供共に仕えていた。
いや、仕えなければならなかったのだ。
そんな決められたレールの上で、生きる事が嫌だった。
毎年毎年、正月になれば御子柴家の本家に訪れ、威張り散らしている婆さんの機嫌を取らなければならない。
いい歳した大人達は御子柴の婆さんに高価な物を贈り、顔色を伺いながら話をしている姿が気持ち悪くて仕方がなかった。
御子柴家に挨拶回りをしている隙に、持ってきたマフラーを巻き付けてから、外の空気を吸う為に御子柴の家を静かに出た。
ザッ、ザッと積もった雪の上を歩く度に小さく音がし、冷たい空気が鼻を通って痛い。
「あれだけ雪が降ってれば、そりゃ積もるわな…。寒…、ま、御子柴家に居るよりマシだ」
大人は御子柴家の当主の婆さんに逆らう事が出来ないのは、俺が産まれる前の世代からだ。
明治時代からある陰陽師家系は御子柴家だけで、早乙女家や他の二つの家系は大正元年から誕生したらしい。
陰陽師の術師の世界は上下関係が厳しく、礼儀作法、敬語は使えて当たり前で、大人達を見れば一目瞭然だ。
早乙女家の人間や使用人達は、俺の事を好いていない。
いつも修行や鍛錬をサボり、親父の事を邪険に扱っていたからだ。
御子柴家を出てきたのには、もう一つ理由がある。
いつも厳格な親父が作り笑いを浮かべながら、婆さんにヘコヘコしている姿を見たくなかったからだ。
ゾクッ!!!!
体全体に嫌な感覚が広があり、この感覚が何なのか分かる。
***
陰陽師になる為には必ず、御子柴家の当主から課せられる試験を受けなければいけなく、その内容は過酷なものだった。
妖達が住処にしている山に俺達を置き去りにし、自力で山を下山しなければならないと言うもの。
あれはマジで二度とやりたくない試験だ。
「来るなぁぁ!!!ギャアアアアアアアアア!!!」
ブチブチブチブチ!!!
ブシャアアアアアア!!!
目の前で従兄弟が大勢の妖怪に囲まれ、手足を噛みちぎられ、断末魔のような悲鳴声と傷口から噴き出される赤黒い血。
グチャクチャグチャ。
人間の子供の体を妖怪達は夢中になりながら血肉を啜り、咀嚼音を立てながら食い散らかす。
異様な光景が目の前で広がり、血生臭い匂いと叫び声が山の中に広がる。
暖かな日差しは本来なら心地い筈なのに、今だけは真冬の中に居るかのように寒くて、体が震えてしまう。
あの時の記憶は曖昧で、どうやって下山して来れたのか覚えていない。
一つだけ覚えているとすれば、俺以外の子供は降りて来なかった事だけは覚えていた。
下山した俺の姿を見た親父は、泣きそうな顔をしながら俺の事を強く抱き締め、何度も何度も声を震わせながら謝ってくる。
陰陽師なんかなりたくもねぇな、この気持ちはこれからも変わる事はない。
***
だから俺は稽古だってしたくなかったし、なりたくないって思ってきたんだ。
それなのに、こんな大雪の中で妖怪なんか出て来るんだよ…。
「おやおや。こんな所に坊や、一人かえ?」
目の前に現れたのは俺より身長が高い女、雛人形のような顔立ちで、古い着物を身に纏っていた。
この女、あの山の中に居た妖達と同じ妖気を纏っている。
「迷子かや?」
「お前…、妖だろ?」
ザッ!!!
そう言いながら、素早くポケットから札を取り出し、急いで女から距離をとる。
俺の言葉を聞いた女はググッと首を伸ばし始め、ケタケタと笑いながら不敵な笑みを浮かべた。
「こんなに早く、正体を見破られるとは思わなんだ。ふふふっ、若い子供の血肉は美味なのじゃ」
ゆらゆらと顔を動かし、女は俺をいやらしい目で見て来る。
首が長く伸びる女の妖怪の名前は…、ろくろ首だったか…?
*ろくろ首は日本妖怪の一種で、大別して首が伸びるものと、首が抜け頭部が自由に飛行するものの二種が存在する。
古典の怪談や髄筆によく登場し、妖怪画の題材となる事も多いが、ほとんどは日本の怪奇趣味を満足させる為に創作されたものとの指摘がある*
正月早々、最悪過ぎんだろ…。
「面倒くせー事させやがって、この糞ババァ!!!行け!!!」
ボンッ!!!
「ガァウッ!!!」
俺は式神でホワイトタイガーを出し、ろくろ首の長い首に噛み付かせた。
ガブッ!!!
「ギャアアア!!!こ、このクソ餓鬼が!!!」
ブシャッ、ブシャッ!!!
ホワイトタイガーの鋭い牙がろくろ首の首に食い込み、体を揺らす度に紫色の血液が飛び散る。
ろくろ首は長い首を大きく振り回すと、首に噛み付いていたホワイトタイガーが振り飛ばされてしまう。
ブンッ!!!
「我が君!!!」
ドタドダドタドタ!!!
ろくろ首が物凄い勢いで、四つん這いの状態のまま俺の方に突進して来た。
ドンッ!!!
「っ!!?」
術式を言うのが間に合わず、俺はろくろ首の体に当たってしまい、その衝撃で体が宙に浮いた。
シュルッ!!!
空中に浮いた俺の体に、ろくろ首の長い首が俺の体に巻き付き、腹が圧迫されて息が出来ない状態になる。
「ヴッ、ヴェッ!!?」
体を更にキツく締め付けられて、全く息が出来ない。
ギギギギッ…!!!
「口だけは達者だったのぉ。子供は力が無いのに、口だけは良く回る。だが…、そんな子供を食べるのが、私は好きなんよぉ」
そう言って、ろくろ首は俺の顔に自分の顔を近付けて来た。
何なんだよ、どいつもこいつも馬鹿にしやがって。
悔しいのと苦しくて、涙が出る。
こんな奴に負けるなんて悔しい…。
違う、本当は…。
俺は強くなろうと思っていなかったから、こんな奴に負けたんだ。
だから、仕方が無い事なんだって思えた。
俺がここで死んでも、仕方ないんだって。
「大人しくなったのぉ。では…、頂くとしようかのう!!!」
ガバァ…。
ろくろ首が大きく口を開け、涎を垂らしながら俺の顔に近付いて来た時だった。
ブシャアアアアアア!!!
ろくろ首の背中から勢いよく紫色の血液が噴き出し、雪景色の中が紫色に染まって行くのが見える。
何が起きているのか、俺は分からなかった。
「ギャアアア!!!」
グラッ!!!
ろくろ首の長い首が緩み、俺は勢いよく雪が積もった地面に落下し、ようやく息が出来た。
ドサッ!!!
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!!!」
急に息が吸えああ所為で、喉がむせ返り咳が止まらない。
酸素が一気に体や頭に周り、吐きそうになる。
「な、何だ?」
涙でボヤけた視線の中で見たのは、ろくろ首が沢山の血を流している姿があった。
「誰だぁぁ!?妾の邪魔をする奴はっぁぁぁぁぁああああ!!?」
怒りに満ちた声を上げ、ろくろ首はどこかに視線を送った。
「音爆螺旋」
ジャキンッ!!!
その言葉が聞こえた後、ろくろ首の体を光の鎖が拘束していた。
女の子の声がする…。
「お前にその子は食べさせないよ、急急如律令」
パァァンッ!!!
ブシャアアアア!!!
その瞬間にろくろ首の頭が弾け飛び、飛び霧となって消えた。
ボトボトボトッ!!!
ポタポタと紫色の血液と肉片が、白い雪に溶け込む。
真っ白な雪月花の中で、目の前に現れた白い袴姿の女の子が紫色の血で染まっていた。
「大丈夫?」
そう言って、女の子は小さな手を差し伸ばして来た。
今降っている雪のように白い肌に茶金の大きな瞳、ピンクアッシュのふわふわの髪、人形のように手首。
何で、この女の子はこんなに綺麗なんだ?
白い袴に付着した血が紫色の花の様に、綺麗に咲いている様に見える。
お人形みたいな女の子は、冷たい目をしていた。
「あ、ありがとう…」
俺は女の子の手を掴み、ゆっくりと立ち上がる。
俺よりも背の小さい女の子、御子柴家に居たか?
こんな子、見た事がない。
「危ないよ、一人でこんな所に居たら」
女の子はそう言いながら、隣に居た黒い狼を優しく撫でていた。
「グルル…」
狼は女の子に撫でられて、気持ち良いのか小さな鳴き声を発する。
「助けてくれてありがとう。助かった…」
「君さ。どうして、諦めようとしたの?」
「!?」
俺の言葉を聞いた女の子が、確信を急に突かれた。
女の子の茶黄の瞳が真っ直ぐ、俺を視界にとらえる。
何故だろう、その目を見るだけで全てを見透かされているような気がした。
俺が今、嘘を言ったとしても、女の子にはお見通しだろう。
震える唇を噛みながら、言葉を放つ。
「お、俺は…。逃げたかったんだ。家の式たりで、御子柴家に支えたくも無い人間の為に、命を捧げなきゃいけないとか。顔も名前も知らない奴なんかに…っ」
そう言うと、女の子はゆっくりと俺を見つめて来た。
さっきよりも、優しくなった目付きのまま口を開く。
「貴方にも…、大切な人が出来たら変わるよ。無理に支えなくたってさ、本当に自分が支えたい人が現れたら、支えればいいよ」
「君は一体…、何者なんだ?御子柴家の人間なのか…?」
「内緒、言ったら怒られちゃうしね」
女の子は意地悪な表情をして、フッと笑った。
ドキッ。
この子の表情の一つ一つに、心臓が高鳴ってしまう。
何だ、この感じ…。
タタタタタタタッ!!!
そう思っていると、女の子の背後から誰かが走って来るのが見えた。
「お嬢!!!やっと見つけた…って、その血は!?どこか怪我はしてないですか!?妖が現れたんですね!?」
中学生くらいの男の子が、女の子の体に優しく触れていた。
紫色の瞳…、本城家の人間だ。
「これは返り血だよ、妖怪が居たから滅したの」
「それなら良かった。さ、戻りましょう。陽毬様が…」
「分かった。お婆様が来る前に戻らないと」
ヒョイッ。
そう言って、女の子は黒い狼に跨った。
「君も、早く見つけてね」
「何か言いましたか、お嬢?」
「ううん、何にも」
二人は雪の降る白い世界の中、消えて行った。
「また、あの子に会いたいな…」
その日から、俺は修行に精を出す日々を送っていた。
妖怪退治にも率先して行ったし、鍛錬も怠る事は無くなった。
親父や早乙女家の人達は、俺の代わりように驚いていたが、気にする暇がない。
もしかしたら、あの子は御子柴家の人間かもしれない。
また、あの子に会いたい。
その気持ちだけが、俺を突き動かすには十分な理由だと思ったから。
親父に確かめる為に部屋に訪れたのだが、親父に御子柴家に女の子は居るかと聞いたら、居ないと言われた。
「本当にいないのか!?だって、本城家の人間がついてたんだぜ?本城家は御子柴家の直属の護衛隊だろ!?」
「御子柴家の本家には子供はいないよ。居たとしても、楓坊ちゃんは追い出されてしまったからね」
「追い出された!?あー、あの婆さんにか」
「陽毬様と呼びなさい。それにしても正月から、どうしちゃったんだよ。真面目に稽古にも参加しだして」
親父の言葉が耳に入らず、俺はあの女の子の事を考えていた。
じゃあ、あの強さを持った女の子は…、一体何者なんだ?
御子柴家の婆さんが探してるみたいな事を、本城家の奴が言ってたし…。
もしかして、御子柴の人間が隠している?
御子柴家はあの子を隠しているのか?
だとしたら何で?
隠さないといけない理由があるのか?
「おい隼人、聞いてんのか?」
「あー、聞いてる。知らないなら良いや、俺は稽古に戻るから」
「お、おう?」
親父の言葉に適当に返事をしながら、俺は足早に親父の自室を後にした。
***
数日後
山に篭り修行をする為、早乙女と昔から縁のある前田神社に世話になる事に。
神社の息子の前田大介と修行に明け暮れている中、疲れ果てたまま山中を歩いていた。
大介は一足先に神社に戻っていた為、一人でボロボロな身体を引きずる。
「はぁ、疲れた…。少し、休むか」
俺は近くにあった木に背をもたれさせ、座り込む。
瞼が段々と重くなり、目を開ける事が出来なくなってしまった。
夢なのか現実なのか分からない夢を見た。
「起きぬか、若者よ」
突然、女性に声を掛けられ、重たい瞼を無理矢理ゆっくりと開いた。
視界に映ったのは太々しく顔を覗き込む、伝承に描かれていた通りの天照大神が居た。
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