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宝石
これは、ある十二人の貴族が、
それぞれの痛みを抱えながら、それでも今日を生きていく物語。
――虹石学園。
宝石貴族たちが多く通う、この国でも有名な学園。
朝。
校門をくぐる生徒たちの中に、一人の少年がいた。
「おはようございます!」
明るい声。
エメラルド家の一人息子――ジャパパ。
成績優秀。
運動神経も抜群。
誰にでも優しく、困っている人がいればすぐに手を差し伸べる。
学園では、誰からも好かれている少年だった。
「ジャパパ、おはよー!」
「おはよう!」
「今日の数学のテスト、どうだった?」
「たぶん大丈夫!」
笑顔。
完璧な笑顔。
誰も、その笑顔の裏側を知らない。
ポケットの中で、スマートフォンが震えた。
母親からだった。
『今日、帰ったら話があります』
たったそれだけのメッセージ。
それを見た瞬間。
「…………」
ほんの一瞬だけ、笑顔が消えた。
けれど。
「ジャパパ?」
「……あ、ごめん!なんでもないよ!」
また笑った。
いつものように。
まるで何もなかったかのように。
*
「……はぁ」
屋敷の中。
ノアは大量の洗濯物を抱えて歩いていた。
モルガナイト家の長女。
本来なら、高等部三年生。
けれど、彼女は学園に通っていない。
「これ終わったら、次は食事の準備…」
妹たちのため。
自分たちが奴隷にされないため。
休む暇なんてない。
「お姉ちゃん!」
「どうしたの?」
「これ、終わったら一緒に遊べる?」
「……うん。少しだけなら」
ノアは笑った。
本当は疲れている。
けれど、妹たちの前では笑っていたかった。
ふと窓の外を見る。
その先には、虹石学園。
「……いいなぁ」
小さく呟く。
いつか。
自分も、あそこに通ってみたい。
そんな夢を、まだ捨てられずにいた。
*
「……今日も最高の俺!」
特別支援学級。
トパーズ家のタッツンは今日も元気。
「リュウ先生!俺は今日も復讐について、語るでー!!」
「朝一番からそれかよ……」
アメジスト家のリュウは苦笑する。
「いいかリュウ先生!俺はいつか――」
「タッツン」
「ん?」
「朝飯は食ったか?」
「…………」
「まずそこからだ」
「……食ってないで!」
「食え」
「はい!」
隣ではムーンストーン家の
ドヌクが静かに話を聞いていた。
「タッツン、今日も復讐の話してるね」
「おう!」
「飽きないの?」
「飽きるわけないやろ!」
タッツンは笑った。
その笑顔の裏には。
誰にも言えない怒りがある。
左目を隠す眼帯。
そして、忘れられない家の中の記憶。
それでも。
「俺は絶対、負けねぇからな」
その言葉だけは、冗談ではなかった。
*
「……うるさい」
図書室。
タンザナイト家モフは本から顔を上げた。
廊下から聞こえてくる女子たちの声。
「ヒロくん、今日もかっこいい!」
「一緒にお昼食べよ!」
「え、えっと……」
「…………」
モフは本を閉じた。
「図書室に避難しに来るの、やめてほしいんだけどな……」
その直後。
「す、すみません……!」
ヘマタイト家のヒロが
勢い良く入ってきた。
「……また?」
「……はい」
「……」
「……」
「……そこ、座れば?」
「ありがとうございます……」
二人は少し離れて座った。
会話はない。
でも。
不思議と居心地は悪くなかった。
*
「よっしゃあああ!!」
屋上。
サンストーン家のエトが叫んだ。
「シヴァ! 見てた!?」
「見てた見てた、、、」
「どうだ!!」
「完敗です、、、」
「やっぱうち、賭け事うますぎ!」
「俺の金がぁ、、、」
二人は笑う。
先生に怒られることなんて、もう慣れていた。
プレナイト家のシヴァは
誰かに構ってほしかった。
誰かに見てほしかった。
だから、いつも騒ぐ。
笑わせる。
ふざける。
怒られる。
それでも。
誰かが自分を見てくれるなら。
それでよかった。
エトはそんなシヴァを横目で見た。
「……シヴァ、問題児すぎぃ〜」
「エトにだけは言われたくないわ」
「は?」
「怖っ」
「殴るよ?」
「逃げよ」
「待てコラ!!」
二人の声が、屋上に響いた。
*
その頃。
屋上の別の場所。
オニキス家のウリは一人、
ギターを弾いていた。
誰とも話さない。
誰とも関わらない。
ただ、ギターだけは続けている。
兄が褒めてくれたものだから。
「……」
弦を弾く。
音だけが、静かに響く。
家では。
自分を殴る両親。
入院している兄。
行方不明の兄。
学校では一人。
だから。
この時間だけは。
何も考えなくて済んだ。
*
中庭。
サファイヤ家のナオキリは
花壇の前にしゃがみ込んでいた。
「今日も綺麗ですねぇ」
「……」
「……なんですか?」
花に話しかける。
「…………」
「そんなことが!!」
少し離れた場所から見ていたジャパパとルナは。
「……ナオキリさん、今日もやってるね」
「うん……」
「お花と話してる……」
「……」
「ルナ?」
「ちょっとだけ引いてます」
「俺も」
二人は小声で笑った。
その時。
ナオキリが振り返った。
「聞こえてますよ」
「「すみません」」
即答だった。
*
「ジャパパ!」
「ん?」
「お昼、一緒に食べよ」
「いいよ」
アクアマリン家のルナと
そのいとこのジャパパは、
いつものように中庭のベンチへ座った。
「今日は何食べるの?」
「パン!」
「また?」
「パン美味しいじゃん」
「そうだけど……」
二人で笑う。
ルナはふと、ジャパパの髪を見た。
少し長めの髪、癖毛が多く所々跳ねている
そして。
昔、一度だけ見た光景を思い出す。
女物の服を着たジャパパ。
あの時。
何も聞けなかった。
今も。
聞けない。
「……ジャパパ」
「ん?」
「……ううん。なんでもない」
「そっか」
ジャパパは笑った。
けれどルナは。
その笑顔が、少しだけ寂しく見えた。
*
そして。
学校には来ていない少年がいた。
ガーネット家。
一人息子――ユアン。
「……」
暗い部屋。
机の上にはパソコン。
画面には大量のデータ。
両親の名前。
死亡記録。
病院の記録。
騎士団の資料。
「……おかしい」
母親は病死。
父親は他殺。
そう聞かされていた。
けれど。
「母さんは病死じゃない…」
指が止まる。
「……誰が」
画面を睨む。
「父さんを殺したのも……母さんを殺したのも」
「……絶対に見つけてやる。」
ユアンは、再びキーボードを叩き始めた。
*
夕方。
虹石学園。
生徒たちが帰っていく。
ジャパパは校門で足を止めた。
「……帰らないと」
家に。
母親が待っている。
少しだけ、足が重くなる。
その時。
「ジャパパ!」
振り返る。
ルナ。
「また明日ね」
「うん。また明日」
笑う。
「じゃあね」
手を振る。
その瞬間。
少しだけ。
帰りたくないと思った。
でも。
「……行かなきゃ」
歩き出す。
*
夜。
それぞれの場所で。
ノアは妹たちのために働いていた。
タッツンは眠る前に、父親への復讐を誓った。
ドヌクは一人、鏡を見つめていた。
昼の自分。
夜の自分。
「……どっちが、本当の僕なんだろう」
エトは布団の中で、死んだ弟を思い出していた。
シヴァは誰かからのメッセージを待っていた。
ウリはギターを磨いていた。
ヒロは今日も誰かと話せなかったことを気にしていた。
ナオキリはサファイヤ家に生まれたことを
後悔してる。
モフは勇逸好きである本を開いた。
ルナは眠る前に呟いた。
「……明日は、いい日になりますように」
ユアンはまだパソコンの前にいた。
そして。
ジャパパは。
「……ただいま」
家の扉を開けた。
「遅かったわね」
母親の声。
「ごめんなさい」
「こっちに来なさい」
「……はい」
また。
操り人形の時間が始まる。
*
それでも。
翌朝。
虹石学園には、また人が集まる。
笑う人。
騒ぐ人。
本を読む人。
花と話す人。
ギターを弾く人。
誰にも会いたくない人。
学校にすら来られない人。
それぞれ違う人生。
それぞれ違う苦しみ。
それでも。
彼らは今日も、生きている。
――宝石は。
綺麗だから、宝石なのだろうか。
違う。
傷ついて。
削られて。
磨かれて。
それでも光るから。
宝石と呼ばれるのかもしれない。
いつか。
いつか、この十二人が。
誰にも怯えず。
誰かの顔色を窺わず。
過去に縛られず。
自分を責めず。
心の底から笑える日が来ますように。
これは、
ある十二人の貴族が、
辛い思いをしながら生活する物語。
そして――
**これは、十二人の「宝石」が、いつか本当の輝きを見つけるまでの物語。**
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※このお話は読み切りです。
続きはありません
内容が薄いしよく分からん、、、
まじで下手くそ過ぎるわ
最後まで読んでくれて、
ありがとうございました。
エミリー
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151
532
haru @微多忙
61
コメント
1件
読み終えました。 十二人の宝石貴族たち——誰もが違う痛みを抱えながら、それでも「生きている」姿がとても印象的でした。特に、ジャパパの帰宅シーンの“操り人形の時間”という表現に胸が締め付けられました。あの一瞬で、彼にとって家がどんな場所か伝わってくるんですよね。 “傷ついて、削られて、磨かれて、それでも光るから宝石”という締めくくりも、とても好きです。これは決して明るいだけの物語じゃないけれど、だからこそ“いつか本当の輝きを見つける”という希望が刺さります。 一話で十二人の輪郭がこれだけ掴めるのは、書き分けがしっかりしているからだと思います。続きがないのが本当に惜しい——もっと彼らの日常と、その先を知りたくなりました。