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三人が取り囲むテーブルの上には、人間の顔としては歪、不自然な輪郭、死んだ魚の目のような空虚な瞳、のっぺりとした鼻、にも関わらず口元は今にも何かを語り出しそうな程にリアルな顔写真が置かれていた。
「井浦さん、これは何ですか?」
「復顔写真だ」
「復顔・・・・写真」
「不気味」
井浦が復顔写真の横に蓮根畑男の顔写真を並べた。
「これ、屍蝋化死体の」
「そうだ、科学警察研究所から回って来た」
「何よ、何たら研究所って」
「咲さん、ドラマでいう科捜研ですよ!」
「あぁ、あれ!」
「これが、その男性の顔なんですね」
「大体はな」
「ふーん、なんか、厳つい感じ。好みじゃなーーーい」
「テメェの好みはコレだろ!」
井浦は源次郎の顔を指さした。
「そうよ!」
「俺も好みだがな!」
二人からベタ惚れされている源次郎はその二枚の顔写真を見比べながら井浦に向き直った。
「この人は大野達也さんでは、無い」
「大野達也じゃねぇ、聞き込みで十人中八人は違うと言った。」
「そうですか」
「もう一点、体格が違う」
「体格」
「大野達也は160cm弱、細身、そして左の親指が無い」
「はい」
「蓮根畑男は180cm前後、ガタイは良い、指は五本」
「別人」
「泥水の中で成長しなけりゃな」
「県警はこの男の身元探しに躍起になってる」
「はい」
「俺は行方の分からんガキが気になる」
「男の子、ですね」
「おう」
そして井浦は「しまじろー、また明日な」と手を振り朗らかに玄関の扉を閉めた。今日はやけに素直に出勤して行ったので、部屋に残された二人は少しばかり気が抜けた。居れば鬱陶しいが居なければ物足りない、そんな感じだ。
「また明日ってどう言う事?源次郎、明日、出勤日だよね」
「さぁ、よく分かりません」
「ま、いいか。ご飯、食べに行く?」
「僕はすき家の牛丼が良いですね」
「げ」
「げ、とは」
「よく、これ見た後に牛丼なんて思いつくわね」
テーブルの上には屍蝋化死体に大野和恵の生々しい溺死体、そして薄気味悪い復顔写真。佐々木咲はそれらを全て纏めるとゴミ袋に突っ込んでクローゼットの奥へと押し込んだ。