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ゲーム開始──数時間前
黒side
この場所は観客席と言えば正しいのだろうか
部屋にはバーがあり、右の壁は全てガラス張りになっている
大きな窓に手を当て、目の前の景色を眺めた
数名が暗闇へと吸い込まれていくように落ちてゆく
ある者は片手を伸ばし助けようとする者
またある者は落ちろと大声で言ったあと、蹴落とすやつもいた
──これが人間の本性なのだろうか
だが私にはよく分からない
気がついた時からマスターの言いなりだ
しかし特に嫌ということでもなかった
「黒。どうかしたか?」
アラタが私に声をかけてくる
「……いいえ…何でもありません………」
何度考えたって、答えにはたどり着かない心というのは、何なのでしょう
私は部屋を後にしてマスターの場所へ向かったマスターを支えるのが私の仕事
無事に終われば良いのですが
長い廊下を歩きながらそう考えた
ゼロside
ゲーム開始──数時間前
マスターの命令で2対2の訓練をしていた
だが俺の相手をしていたやつがこれまた弱い
全身の骨を折り、後は命を奪うのみ
そんな時だ
「ゼ……ゼロ様…っ!もうそれくらいで…よろしいのでは………!」
小柄の女がそう訴える
「……私語は慎め。訓練に集中しろ」
ゼルがそう言ってもそいつは言うことを聞かない
「で…でも!ゼロ様の教えは……」
短剣を片手にカタカタと震えながらそう言った俺は相手していた奴を突き飛ばす
もうあいつは息をしていねぇからな
用済みだ
人間なんて所詮ゴミ
俺みたいなやつをクズだと笑いながら言う野郎たちが大っ嫌いだ
俺の何を知っているんだよ
俺は相手の胸ぐらを掴み持ち上げる
「俺のやり方なんざ関係ねぇだろうが!!!正義が人を救うだのほざいてるやつなんか山ほどいるが、俺はそんなもの嫌いなんでな!おめぇには分かんねぇだろうなぁ!!楽しくやって何がいけねぇ!!人間の血を吸うも肉を食うも!!!命が大事だぁ?!んなもん知らねぇよ!!」
家族がいるから殺すなだの恋人と話したいだの俺には関係ねぇ
楽しいからやれる
それ以外何も無い
「……お前も用済みだ。ここに必要ない」
そう言って俺は2人を外に放り込んだ
そのまま地面に打ち付けられる
後で取りに行かねぇとな
「やっぱり有能な奴は居ないね。兄さんはどうだった?」
「……つまんねぇ」
俺は呆れながら地面を蹴った
ゲーム開始数分前になり──
モニターを見ながら俺は呆れていた
気になっていたやつは脱落して行く
『脱落を確認しました』
モニター室に響き渡るロボットのアナウンス「……あいつとやりあいたかったが仕方ねぇか」
壁に寄りかかり腕を組む
『次行われるゲームに参加される方は、速やかに移動をお願いします』
アナウンスが鳴り響く
「行こう。りょふ」
後ろにいたミルトがそう言うとりょふの肩に軽く片手で叩く
近くにいたアビスの姿のあいつも後をついて行った
「あぁ…それじゃあゼロ、ゼル。先に行ってくる」
あいつらは部屋を後にしようと扉を開けた
俺は疑問に思ったことをモニターの画面を見たまま聞く
「なぁお前ら。行く前にひとついいか?」
「なに?」
ミルトが俺の言葉に反応する
“記憶が残ってるなんてことはねぇよな?”
あいつらの行動には毎回疑問に思っていた
もう2度目のゲームが行われている中で、生き残ったやつはあまりいなかった
だが、ほぼあいつらの戦闘で死にゆくやつが多々いる
それに何やらヒソヒソと動いていたしな
「そんなことないよ。もしそうだったら僕達ここに居ないし…行こ……りょふ」
飛鳥がそう言ってあいつらは部屋を後にした「……兄さん。どうして今聞いたの?」
ゼルは本に目を向けたまま聞いてくる
「そりゃあ……」
俺が言いかけるとバンッと大きな音を立てながら、誰かがドアを開けた
「お?まーたやってんのか?」
ムカつく野郎が俺に声をかける
「何用だ。カエン」
「そろそろ行くぞ?楽しみなんじゃなかったのか?」
カエンがそう言う
そうか、もう本番のゲームが始まるんだな
「行くぞ。ゼル。話は後だ」
「……言われなくても分かってるよ。兄さん」俺らは部屋を後にする
こっからが俺らの仕事だ
パゴニアside
ゼロさんとゼルさんが部屋を出ていく
「アイツらも相変わらずだな。……じゃあ俺らも行こうか。パゴニアさん」
「……はい。許可は要りませんので存分に…」「分かってるよ」
私はカエンさんについて行く
やはりゼロさんも気づき始めていたのですか
想定外でしたが、あのおかげで確定出来ましたしかし私が手を出さなくとも、マスターからの指示を待つのみ
いつでもお呼びください──我がマスター
“それが、私の仕事ですから”
アラタside
これで何回目だろうか
まぁ、そんなものはどうでもいいんだが
俺もオール、ロウとレイの4人で向かう
3人ともこの後行われるゲームが楽しみで仕方ないらしい
「なぁ、アラタ」
オールが俺に聞いてきた
「黒はどうしたんだろうな。もうそろそろ時間だっつうのに」
「さぁな…あいつの事だから、しばらく経ったら来るだろ」
俺はそう返した
正直、相手がどうなろうと、俺には関係ない事だ
報酬さえ貰えればいい
脱落者を出させること
“それが俺の仕事だ”
りょふside
ついに来てしまった
俺はミルト、そして飛鳥と共に長い廊下を歩く
「あ!ミルトさーん!りょふさーん!あしゅかー!」
向こうから聞きなれた声が聞こえてくる
「アリスか。なんでここにいるの?さっき呼ばれてなかったか?」
俺が聞くとアリスは少し暗い顔をした
「その……さっきゼロくんが言ってた事で、心配になって…」
アリスは監視する役割を果たしていた
さっきの話を聞いていたのだろう
正直、ゼロのあの言葉には緊張が走った
ラウラのお陰で何とか避けれたが、時間の問題だろう
なぜなら────いや、今は考えないようにしようか
“彼らを助けるのが俺らの仕事なのだから”