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【母との回想】
春斗とランは解散し、その日を終えた。
そして同じ屋根の下で夜を過ごした。
朝日が窓から差す。春斗は知らない人と寝るのは初めてかつ、異世界というよくわからない物について考えており、異世界の鳥はそんな春斗を歓迎するかのように小さな声で鳴いている。
もはやそれがBGMとなっているようだ。
「ハルトさん。」
囁き声の男声にしては少し高めの声が聞こえた。
春斗が振り返ると、布団の上で座っている寝起きのソロが春斗を見ていた。
「えっ」と、思わず小さな声が出る。
身体は起き上がっているので布と布が擦れる音がするはずだったが、
春斗の耳には入らなかった。
ソロが気を使って音を立てずに動いたのか、それとも春斗が気づかなかっただけなのか。
その時は分からなかった。
「おはようございます。」
ソロはまた囁き声でニコッと微笑んだ。
それに春斗は「おはようございます…。」と反射的に返す。
「ハルトさんとアリアさんに伝え忘れていたのですが、ここら辺は朝6時30分になると、」
グギャアアアオオオオオォォォォ!!!!!!
ソロの喋り声を遮り怪獣や恐竜とも言えるような鳴き声が聞こえた。地響きでさえもしており、この鳴き声によりさっきまでBGMと化していた鳥の鳴き声は不協和音となった。
そのせいでアリアは飛び起きてしまった。
アリアは飛び起きつつ「ぅぇえっ?!?!なにぃっ?!?!」と情けない声で叫んだ。
そしてそれに続いてランもゆっくりと身体を起こした。あくびまじりの声で
「ふわぁ…おはよぅ…」と昨日の態度からは想像出来ない声を出した。
その一連の流れが終わるとソロが普通の声で喋り始めた。
「おはようございます、アリアさんとハルトさんには説明し忘れていました、すみません。ここ、ワルドの森には草木龍(そうもくりゅう)の群れがいるんです。その中のボスが毎朝6時30分に鳴くんです。だからワルドの森、その周辺にすむ人達は目覚まし時計代わりになっているんですよ〜。」
ソロが語り終わると「へ〜そうだったんだぁ…」とアリアが独り言のように喋った。
するとランがぼそっと補足した。
「だから草の神の森って言われてるんだよね。他の理由もあるけど。」
そのランの発言の“神”という言葉に春斗は思わず反応し、「神…?」と呟いた。
(宗教とかはそういうの考えてはいたけど、龍との関係性がわからない…それよりも馴染んでるけど龍ってなんなんだ?!)
春斗が思考を巡らせる。それを察して見兼ねたランが
「この世界には神が5人いる。
草と生命の神、ドゥム・アズラメ・ワルド。
水と愛の神、エンスイ・バジャートイン。
光と知性の神、ウドゥテン・ニノン。
土と理性の神、キ・ミュアイトン。
風と感情の神、ニンリエル・アラーン・シェイタン。」
と教えた。しかし、
春斗の頭のなかに横文字がずらりと並べられ、混乱している。
そんな事を知らないアリアは間髪入れずに、
「神は初魔法種とその派生を操れるけど、神に仕えてる大天使は初魔法種から派生した魔法しか操れないんだよねっ、だから大天使は7人しかいないんだ〜!」
春斗はアリアによってさらに混乱し、思考がほぼ止まってしまった。それを察したようにソロがゆっくりと喋り始め、流れを切った。
「はいっ、じゃあ1回お話はここまでにして〜、朝ごはんたべましょ〜、ご飯食べないと整理したい情報に手がつきませんよ〜!」
ソロ以外の3人が納得し、春斗が立ち上がろうとした瞬間「キャアァッ!!」
甲高いアリアの短い悲鳴が上がり、顔を布団に埋めた。そして苦しそうに唸り声をあげている。
ソロが瞬時に状況を察知し、
「ハルトさん!目暗の魔法の効果が切れました!早く魔法を!」と春斗に伝えた。するとランが素早く春斗の手を引き、アリアの顔あたりに近ずけた。
「春斗、やり方覚えてるか?!」
ランが少し早口で喋る。
「お、覚えてるっ!」
「じゃあいけるよな!」
(手に力を込めて、目を暗いところに移動させるイメージで…押すっ!)
そして、春斗が手を押すと目の前に黒煙が現れそこにいる全員に既視感が与えられた。
黒煙が落ち着くと案の定アリアは真っ黒に染まっており、魔法初心者の春斗ですら察した。
ランが思わず口を開いた。
「バッカお前何してんだ?!天然様かよ?!?!」
春斗はその勢いに押されて「す、すみません…」と言うしか出来なかった。
そして何も言わずにソロが上から水を被せて直ぐに黒ずんだ水を吸収した。
そしてゆっくりと落ち着いて春斗は手に力を込めてもう一度押した。
すると先程のような既視感は無く、アリアの唸り声も聞こえなくなった。
するとアリアが大きなため息をついて呟いた。
「はぁ…びっくりした…。急に視界が真っ白になって目が痛くなったから…。みんなありがとう…!」
その言葉に続きランは
「逆に昨日からよく今まで魔法が持ったもんだよ…」
と呟いた。
3人は同時に大きなため息をついた。
そして4人は朝食を食べに向かった。
───────────────────────
リビングに向かうと、ランのお母さん、メルが丸太をそのまま使ったようなウッドテーブルに朝食の準備をしていた。
「あ、おはよう〜!2人ともよく寝れた?ランがもしかしたらいびきかいてたかもしれないけど大丈夫だった〜?」メルはにこやかにそう言った。
それにすぐランが「別にいびきかいたことないし。」
と訂正した。
さらにメルがそこに「でもお母さんと一緒に寝てた時はいびきかいてたじゃない〜」と訂正した。
所謂“親子らしい”会話を春斗は耳にした。
その会話に、春斗は元々いた世界の事を少し思い出した。
(こういう会話、お母さんとしたことないな…)
メルが話を切り出した。
「じゃあ、ランちゃんの文句はこれくらいにして〜、朝ごはんのお手伝いしてくれる?」
その言葉を聞くとアリアが大きな声で元気に返事をした。
「はーいっ!あたし、お手伝いします!!何すればいいですかー?」
アリアに続いてソロも返事をした。
「はい、僕もお手伝いします。川から水を汲んできますね。」
またメルの表情がパッと明るくなった。
「うふふっありがとう、ソロ。じゃあアリアちゃんは私とおかずを作ってくれない?それと、ランとハルトくんはあそこの氷箱(こおりばこ)から卵を4つ取ってきてくれない?」
春斗は「氷箱」という聞きなれない言葉に反応した。
「氷箱って、冷蔵庫のことだよね?」
「そう。ここの世界には冷蔵庫みたいな機械の物がほぼないんだよ。」
そんな会話をしながら2人は卵を取りに行った。
氷箱の近くはひんやりとした空気が流れており、春斗は思わず鳥肌がたった。しかし、ランの様子を見る限り鳥肌はたっていないので慣れているのだろう。
氷箱はほとんどが明るめの灰色の岩でできているが、
扉はよく見る木材で出来ているためそこから冷気が漏れていると考えられる。
春斗はその氷箱を開けた。中には恐らく茶葉と思われる物が入った飲み物、現代でもよく見るミニトマトやキャベツなども置いてある。また、得体の知れない肉片もあった。
どれもキンキンに冷えていたが、特に機械類は見つからずただ食材がしまってあるだけであった。
するとランが話し始めた。
「卵は1番下の段の左にあるから、2個取ったら僕に渡して。」
春斗は「わかった。」と返事をしたあと指示通りに卵を渡し、春斗も2個卵を手に取った。
「お母さんー、卵4つ。はい。」
とランがメルに呼びかけると、
「あ、ありがとう!あとランちゃんごめん!昨日お父さんが取ってきたお肉も持ってきて〜、それとアリアちゃんはミニトマトときゅうりとレタスをお願い!」
「はーい」「はーい!」
と、ランとアリアが返事をしてまた氷箱へ向かった。
「じゃあハルトくんはこのお鍋かき混ぜておいてくれない?」
春斗にそうお願いした。もちろん「わかりました」と小さな声で返事をして、お玉を受け取った。
春斗は今朝の神についての話を頭の中で整理することが出来た。そして、春斗はまた考え始めた。
(お手伝いって、こういう感じなのかな。子供の頃はどれだけ申し訳なくてもさせてくれなかったから。手が怪我したらどうするんだって、ずっとお母さん言ってたなぁ。)
春斗がその時思っていたのは、
“家族”という存在と働きはどちらもかけがえのないものであり、温かいものであるはずという事であった。
そんな事を思いながら春斗はお玉でスープをゆっくりと混ぜていた。
コメント
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ぷちさん、第6話読みました! 朝の草木龍の咆哮、めっちゃインパクトありますね(笑)世界観の説明を春斗の混乱を通して自然に聞けるのがいいなと思いました。「お手伝い」のシーンで春斗が子どもの頃の話を思い出すところ、じんわり来ました…。家族の温かさに触れてる感じが伝わってきます。魔法の失敗も春斗らしくて微笑ましかったです!
#ファンタジー
ノリトネギ
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#ロマンスファンタジー