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かなり長い時間、アリスはその眼と見つめ合った
アリスが目をパチリと一回閉じると、その眼もパチリと一回閉じた
アリスが二回パチパチとすると、同じくその眼も二回パチパチと瞬きした
だ・・・だれ?
まるで蛇が草の陰からニュルリと顔を出すように、薔薇の中から顔だけが除いた。顔の位置は低く、今のベッドに座っているアリスと同じぐらいだ
下手な刈り方をされた、濃い真っ黒の髪は量がたっぷりで
小さな耳はまるで翼のように横に突き出ている、その顔は丸顔で・・・
アリスの表情は和らいだ
可愛い・・・
小鹿のような大きな瞳はこぼれ落ちんばかりに見開いて、じっとアリスを見ている
・・・ここからなら・・・顔しか見えないけど・・・子供だわ・・・・
アリスと顔はしばらく見つめ合った
「・・・・おは・・よう・・・・ 」
ビクッと顔が驚いた。まるで女性を初めて見たような驚き方だ、アリスは胸の上の方までシーツを引き上げた
その時アリスはハッとした、もしかしてこの子は北斗さんの子供?
途端に不安の波にさらわれる、もしそうだとしたら
ああ・・・どうしよう・・・
私は北斗さんにひと目で魅了され、体ひとつで彼と一緒にやってきた
私は彼の事は何も知らない。どんな家族構成でどんな人生を歩んで来たのか・・・
急に心臓がドキドキしだした。ここはちゃんと冷静に判断しなくては
アリスはもう一度バラの中に隠れている、顔に話しかけた
「ねぇ・・・・少しここへきてお話ししない?今朝は良いお天気ね 」
明らかに顔は警戒の表情を浮かべ、今にも逃げ出しそうだ
「いつもここはこんなに天候が良いの?淡路島は温かい島だと聞いているわ、私の家は関西でも寒い山の上の方なの・・・きっと今頃は雪が降ってるわ」
山の上から来たと聞いて、顔が好奇心にピクリと動いたのがわかった
もっとアリスを良く見ようと、ゆっくりと「顔」がバラの中から出て来た
男の子だわ・・・・やっぱり・・・5歳?6歳ぐらい?
ひょろっとした体つきがまるで、巣立ちしたばかりの雛だ、紺色のパーカーに下は半ズボン
マナー講師のアリスはしゃべり続けた、人に心を開いてもらうのは天気の話から入るのが最適だ
男の子はじっと凝視して、アリスの話を聞いている
「ねぇ・・・・あなたのお父さんて・・・もしかして北斗さん? 」
少年がアリスを見つめたままフルフルと頭を振った
「ああっ!よかったぁ~~~」
咄嗟のアリスの大声にビクンっと少年が飛び上がった、顔に警戒の表情で眉をしかめ、少年はその場から逃げ出そうとした
「あっ!!待って!お願い!行かないで!」
アリスは追いかけようとベッドから脚を出した、むき出しの太ももを見た少年は、ここでアリスが全裸なのに驚いて、大きな瞳をさらに見開いてその場に立ちすくんだ
「あ・・・あら・・・ごめんなさい・・はしたないわね・・・・私ったら」
ホホホとあわててアリスが上掛けシーツの下に、ゆっくりと脚を戻し、再びシーツのミノムシになった
同じようにゆっくりと少年も戻って来た、顔には警戒の色が全面に出ている
「あなた・・・ここの牧場の子?」
従業員の子供だろうか?アリスはそう思った。少年はコクリとうなずいた
「そう・・・それじゃ北斗さんのこと・・・知ってる?」
少年はアリスを見て視線を伏せ、頬を染めてコクリとうなずいた
そこへ入口からどやどやと誰かが入って来た気配を感じた
アリスはびくりと熱いコンロに触ったように、飛び上がった、あきらかに北斗ではない、それも数人いる
背の高い男性が二人チラリと見えた
アリスは上掛けシーツをさらに頭からかぶった、あわてふためいての反応だった。今の自分は全裸だ!
男性二人が大声で話しながらこっちへやってきた
「アキが多分ここらへんにいるんだ」
「おーい!アキ―――」
「兄貴の車があったぞ!帰ってきてる 」
慌ててアリスは自分の服がどこにあるか、キョロキョロ探した
たしか夕べ北斗さんに脱がされてから、今まで自分の服は一度も見ていない
すると目の前の男の子がおそらく初めて見るだろう、アリスのピンクのレースのブラジャーを親指と人差し指で、恐る恐るつまんで拾った
目の高さまで持ち上げて、これは何だ?とばかりにマジマジと見つめている
「あっ!ちょっと!ダメよ!それは返して! 」
「アキ―!そこにいるのか?」
ぎょっとしてアリスは真っ赤になった。シーツを引きずって逃げるには、このシーツは大きすぎる
絶対絶命のピンチだ
ど・・・どうしよう!北斗さん!!早く来て!