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アリスはシーツから目だけを出して状況を把握した。北斗はいなくて全く見知らぬ男性が二人こっちへやってくる
「兄貴の車はたしかにあったんだが、姿が見当たらないんだ」
北斗の弟の直哉の声が聞こえて来た。その後ろからビック・ジンもやってくる
「お前の眼は節穴か?珍しく酔っぱらっていないと思ったら、北斗が帰ってりゃまず俺達の顔を見に来るだろうよ、ヤツはまだだよ 」
険のある声だ
「ジン!それじゃ自分の目で見て確かめてみろよ、駐車場に兄貴の車が停まって・・・・あっ!おーい 」
茶色いロン毛だが目はどこか北斗に似ていた、長年の過酷な労働でついたのだろう、二人とも筋肉質な体に長身だった
彼らがアリスの前に立っている、少年を見つけて言った
「なんだ!アキ!そこにいたのか?朝メシを作ったのに、おまえがいないから探しに来たんだぜ。そこで何をしているんだって・・・うぉうっっ!びびった! 」
幽霊を見た人のリアクションって、こんな感じだろうかとアリスは思った
茶髪の男性はアリスを見て10センチほど飛び上がった。もう一人の長身の男性は叫びはしなかったが、驚きに髪の毛は逆立っていた
また先ほどの少年と同じように、二人とベッドにいるアリスはしばらく見つめ合った、双方ピクリとも動かない
「・・・・女だ!」
「ああ・・・女だ・・・」
ぼんやりとした口調で二人が言う
そして二人同時にかがんでのぞき込んで近くで見ては、次に背筋を伸ばして遠くからまた、アリスを凝視した
その時アリスに巻き付けていたシーツが、緩んで右肩があらわになった。慌ててきつくシーツを首まで巻き付けたが遅かった
咄嗟に二人の頬が赤らんだ、アリスが裸だとバレたのだ
アリスが幽霊ではなくて生身の人間だと理解して、二人は少し落ち着きを取り戻した
ゴホンッ・・「え~・・・と・・・その・・君は?・・・どうしてここにいるんだい?」
直哉が警戒しながら言った
そんなのこっちが聞きたい、何かアリスが言いかけた時、北斗が走ってやってきた。両手には朝食が乗ったトレーを持っている
「なんだ!お前達!何してる!」
「あんれまぁ!帰ってきてたのか!」
ビック・ジンが北斗を見て、深い満足の微笑みを見せた。しかしその横で直哉がギロリと北斗を睨んでいる
「兄貴!俺は兄貴を見損なったぞ!」
いきなり直哉がトレーを持って駆け付けた、北斗の胸ぐらを両手で掴んだ
「まさかと思った!こりゃあんまりだ! 」
直哉の抗議にビック・ジンもそうだそうだと首を縦に振る
「なにがあんまりだ?」
北斗が不愛想に言って離せと身をよじる
「ほう?違うと?そりゃ俺もビック・ジンも、兄貴が女気がない生活をいつまでも長く続けていては、そのうち病気になるんじゃないかと心配はしてたよ?していたけどさっっ」
直哉が両手を広げて「ハッ!」と鼻を鳴らす
「俺も貞子に言ったんだぞ、お前に会う堅気の女性を紹介してやってくれってさ」
ビック・ジンの面長の平凡な顔から、心底北斗を心配しているのが伝わって来た
ゴホン・・・「あ~・・・お前らは何か勘違い・・」
さらに混乱した様子で直哉が北斗を責める
「正直に言って、俺は兄貴という人がわからなくなったよっ!こんな病気になるリスクを背負うなんて」
直哉は首を振り、アリスのいるベッドの横のスツールに、頭を抱えてドサッと座り込んだ
アリスがびくっと飛び上がった。ビック・ジンも目頭を押さえて首を振る
北斗はこめかみの血管が切れそうなぐらい、歯を食いしばり拳を握って言った
「お前らはいったい何が言いたいんだ?」
直哉はチラリとベッドでシーツを頭からかぶっているアリスを見て言った。明らかに北斗に怒っている
「あ・・・あの・・・ 」
「誤解しないでくれ!俺は君達には敬意を払っている!君たちのテクニックは芸術並みだ!あれほどの技術を身に着けるには相当の努力がいったはずだ。兄貴が夢中になって家に連れ帰りたくなるのも無理はない!」
何も言うなと直哉がアリスに、手のひらを見せて黙らせる
アリスは目をパチクリした。さらに心配そうに直哉がアリスを見て言う
「俺もこんなことは言いたくない、だけど君達と遊ぶにはリスクが高すぎるんだ。出来るなら毎月定期検査を受けるべきだ!君達の体のためにも・・・ 」
「北斗 」
てくてくと明が北斗の傍により、ピンクのブラジャーをまるで拾った落とし物を父親に渡すように掲げた
アリスが真っ赤になった
私のブラジャー!そしてあの子はしゃべれるのね
すかさず北斗はアリスのブラジャーを明からひったくり、ジーンズの尻のポケットにしまった
そして何でもない風で、コホンッと対面を保って咳をした、彼の耳が赤い
たまりかねたように直哉が北斗に注意した
「何もSM館の子をここに呼ぶことはないだろ?ここにはアキがいるんだ!ヤリたかったら家に呼ばずに自分が行け!少なくとも俺はそうしている!教育上良くないと思わないのか!」
「お前らは誤解している。彼女はSM館の女王様ではない」
「じゃぁ誰だと言うんだ?」
ビック・ジンが目を丸くして言った
「俺の妻だ! 」
北斗の言葉を聞いて「はぁ?」と明、直哉、ビック・ジン三人が同時に顔を歪めてこっちを向いた
アリスはシーツの巣から顔をやっと首まで出した。そして上目遣いで精いっぱい気品よく言った
「ご・・・ごきげんよう・・・」