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「飯田、飯田!」


横から俺を呼ぶ声に顔を向けるとニンマリした表情の墨刺がいた。

俺と目が合うと、勝ち誇った顔で右手を出してきて、左手でちょいちょいと指差す。


「なんだ?」


「いいから触ってみてよ」


墨刺に言われ差し出された手を握り、手の甲に触れる。


「どうよ、スベスベじゃない?」


「ああ、スベスベだな」


数日前に俺の手を触ったときに比べ、墨刺の手はスベスベになっていた。俺が触ると胸を張って自慢気な表情を強める。


「どうよっ、家にあった高級ハンドクリームをこっそり使ってケアした私の手は! これで飯田にリベンジできたでしょ」


「リベンジって、お前なにと戦ってるんだ……」


「そりゃあ、もちろん飯田とよ」


さも当たり前のように答える墨刺にもっと突っ込みたいところだが、楽しそうなのでこれ以上はやめておくことにする。


「あ、あの……」


手を握り合う俺たちの横から声が掛かる。


「あ、わるい」


「い、いえ」


声の主を見れば、俺と墨刺が手を取り合い道を塞ぐという、前と全く同じシチュエーションになっていることに気付く。


ただ違うのは、声の主である恭美の態度だろう。


手を離した俺たちの間を通ろうと声を掛けてきた恭美は、歩くそぶりを見せた後意を決した表情で俺たちを見てくる。


「あのっ、えっと。二人がどんな化粧品を使ってるか、その知りたいな……と」


墨刺が俺を目をパチパチさせながら見てくる。


「俺のは次生堂のエレクトシールってやつで、墨刺は?」


「えっ、私? ああっえ~とね……分かんない」


「分かんないってお前な」


俺たちのやり取りを見てクスクスと笑う恭美。


恭美と出会った次の日、一通のメッセージが届いた。


『私の中だけでなく外も変えれるよう半歩でも進んでみます。次に会ったときに、気付いてもらえるくらいは頑張ります』


相変わらずの短い文章。それでもこの文を考えるのに何時間もかけたのだと思うと、愛しく感じる。


彼女が変わろうと思う切っ掛けが俺と会ったことなのであれば、彼女の人生に花蓮麻琴を刻めたと、そういうことだと思う。


変わろうと必死にもがく彼女はとても美しい。


次に麻琴として会う日が楽しみだ。

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