_甲斐田視点_
…っ、!?何、この雰囲気…
すごい禍々しいが….魔とは違う…神のような。…それも邪神に近い雰囲気…。
不破さんと社長は気付いていないみたいだ。もちさんは大丈夫なのか…?
僕はもちさんが居た方向に振り向いた。万が一、もちさんに何かあった時の為に札に手をかけておく。
「 …もちさ___ 」
『 ×××××× 』
振り向いた瞬間に広がる”無”の世界。ひたすら底が見えない、正に虚空。そんな虚空を作っている中心人物は____剣持刀也 。
この虚空に飲まれてしまったら最後…だろう。
今のもちさんは自制が出来なくなって虚空が暴発してしまっているように見える。生憎こういったものには僕は専門外な為、進行を遅らせるのも、もちさんを落ち着かせることもできない。
手も足も出ない状態だ。
もちさんに気を取られてる間に、不破さんも社長も異常に気付いたようだった。
『 …な、なんですかあれ…!? 』
『 なんかヤバくないかこれ… 』
この状況の何がまずいかって、逃げ場が無いことだった。既に部屋の半分は虚空に侵食されている筈だし、唯一の逃げ場であるドアがもちさんが立っている方向にあるのだ。
僕が今、2人を守る為にできることは…
「 っ…! 」
これしかない。
残り2枚の札を取りだし、2人に押し付けた。
『 ぅわっ、何何何!?何が起きてん!? 』
『 ちょ、甲斐田さん!?無言で渡されても…! 』
2人のガヤを無視し、転移の術を唱えた。
普段なら、魔に貼り付けて僕の研究室に送るために使っていたもの。それと、重症の祓魔師を安全に送るための御札。
「 …どうかご無事で… 」
3枚あったならどれだけ良かった事か…。でも、僕は僕でなんとかする。だって、ここで自分を優先して、その上大切な人達を失ったら長尾と弦月に顔を合わせられない。
『 は、甲斐っ 』
『 甲斐田さっ 』
2人が安全な場所にいることを願って。
_剣持視点_
「 あァ、僕って…存在価値があったンだ。 」
カミサマに認められたんだ。この”虚空”を。
なんて素晴らしい事なンだろゥ。なんてィい気分なんだろう。
『 ッ_____!、っ、____!! 』
カイダくん、どうしテそんな顔をするノ¿ このスバらしき瞬間に立ち会えタというの二。
カイダくんは、この虚空のすばらシさを知らないンだ。きッと。
ぁア、泣かないデ。泣かナぃデよ。カイダくん。ボクと一緒にセカイの終焉を見届ヶようよ。ワタクシと一緒にこの世界をボクらの手で終わらせヨうよ。
コの醜きセカイを。このクソッタレな世界を゛ッ゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!
『 ッ___! 』
「 …¿¿¿ 」
突如として、ソイツは現れた。
『 はぁッ…はぁ、ッ… 』
「 …ボクの…ワタクシの…….存在すル価値を…ナくす気¿¿ 」
「 伏見ガクよ。キツネのカミサマよ… 」
ソイツは、 笑った。
『 にっ! 』
手をピースにし、明るく笑った。
そんな二、アカるく笑わナいでクれ。
そンなに、輝かないでくレ。
そんなに….
そん…ッ…なに……
そんなにッ……希望を見せないでくれよ…..ッ…
「 ボクが惨めに見えるじゃないかッ゛…!! 」
『 おっッ…と、危ない。 』
最後の力を振り絞って不意打ち紛いな事をしてみたが意味を成さなかった。
「 っ近寄るなッ゛!!僕に近付くなよッ…!!?」
キツネの神が。…伏見ガクが。…ガッくんが。
『 な〜…んとか間に合ったみたいで良かったっス! 』
ニコニコしながら僕に近付いてくる。
「 僕の…ッ…存在価値は…? 」
せっかくミトメラレタというのに。
ぽす、と僕の肩にガッくんの手が乗る。
『 とやさん、おやすみなさい。 』
その声は実に柔らかくて、暖かくて、優しい…。撫でられている、夢心地のような気分になった。
僕はそのまま、夢心地の状態に身を任せて意識を手放した。
__________
「 っは… 」
ここ…僕の部屋……?
『 !!もちさんっ!!! 』
『 剣持さんッ、!! 』
『 もちさん…!!! 』
『 とやさん、! 』
僕が状況確認をする間もなく、色々な声が聞こえてくる。
「 …?皆、どうしたの…___ 」
『『『 ごめん!!/なさい!!』』』
「 え…?え…?どうしたのそんな…急に謝られても困るんだけど… 」
『 にひっ、wとやさん、まずは謝ってくれてる彼らへお返事を言ってあげるべきじゃないんですか~?w 』
とガッくんがニヤニヤしながらそう言う。
イマイチ状況が理解出来ない。頭の中?でいっぱいだ。
『 あっ、あのっ、!僕ら、もちさんに酷い事をしてしまってたみたいで…ッ!! 』
『 大切なメンバーなハズやのに、記憶が無くてももちさんに酷い事をした事実は変わらんから… 』
『 ほんとに、 伏見さんから聞いた時はびっくりしましたよ、同時に罪悪感も湧いてきました…。 』
…そっ…か…
「 …僕って… 」
存在価値、あったんだ。
「 …ふふ、なんでもない。…許してあげましょう。3人の事はね。致し方ない状態であったことには変わりありませんし、それにもう過ぎたことですしね。 」
『 剣持さん…! 』
僕は屈託のない笑顔で笑ってみせた。
『 …これ、ほんの我々からのお気持ちの品ですが… 』
社長が小さな箱を取り出し、僕の目を見て、ゆっくりしゃべりだした。
『 その…剣持さんに許してもらえるとは思って無くて…ワンチャン剣持さんが自死を選ぶ可能性があったじゃないですか。そう考えると相当な事をしたな、…と。なので剣持さんに嫌われようと、見捨てられようと我々ろふまおはどんな運命でも受け入れようとしていました。 』
『 なので、…その、許してもらえたことは凄く光栄でもありますし、同時に凄くびっくりしています。 』
『 …どうか、もう一度やり直させてほしい、という意味で、これを受け取ってくれませんか? 』
とても真剣な声で、真面目にこの事を重く受け止めている事が分かる。深々と社長が頭を下げると、ふわっちや甲斐田くんもいつもとは違う真剣な表情のまま、ワンテンポ遅れて頭を下げる
「 …っぷ、wあははっw 」
あまりにも真剣に僕は笑ってしまった。
3人とも僕の笑い声を聞いてポカンとした表情を浮かべる。ガっくんも僕が笑い出すとは思ってなかったようで、びっくりした表情になっていた。
「 皆真剣過ぎて逆に笑っちゃうよ、w 」
「 …ですが、社長の言う通りですよねw本当は許されざる事をしてしまったのかもしれない、3人は。 」
「 …でも!!僕は3人を信頼している。だからこそ許せたのです。 」
「 僕は…ろふまおが。3人が。…そしてガっくん。にじさんじが大好きです。 」
そうハッキリと、今思っていることを言い切った。は〜ぁ、言いたい事を言えてスッキリした。
『 …もちさ〜んっ! 』
『 とやさん、やっぱり罪な男だぜ…! 』
『 もうもちさん本当に僕らの事好きじゃないですか!! 』
『 あっはっはwやっぱ剣持さんですね、wほんとうw 』
皆んなの表情が明るくなり、いつもの楽しくて明るい雰囲気に戻った。
僕も皆んなに釣られて自然とニコニコ笑った。
「 本当にありがとう、皆! 」
happy end__ 「改めて」
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