「___難波津に、咲くやこの花、冬ごもり_」
畳の香り。響き渡る声。
「_今を春べと、咲くやこの花____……」
自分の前に座る相手。とくとく高鳴る胸。即ち緊張感。
「今を春べと、咲くやこの花___………」
いや、緊張感ではない。これは……
「ちぎりき_
__すっ。
音のない、軽い取り。
……これは、試合への、高揚感。
作品設定
⚠︎こちらの作品には元七葉寂照秘密主こと放浪者さんのこちらで考えたお名前が出てきます。
そういうの無理って方はどうにかしてください。
舞台
現代。稲妻へもとても行きやすくなり、国際高校(テイワット国際教令院)ができた。場所はスメール。
そもそもの神については今はただの歴史とされているが、まだ存在はしている。
神の目を授かる者は、もう少ない。
楓原万葉
とある高校に通う高校一年生。元々趣味で百人一首をやっていた。高校では友達の平蔵と競技かるた部に入る。丹羽という従兄弟がいる。耳がよく、子音がわかる。取る時の手が軽いので取る時音がない。
級はとっていない。
得意札は 「おく」(作中で読んでませんでしたか?!
)
鹿野院平蔵
楓原の友達。高校一年生。百人一首にはあまり触れてきていない。楓原に誘われて競技かるた部に入る。友達がとんでもなく多い陽キャ。探偵が出てくるミステリーが好き。
級なし。
得意札は 「よのなかよ」(曰く、鹿入ってるから!だそう。)
雷電傾(放浪者 傾奇者から)
楓原や平蔵と同じ学校に通う高校二年生。部長。瞬発力特化で、突き手多め。高校生らしからぬ大人びた発言、思考をしている。楓原のことをなぜか知っているようで…
A級。つよい。
得意札は 「かさ」(笠っちなので…)
トーマ
同じくかるた部の高校二年生。副部長。家の仕事が忙しいそうで、あまり部活に来ていない。最近は最早学校も休んでいるそうで、どんな人かまだわかっていない。
B級。強いらしい。
得意札は まだわからない。
ナヒーダ
競技かるた部顧問。声が綺麗。幼く見えるが、中身は全然大人。傾のことを昔からよく知っている。自らの知恵を使い戦略をいつも考えている。
ごく稀に、何百年も前にあった国や神の話をしてくれる。
丹羽久秀
高校の近所に住んでいる、楓原の従兄弟。成人済み。近くの工場で鉄工業してる。傾に何故か懐かれており、たまにかるたに付き合わされている。
級はとらない(取るほど熱中してない)。
得意札は 「ひさ」
長ーい校長の話も終わって、無事入学式を終えた万葉。
放課後、皆新しい友人を作ろうと色々な人に話しかけに行ってはケラケラと笑って、万葉はそんなクラスメイトたちをぼーっと眺めていた。
「万葉はどの部活にするの?僕はまだ決まってなくてさ〜。」
同じクラスで入学前から仲の良かった鹿野院平蔵に声をかけられ、はっとなる。万葉は慌てて目を合わせ返事をした。
「…っあ、平蔵でござるか。拙者は、競技かるた部に入ろうと思って」
「やっぱそうだよね〜、あーどうしよっかなぁ〜。 」
初めに言っていたように、平蔵はまだどこに入るか決めてないらしい。
万葉は幼い頃から好きだったかるたがもっと強くなれるように、競技かるた部に入ることを決めた。
万葉は少し考えてから平蔵に提案をする。
「そうでござるなぁ、平蔵も一緒にかるたをやるのはどうでござろう!」
「えぇ?!でも僕やったことないし…」
「大丈夫でござるよ!!拙者が教えてやろう!それと、ここのかるた部は強いと聞いておる。きっとどうにかなるでござるよ!」
「そっか、まーどうにかなるよね!」
そんなこんなで、万葉と平蔵は競技かるた部に入部することとなった。
「へえ、二人仲良く体験に来たの?ふーん、まあ僕しかいないけどね。」
「ちょっと笠っち!その口の聞き方はやめてちょうだい。ごめんなさい、これでもこの子は部長なのよ。」
体験入部期間、競技かるた部へ向かった万葉と平蔵。
開幕早々、少年と幼女?の喧嘩が始まった。
「僕部長になったつもりないんだけど?三年のやつらが勝手に辞めてっただけだろ。」
「もう…ごめんなさい。わざわざ来てくれたのに…私はナヒーダ。競技かるた部の顧問をしているわ。」
「拙者は楓原万葉と申す。こっちは鹿野院平蔵。」
「鹿野院平蔵です!えーと、よろしくお願いします?」
「ふふっ敬語じゃなくていいわ。私、人間…いいえ、生徒たちともっと仲良くしたいの。ほら笠っち?あなたも名乗りなさい。」
そうナヒーダが言うと、少年は気怠げに答えた。
「だからその変な渾名やめてくれる?……僕は傾、雷電傾。」
雷電、と言う名字は二人とも聞いたことがあった。昔あった稲妻幕府の将軍が雷電と言う名前だったからだ。
平蔵が何か疑問に思い質問する。
「あのさ、この部活って傾センパイしかいないの?一人だけ?」
「いいえ、そんなことはないわ。確かにたいてい彼一人だけれど…厳密に言うと二人ね。」
そうナヒーダは答える。
そして、傾が話し始めた。
「…前はもっといたんだ。三年も、二年だってもっと……」
傾の話によると、昔は三年も二年もたくさんの数がいて、強豪校だったらしい。だが、何があったか知らないがみんな次第に辞めていった。残ってくれたもう一人の二年…トーマは、家の仕事が忙しいそうで部活にも、学校にも来れていないらしい。
「そんな中、来てくれたのがあなた達ってわけね。二人はもう入部決めたのかしら?そうであれば歓迎するわ!」
「はあ、そんなことどうでもいいから。…ねえ君、楓原って言ったよね?」
「そうでござるが…拙者に何か?」
「…いや、なにもないよ。とっとと入部届持ってきなよ?あのうるさいチビが目ん玉おっことすほど大きくして待ってるからね〜 」
「は、はあ…」
「良かったね万葉!楽しそうな部活で!」
「そうでござるな…?」
(少々癖が強いような……)