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#蜘蛛ですが何か?
イレガ
8,381
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夜の森に、静寂が満ちていた。
月明かりの下、白銀の髪を揺らしながら、ひとりの少女が歩いていた。
ルナ・シルヴェイン、十五歳。
紫色の瞳を持つ彼女は、いつもと変わらない笑顔を浮かべていた。
けれど、その身体には誰にも明かしていない秘密がある。
幼い頃から、原因不明の呪いに蝕まれているのだ。
時折、身体から力が抜け、魔力が不安定になる。症状が強まれば、肌に黒紫色の紋様が浮かび上がる。
自分の治癒魔法でも、呪いだけは治せなかった。
それでも、ルナは立ち止まらない。
自分の身を守れるように、誰かを守れるように。
そうして鍛錬を続けてきた彼女は、その夜、思いがけない光景を目にする。
森の奥。
黒衣をまとった人物が、静かに佇んでいた。
紫色の魔力が夜を照らす。
その力は圧倒的で、動きには一切の無駄がない。
まるで、闇そのものを支配しているかのようだった。
ルナは息を呑んだ。
綺麗。
強い。
そして――どうしようもなく、目が離せない。
胸が、どきりと跳ねた。
「……っ」
自分でも、なぜこんな気持ちになるのかわからなかった。
ただ、もっと見ていたい。
もっと知りたい。
そんな想いが、胸の奥から溢れてくる。
そのとき、黒衣の人物がこちらを振り向いた。
紫色の瞳と、彼の視線が交わる。
「そこにいるのは誰だ?」
低く、落ち着いた声。
ルナは一瞬、言葉を失った。
「え、あ……!」
いつもなら、初対面の相手にも笑顔で話しかけられるはずなのに。
今だけは、うまく言葉が出てこない。
「我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩るもの』
ルナにとっては、その一言が特別だった。
彼の名は、シャドウ。
その存在を知った瞬間から、ルナの日常は少しずつ変わり始めていた。
――もっと、この人のことを知りたい。
そんな想いを胸に秘めたまま、ルナは彼の背中を見つめていた。
やがてシャドウは、彼女の魔力に目を留める。
その奥に潜む、奇妙な歪み。
「……お前、少し興味深いな」
思いがけない言葉に、ルナの瞳が輝いた。
彼に興味を持ってもらえた。
それだけで、胸がいっぱいになる。
そして、彼女はまだ知らない。
この出会いが、彼女をシャドウガーデンへと導くことも。
自分を苦しめてきた呪いが、いつか彼の手によって解かれることも。
そして、学園で出会う冴えない少年、シド・カゲノーの正体も。
影に恋した少女の物語が、今、始まる。
Prologue End. 💜🌙
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