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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

171 - 7話 アーメッド共王国。ケモ耳を添えて。

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2024年03月29日

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「うまっ!!」

宿で無料の朝食を食べているのだが…美味い…聖奈さんの料理に負けていない。

「そうかい?食べっぷりのいい兄さんにはサービスだ!コイツも食ってしまえ」

宿の女将(熊耳)がテーブルにドンと音をさせながら、油のいい香りがするステーキを置いた。

ギリギリ食えそうだな……

出されたものは完食するのが、俺のポリシー。

「ありがとう。でも良いのか?

こんな朝食よりも高そうな…」

「いいんだよ。あんた見てると死んだ息子を思い出しちまったよ。

あの子もよく食う子だった……だから気にせずゆっくり食ってくれよっ!」

朝から重たい食事と重たい話を腹一杯食べさせてもらった俺は、食休み後に今度は商人組合を探すことにした。





「うん。ここも似たような造りで安心だな」

基礎は石造りで、壁は真っ白な漆喰。

「よし。ここで通用するかわからんけど、向こうの話を伝えて売れるか聞いてみるか」

俺の旅の最終目標は、この大陸中に砂糖や胡椒を蔓延させることだ!

えっ?知らない?

うん。だって、今決めたから……

「美味い飯が食えるなら頑張るか。聖奈さんに胃袋掴まれたままだとやばいからな……」

宿しか知らんが、ここの飯は美味かった。

何か理由があるかもしれんからその辺も聞いてみよう。

「いらっしゃいませ。ご用件をお伺いします」

ここでも獣人の女性が受付だった。

うさ耳の可愛らしい女性だが、バニーガールの様なお色気方面ではない。

庇護欲を掻き立てられる見た目だ。

「こんにちは。実は………」

俺はこれまでしていたことを伝えた。

するとうさ耳さんはすぐに席を立ち、別の人を連れてきた。



「初めまして。私はここレデュールの商人組合の組合長を任せられております、タジンと申します。

以後お見知り置きを」

「セイです。出来れば別室をご用意頂けませんか?」

商人モードだと人見知りしないんだよな。

演じているからか?

このお願いにギルマスはすぐに部屋を用意してくれた。

挨拶もそこそこに、俺は砂糖と胡椒を卸すことを伝えて信用出来そうな人だったので、本当の身分も明かした。

『仲間の女性陣に捨てられて、一人で旅をしているセイだっ!』

ではない。

期待に応えられなくてすまないが、ちゃんとこの世界の身分を伝えた。

伝えたギルマスは顔を青くしていたが、ここは同族のよしみ。

同じ人として、優しく接してあげた。

『控えおろう!このも…はないな…』

うん。身分を伝えるモノが組合のカードしかないわ。


話は戻って、定期的には難しいから倉庫を用意してもらい、そこに後日大量の砂糖と胡椒を納品することに決まった。

しかし、北西部と違い、こっちでは地球の白砂糖ほど白くは無いが砂糖が結構流通していた。

元々の販路や仕入れを壊しては本末転倒なので、白砂糖は高級品として少し量を減らし、逆に胡椒と塩と…後は帝国で新たに作っている工芸品などを増やすことにした。

取引の内容が決まったところで聞きたいことを聞いた。

まずは料理についてだ。

聞いた話を纏めると、色んな種族がいるから料理のバリエーションが多く、料理の質が自然と高まったようだ……素晴らしい。

「この国の名前と内情をお聞きしても?」

「もちろんにございます」

いくら話を進めてもギルマスの硬くなった表情は戻らなかったが、情報は集まった。


この国の名前は『アーメッド共王国』というらしい。

共王とはこの世界独自の意味で『複数の部族、種族を取り纏める者』だ。

つまりここは多民族国家として差別なくちゃんとしています。と言いたいようだ。

俺も地球のフツメン代表として、見た目で差別することは許せん。

よってこの国の在り方には多いに同意すると声を大にして伝えておいた。

もちろん偉そうに言えないから『素晴らしいお考えですね!』と言っておいた。

このアーメッド共王国の人口は把握しているだけで800万人はいるようだ。

把握出来ていない理由の大きな部分は、人と共存することを大昔から拒否している部族がいるからだ。

そうした部族は大昔から変わらぬ生活をしていて外部と殆ど関わらない。

国民としてカウントしていないが国内にいる為、何かあると動かなければならず、国の上役の頭を悩ませているらしい。

北東部地域ではこのアーメッド共王国が一番人口の多い大国のようだ。

他国もそうだが北東部は山が多いそうだ。山と言っても俺が通ってきた様な馬鹿でかいものではないとのこと。

要は平野や盆地が少ないって話だ。

街はここの様に少ない平野部に多く存在している。

旅の楽しみの為にあまり詳細は聞かなかったが、ここより北に国は存在しない…正確には未踏の地であり、人が生存できる環境にないのでわからないというのが見解のようだ。

その代わり南には沢山の小国があると聞いた。

別に小国家連合とかは結成しておらず、逆に周りの国とよく戦争や小競り合いをしていて、いつの間にか国の名前が変わったり取り込まれたりしているらしい。

小国はそれぞれ10万〜80万ほどの人口の国らしく、それが一つになったところでアーメッド共王国の敵にはならないから放置らしい。

そもそもアーメッド共王国に他の国をどうにかしようなんて野望はなく、自国内のことに集中できる今の環境の方が都合がいいようだ。

そして、その先には貿易国である北東部で2番目に人口の多い『ジャパーニア皇国』があるらしい…何だか……

いや、気のせいだろう……

貿易品は秘密だろうと思いきや教えてくれた。

『紙、鉛筆、調味料』と聞いた。

まさかと思いつい・・・


「調味料ってどんなのですか?まさか黒い液体とか…」

「おお!醤油をご存知でしたか!後は酢なる物などもありましてな!」

まずい……明らかに翻訳なしでも『醤油』って聞こえたぞ……

よし!とりあえずその国の事は忘れよう!

まずはこの国を楽しむことだ!

ちなみに正規ルートでこの国に来ようとしたら、ダンジョンがあるエトランゼをさらに東に進んで山を越えると小国がある所に抜けられるそうだ。

ここ北東部もバーランドがある北西部も山脈に囲まれているということだな。

もっと簡単に言えば大陸に十字に山脈が通っているという話だ。


画像



その山脈の低くて魔物があまり出ない所を使い行き来しているということだ。

俺は正規ルートだと何倍も遠回りになるから険しい道で来たけど。

そんな話を聞いた後、俺は商人組合を出て街をぶらついた。






「やっぱり醤油だ……」

見たくはなかったが、色んな店で売っていたので避けられなかったのだ。

「大豆があるなら他にも色々あるんだろうな。まぁ大豆じゃなくて他の穀物を代用した可能性もあるが…」

考えたくないのに考えちゃう〜!!

「こうなると…いや、ダメだ。そういう煩わしいモノから離れたかったんだろ!!」

「ママ〜。あの人、一人で喋ってるよ」

「こら!指さしちゃダメでしょ!見たらダメよ!ああいう人には近寄らないこと!」

………

帰ろう……

街中での独り言はマズイな。

これは異世界でも共通していたか…当たり前だけど。

俺は色んな意味で失意のどん底に落とされたので、今日は何もする気が起きず、宿に帰ることにした。




「それでも美味いものは美味いんだよな…」

俺は宿に帰り夕食の時間まで待つと舌鼓を打った。

「なぁに年寄みたいなことを言ってんだい。何があったか知らないが、これ食って元気だしな!」

ドンッ

宿の女将が相変わらずの豪快さでサービスしてくれた。

「ありがとう…女将さんのお陰で元気が出そうだ」

ちょっと泣きそうになるからそういうことするのやめて!

落ち込んだ時に優しくしたくらいじゃ、私靡かないんだからねっ!

宿で心と身体を癒した俺は夜に地球に帰り倉庫から大量の物資をリゴルドーの屋敷に運んだのだった。

聖奈さんに会うとジャパーニア皇国の事がバレそうだから書き置きだけ残した。






翌日、商人組合の人に倉庫へ案内してもらい、ギルマス監修の元、転移魔法で商品を運んだ。

「さ、流石バーランド王国国王陛下にございます」

呆気に取られていた。

「陛下はやめてください。ここにはお忍びで来ているので。

また後日仲間を連れて売れ行きの良いものを納品しますね」

ここにはギルマスと二人きり。何もないはずもなく……

いや、何もないって言えば何もないんだが。

素性をバラしているから転移魔法でちゃちゃっとね。

ここにはバーランド王国からまっすぐは来れないんだけど、流石商人組合。

しっかりとバーランド王国のことを知っていたし国王がセイであることも知っていた。

バーランド王国の発展具合もその国の成り立ちも知っていたのは驚きだったが、知っているのは商人組合でも組合長以上だけのようだ。

俺は呆気に取られているギルマスを促し、商人組合へと向かった。

金貰わないとな。旅の資金です。絶対使い切れません。


この時俺は知らなかった。このお金大金がすぐになくなるということを……

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