「あっ!リョウちゃーん!」
学年混合による基本講習のため、先輩でもあるリョウちゃんもいた。
嬉しそうに走って行く後ろ姿を見ながら、この後どうなるのだろうと気が気ではない。
「あ~、モトキ、わかい~」
思いきり走りこんで行くモトキを受けとめたリョウちゃんが、ぐふっと言いながらも嬉しそうにホワホワ笑っている。
この人、学年で浮いてないかな。大丈夫なんだろうか。
面倒見てくれる人いるのかな。
最初こそ印象が悪かったものの、今やお母さんのように心配になってくる。
「おい年下と遊んでじゃねえよ。ヒーラーの力すら学年下の奴に負けてるのに」
ああ、案の定か。
リョウちゃんのクラスメートは彼の加護を知らないらしい。
というのもトップクラス程度の魔力が無いと妖精を見ることすら出来ないからだ。
俺らだけでなくリョウちゃんまでをも見下してるということは、己の力不足を叫んでいるようなもの。
ちょっと哀れではある。
とんでもない加護を持っていながら自信無さげな言動になってるのは、こんなクラスメート達のせいなのかもしれない。
それは何だか許せなかった。
「あ…うん。ごめんね、練習しなきゃ…」
シュンとした顔のリョウちゃんに、先輩をガン無視したモトキが力強く見つめる。
「見返してやろうね、リョウちゃん」
生意気な年下がと思ったのか顔を歪める相手。
「あぁ!魔法選択の先輩ですよね。先日俺と手合わせ頂いた時はありがとうございます!未熟で手加減出来ずに飛ばしてしまってすみませんでしたぁ!お怪我無かったですか!?」
良い時に思い出した。
名前は覚えてないけど同じく魔法学科の人だ。
実技で吹っ飛ばした時の情けない顔を思い出しましたよ、先輩。
あえての大声で失態を知らしめてやる。
周囲も、え?そうなの?と思わず注目しているようだ。
はっ!と俺の顔を再確認した彼は、これ以上無様だった話をされないためにか。
途端に慌てて去っていった。
「やるなぁ、わかい」
「ありがとね、2人とも…」
「リョウちゃん。モトキと俺が認めただけの力あるんだから、自信無くすくらいなら練習しまくろう。協力するから」
なんでこんな熱くなってんだ俺。
びっくりした顔のリョウちゃん。
すぐに嬉しいような泣きそうな顔になるも、すぐさま力強くウン!と肯いた。
「僕もー!僕も協力するからね」
「あっ、あの、モトキからの訓練は、僕だとまだ切られちゃいそうだから気持ちだけ貰うね」
俺たちの様子をキャッキャッと喜ぶモトキに、冷静なリョウちゃんが慌てて優しい言葉で断った。
「さて、じゃあまず誰からやるか…」
物騒な言葉が聞こえた気がする。
あと5分で授業だ。
でも、1分あればモトキの自主練は終わってしまうだろう。
「あっ、さっきお願いした自主練いいですか?お願いしまーすっ」
俺たちに絡んでた友人へ、可愛いキャラを被ったモトキが早速声をかけに行った。
コメント
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リョウちゃん、正に「風で飛んでった自信もね どこかで貴方を待っているの」ですねぇ…✨️✨️