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#二次創作
ふゅう@不定期
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#ご本人様には関係ありません
ふゅう@不定期
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「だって……、とても大切にしているように見えるのですもの」
「……はっ。俺が愛しているのはお前だ、ジュリア。分かっているだろう? ソフィアとの結婚に愛はない」
――殿下は今……、何とおっしゃったの?
あまりの衝撃に、頭が真っ白になって、微動だにできない。
――あれは本当にパトリオット殿下なの?
パトリオット殿下が、女性の頬に手を添えて腰を抱き寄せた。
「お前が長く生きられるのなら、俺は何でもしてやれる」
ゆっくりと、二人の顔が近づいていく。
そして――
パトリオット殿下と女性の影が重なった。
――私は今、何を目にしているのだろう。
ついさっきまで結婚式の話をして、一緒に笑っていた婚約者が、別の女性に甘い言葉を囁き、唇を重ねている。
ソフィアは、震える手をぎゅっと握った。
――アノデキソコナイ。
パトリオット殿下の低い声が、黒い棘になって耳の奥に突き刺さる。
棘が鋭すぎて、息ができない。
他の女性を愛していることよりも、できそこないと呼ばれたことのほうが深く胸を抉る。
――ずっと、私をそんなふうに思っていたの?
嘘よ。
殿下はそんな人じゃない。
現実を受け止めきれない自分が、必死に彼を信じて縋ろうとする。
でも――
堰を切ったように涙があふれる。
パトリオット殿下とお会いするのだからと、早朝からメイドたちが整えてくれた化粧が、涙に溶けていく。
「ああ、ジュリア」
パトリオット殿下は、恋人との口づけに夢中でソフィアに気づきもしない。
――何て滑稽なのかしら。
夢であってほしい。けれど、これは紛れもなく現実だ。
黒バラの優雅な香りが充満する花園で、自分だけが色褪せ、景色の中から静かに消えていくような錯覚に囚われる。
ここに咲くのは、偉大な国王の名を冠した特別なバラだと、前にパトリオット殿下が教えてくれた。
いつでも入っていいと言われていたのに、一度も来なかったのは、殿下と二人で来たかったから。
『結婚したら陛下に許可をもらって、邸宅の庭園にも植えよう。あなたのために』
いつだったか、パトリオット殿下がそうおっしゃった。
あれは何だったのか。
――バラは愛の象徴というけれど……。
二人の周りで咲き誇るクリムゾンのバラが、まるで棺に添えられた餞のように見える。
高貴なバラが餞とは、できそこないの初恋にしては最高の死に際だろう。
とめどなく涙があふれ、頬を伝ってぽたぽたと落ちていく。
心が軋んで、割れる音がした。
「ふ……うっ」
嗚咽を堪えきれなくなって、ソフィアは震える手で口をおさえた。
これ以上は見ていられない。
ソフィアの限界を察したヴィニーが、前足でソフィアのスカートを掻く。
ソフィアは足元のヴィニーを抱きかかえると、その場から逃げ出した。
◇◆◇
カリントン伯爵邸は、王宮から離れた王都郊外にある。
ソフィアは、邸に着くなり馬車を降り、一目散に自室へ駆け込んだ。馬車の中でも涙がとめどなくあふれて、顔と感情がぐしゃぐしゃだ。
邸の主人であり、父親のカリントン伯爵に帰宅の挨拶をしなくてはならないが、今はとても冷静でいられない。
バタンと部屋の扉を閉め、その場に崩れ落ちる。ソフィアらしくない行動に、メイドたちは声をかけることもできず、ただおろおろと部屋の外から様子を見守るしか術がない。
「ソフィー、大丈夫か?」
執事から報告を受けたのだろう。すぐにカリントン伯爵が駆けつけ、扉をノックした。
――お父様には言えない。
カリントン伯爵は、紳士的で誠実なパトリオット殿下しか知らない。だから、パトリオット殿下との結婚が、不遇の娘に幸せをもたらしてくれると信じている。
今朝、王宮へ出かける時に見送ってくれたカリントン伯爵の顔を思い出し、ソフィアの胸はまた痛んだ。
「ごめんなさい、お父様。少しだけ……、一人にしてくださらない?」
嗚咽の合間に、どうにか声を振り絞る。
「……分かった。夕食には顔を出すんだぞ。お前の好きなものを用意させるから」
間をおいて、扉越しに聞こえた伯爵の声があたたかくて、ソフィアの顔はさらにぐちゃぐちゃになった。
――お父様、ありがとう。
声にならない声で伯爵に感謝する。
扉の向こうで、人の気配が遠ざかっていく。
ソフィアは、両手で顔を覆った。
胸が張り裂けそうなのに、パトリオット殿下の優しい眼差しや声を、生々しく思い出してしまう。
――全部、嘘だった。
いつから? 最初から?
「ふ……ぅ、あ……ぁ……うっ……」
ソフィアは、今にも爆発しそうな悲しみをすべて声にして、涙が枯れるまで泣いた。
ひとしきり泣くと、今度は疲労感が襲ってきた。
ソフィアは、ふらふらとした足取りで寝室へ行き、ベッドに倒れ込んだ。
体も心も空っぽになった気がするのに、胸の痛みだけがひりひりと焼きついて消えない。
――何も考えたくない。
体が、自分のものではないみたいに重たい。
涙で濡れたハンカチを投げ出して目を閉じる。
ソフィアの意識は、すぐに夢の中に吸い込まれていった。
窓の外が、鮮やかな茜色に染まり始めた頃。
「にゃぁお」
ヴィニーの声に、ソフィアはゆっくりと瞼を開けた。
優しい夢を見ていた気がする。瞼は熱っぽくて重たい。けれど、胸のひりひりとした痛みは、少しだけ落ち着いていた。
「そばにいてくれたの?」
ソフィアの声に反応して、ヴィニーの尻尾が嬉しそうに揺れた。
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