静寂。
潮の匂いと、鉄の味が鼻をつく。
「……腹、減ったな。」
主はぼそりと呟く。
死体を抱えたまま、血まみれの手を見下ろした。
「……なぁ、バルド。」
「お前は、まだ俺の中で生きてるか?」
答えはない。
当たり前だ。
死んだ者は何も語らない。
ならば、語らせるしかない。
主は静かに バルドの鎧を剥ぎ取る。
鎧の下に隠されていた肉が、赤黒く鈍く光る。
――咀嚼音。
一口。
また一口。
歯が肉を引き裂き、血が舌を濡らす。
「……あぁ、やっぱりお前は……強いな。」
鉄の味がする。
筋肉の繊維が、まるでまだ生きているかのように噛み応えを残していた。
噛むたびに、バルドの記憶が滲み出るような錯覚に陥る。
主は、目を閉じた。
バルドの怒声。
バルドの笑い声。
バルドの戦い。
全てが、体の中に染み込んでいく。
「これで……お前は、俺の一部だ。」
主は静かに立ち上がる。
腹は満たされた。
体が熱い。
――血が燃えている。
バルドは死んだ。
だが、主の中で バルドは生き続ける。
「ありがとうな。」
そう呟くと、主は歩き出した。
次の戦いへと、躊躇いなく。
コメント
2件
うぅぅちょっと泣けてきた(泣)主も悲しいはずなのに泣かないの偉い!!(???)続き楽しみです!!
今回も神ってましたぁぁぁ!!! かつての戦友を食っとる、、、のか?() だったらうちも一緒に食べてみたいでごわす!!!!(((は? 戦いはまだまだ続くぞ、、頑張ってくれ、、 次回もめっっっっさ楽しみいいいいいいいぃ!!!!!!