漸く残業も終わり、
家に帰ったのは零時を回った頃。
今からきちんとした夕食を作るのも憚られ、
常備してあったカップラーメンにお湯を入れる。
着替えは三分待つ間に終えた。
「いただきます」
誰に見られているわけでもないが、
母の教育もあって癖になった「いただきます」。
ほとんど無意識に口に出し、カップラーメンを
食べ進める。その間に見るのは、自身の好きな
ゲームのキャラクターのCVを担当する
声優さんのとあるアプリのアカウントだ。
食事中のスマホは行儀が悪いと
再三言われてきたし、
いつもならそんな事はしない。
しかし、いつも以上に残業が多かった今日、
少しでも癒しを求めたいと思ってしまうのが
人間、というか私だ。
普段は入浴前のちょっとした時間に見ているが、
その時間まで待つ事は到底不可能だと
帰ってきてすぐにわかった。
閑話休題。
ルーティンとしてアカウントを見る声優さんの
順番は決まっている。特に意味はない順番だが、
一番好きな声優さんは最後だ。
楽しみは後にとっておきたくて。
「今日はこんな撮影があったんだなー」とか、
「これが好きなんだ」とか、声優さんたちの事を
色々知ることができる。
その時だけは、自分の辛いことを忘れられる。
早々に食べ終わったカップラーメンは放置し、
体制は変えずに見続ける。
その内、浴槽にお湯を溜め終えたと言う知らせの
音楽が流れた。丁度最後の一人、
一番好きな声優さんだけだったので、
見終えてから入ろうと考えた。
検索欄に名前を入れて検索。
いつもならとりとめもない事が呟かれている中、
今回は長文だった。しかし、その長文を半分も
読まずに、この文章の意味がわかってしまった。
「え、、、?」
[私は今日をもちましてこちらのゲームの
ボイス担当を降りさせていただきます]
一行目からの文章。驚愕に思わず小さく声を
出してしまう。手の力が抜け、思わずスマホを
テーブルに落とす。
読みたいとは、到底思えなかった。
しかし、頭の中では読まなければいけないとでも
思っていたのか、無意識にもその文章に
目がいってしまう。
[誠に勝手なことではございますが、
事務所やゲーム制作関係者の方々とも
相談させていただき、この結果を出しました。
原因は関係者の方々の意思を尊重し
伏せさせていただきます。
声優業はやめないつもりでおりますが、
少しの間お休みさせていただきます。
今まで応援してくださっていたファンの皆様、
ご迷惑をおかけしてしまい
申し訳ございませんでした。]
「っ、、、!ほんと、に、、、?」
原因は伏せられているものの、
自身には思い当たる節があった。
アンチだ。
他のキャラクターにもないわけではない。
しかし、この声優さんが担当したキャラクターは
特にアンチが多かったのだ。
[このキャラがいなければ良いイラストなのに]
[このゲームでのお荷物]
そんな言葉が日常茶飯事。
勿論、その分ファンも多かった。
だから私たちは気にしていなかった。
でも、当たり前だ。この声優さんにとって、
演じているキャラクターが悪く言われることは
自分が悪く言われているのと同義。
精神的な負担になっていることは
間違いなかったはずなのだ。
それなのに、気づけなかった。
万一気付けていたとしても、
1ファンの私に何ができたと言うのか。
その声優さんの呟き。
リプ欄は荒れているんじゃ無いかと、
公式はどうなっているんだろう、
気になってしまっては集中することなどできず、
落として画面が暗くなってしまったスマホを拾い
その呟きをタップした。
言い方は悪いが、もっとアンチの声があると
予想していた私。純粋なファンが嘆く声ばかりの
その場を見て、ひとまず安心する。
だが、そのゲームの公式のアカウントは
どうだろう。恐る恐る検索欄にゲーム名を
打ち込み、アカウントをタップ。
声優さんの呟きと似た形式の長文を、
覚悟を決めてタップした。
「・・・っ」
なにも、言えなかった。予想通りといえば
予想通りだが、公式は荒れに荒れていた。
私は気づいていなかったのだが、
既に代役をこの方に、という文章も発信が
されていたようで、それも荒れる原因と
なっているようだ。
[公式の対応が悪い。やらせてる側でしょ]
[___さんがいなくなるとか悲しすぎる・・・]
といった、声優さん側を擁護するような声も
ある中、公式を称賛する者もいる。
[いい仕事したな]
[朗報助かる]
公式を不自然に持ち上げ称賛する声に
耐えられず、私はスマホを閉じた。
もう、何も考えたくなかった。
乱雑に置かれた充電器にスマホを挿し、
スマホは閉じるだけでは何か足りないような、
そんな気がして電源を落とした。
「もう、なに、楽しめばいいのかな、、っ」
私なんかよりも声優さんの方が辛いのは
明白なのに。涙は止まらなかった。
あの後。一ヶ月ほど経つまで私はそのアプリも
見ることがなかった。
怖かった、ただそれだけの理由で。
何度も見ていたから、開けば必ず
そのゲーム関連の呟きは流れてきてしまう。
だからだ。
しかし、一ヶ月も経ったらどうなっているのか
気になってしまう。以前以上に恐る恐る
そのアプリのアイコンをタップ。
以前見てそのままだったからか残っていた
検索履歴にあるそのゲームのアカウント。
震える指でそれに触れた。
そのまま、スクロール。
すると、衝撃的な文章が目に入った。
[このゲームは___年_月_日を持ちまして
サービスを終了させていただきます。
関係者の皆様、このゲームを
利用してくださったファンの皆様、
このような決断になってしまい
申し訳ございません]
驚いた。だが、思ってはいけないのに、
自業自得だろうという考えが浮かんでしまう。
しかし、何があったのだろうか。
調べてみると、新規の声優さんが入ったものの、
今までのアンチの量は変わらず、
その新規の声優さんに心無い言葉を放ち、
さらには以前の声優さんが好きだったユーザーも
新規の方に強く当たっていたようだ。
その声優さんは追い詰められて降板したい、と
考えていたようだが、どうやらあの騒動で
公式のアンチも増え、公式がなす術なく、
サービス終了を決断するしかなかったらしい。
もう、呆れるしかなかった。
「何がしたかったんだろ・・・」
ゲームは好きだがそのキャラだけが
嫌いだったのか、ゲームも嫌いでアンチが
他より少し多かった人を狙っただけなのか。
分からないが、何故そんな無駄なことをする
必要があったのだろうか。
(嫌いなものに時間かける必要なんてないのに)
嫌いならば態々時間をかける必要などない。
人には好き嫌いがあるもの。
だが、その対応は考えるべきで、
それが当たり前のことなのだ。
「少しはこれで懲りるかな、こういう人」
ネット上での暴言等が問題視されている現状の
改善などには、規模を考えれば当たり前に
至るはずないこの騒動。
だが期待してしまうのは。
「好きな人とか物を貶されるの、
こんなに嫌になるんだね」
『軽率』な言動が好きな人や物を
陥れることへの、怒りや悲しみを知ったから。
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アプリ名出していいかわかんなかったので
多分伏せてます!最初は普通に出してて
修正したので見つけたら教えて欲しいです・・・!
後呟きの内容は見たことがあったやつとあとは
適当です。ちょっとそういうの見て嫌に
なっちゃったときにこれ書きまして・・・
私が別にそんなことを思っているわけでも
そんな行為をしているわけでもないです。
気分を害された方がいたら申し訳ないのですが、
本当に私はそんなこと思ったりとか
してないですし、なんなら名前伏せている
アプリ、アカウント作るだけ作って
フォローするだけで呟いたりは
全くしてないので!!
それと、ノベル初めて使ったんですけど
これ連載しかできないんですかね?
私だけ単発で出せていないのか?
と思ったのですが、
ノベルは連載になっている方しか
見たことないので多分大丈夫ですよね。
話しすぎてしまいました。すみません!
それとチャット型の新規で出します!
っていった方じゃなくてすみません!
では、閲覧!ありがとうございました!
コメント
2件
本当に、何でアンチなんてする必要あるんでしょうかね…。 時々そういう人見るけど、「君らはもっと他の事に時間使えないんか(←お前が言うな案件)」って思うし