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side wki.
窓から差し込む光が、
テーブルの白いカップをやさしく照らす。
俺はカップから立ち上る湯気を眺め、
ふっと笑った。
「……いい匂い」
向かいで元貴が鼻を近づける。
「アールグレイ。ベルガモットの香り」
「ふーん……紅茶ってあんま飲まないけど、これなら好きかも」
カップを持つ元貴の指先は、
光を受けて白く柔らかい。
俺は何気なくその手を見つめた。
「元貴って、コーヒーより紅茶の方が似合うな」
「……似合うって何」
「何ていうか…こう、落ち着いた香り?」
元貴は照れ隠しのように紅茶を一口飲む。
カップ越しに漂う香りは、
柑橘の爽やかさと
花のような甘さが混ざっていた。
「……なんか、リラックスする…」
「俺も。……元貴が目の前にいると、もっと落ち着く」
俺がさらりと言うと、
元貴は視線を逸らした。
「……そういうこと、昼間から言わないでよ」
「昼だからいいんでしょ。夜だったら……止まらなくなる」
言葉と一緒に、俺はカップをそっと
元貴の手から取った。
テーブル越しに少し身を乗り出し、
距離を詰める。
「……紅茶の香り、移していい?」
「……好きにすれば」
唇が触れた瞬間、
ベルガモットの爽やかな香りが
ふたりの間で広がった。
午後の光と甘い柑橘の余韻が、
ゆっくりと胸の奥に沈んでいく。
「ベルガモット」花言葉
Gentle heart(柔らかな心)
2025_8/8