星が降る街に彗星が落ちる
ある星のある地域には星が降り注ぐ街があるというその街に彗星が降る夜、奇跡がおこる。
「今日も降ってるや。」「なに?星の降る街なんだから当たり前じゃない?」「でも昼でもはっきりわかるくらいたくさん降るなんておかしいでしょ?」はぁー。と白い息を吐きかける。「?。そうなの?私はこれが普通だと思うけど?」そういうと彼女も手に息を吐きかける。今年一番の寒さもうなづける。「でも、こんな素敵な星空がいつでも見られるなんていいことよ?」彼女がポケットからホッカイロを取り出し揉みくちゃにする。「そうかなぁ。」寒さに負けそうになりながらも息を吐きかけることをやめない。彼女の名は星彗声援(ほしすいせいえん)彗星の如く彼女が現れたのは夏のことだった。
キーンコンカーンコン。「では入りたまえ。喜べ転校生だぞ。」先生(岡田奈々)は嬉々としてそう言った。ガラガラ。スタスタ。キュッキュッ。ぱんぱん。転校生は無言で黒板に文字を連ねた。『星彗声援』決して高いとは言えない背丈に似合わない学生服を着こなしてペコリとお辞儀した。「あはは。じゃあ星ちゃんの席は、彼の隣に机持ってきて座っちゃって。」奈々先生が事務的に伝える。それが星彗声援の来た日だった。「星ちゃんでいい?」隣になった僕は星彗に話しかけた。「彗星……。」?。彗星?あっ、逆から読むと彗星になるのか。「ねぇ。この街で彗星がよく見える場所ってある?」「さぁ?星ならいつも降ってるけど。」「やっぱり知る人ぞ知る……?」ブツブツ。
キーンコンカーンコン。彗星がしきりに空を見ているのが気になって放課後聞いてみた。「星。珍しい?」「ええ。こんなに降るのは初めてみるわね。ねぇ…突然だけど。」?「彗星を見に行かない?」彗星?ってあの?「こっち。」彗星は自転車に乗ると指を差した。あっちは確か、灯台?自転車で20分。なかなかいい運動だ。「はぁ、はぁ、彗星。どこ行くのさ?」「彗星?あっ。私か。灯台なら見えるかなって。」「や、やっぱりか。はぁ。着いたぞ。」彗星が駐輪場に自転車を止め、スタスタと灯台を登っていく。「ちっ。やっぱりか。」彗星が毒突く。「やっぱり?ふー。座ろうか?」彗星はポケットからペロキャンを取り出しペロリと舐めて、口に含んだ。「?。」彗星は何気無くコチラを覗き込む。彗星の瞳は紫色で彗星を見ているようだった。「やっぱりまだかぁ。」彗星が目を逸らすと瞳がキラリと光って見えた。「あっ。これ?チェインジアイズっていって角度によって色が変わるんだよ。」彗星の瞳は蒼く煌めく。「彗星が見たいんだっけ?まだもなにもこの街で彗星が見られるなんて聞いたことない。」「あらそう?こんな話を聞いたことはない?」
星の降る街に彗星が落ちる。
「そんな話、むぐっ!?」話を遮るように彗星がペロキャンを突き出す。「まぁまぁ。とりあえず食べなよ。」「むぅ。」彼女が口に突っ込んできたペロキャンを受け取る。「彗星ってさ。いつ流れるかなんて気にしないじゃない?でも知らないうちに流れてる。これってもったいなくない?」彼女はそういって立ち上がった。「彗星はさ。すごいんだよ。すぐそばで掴めそうなくらい大きいの。それこそ月なんかよりもね。」「みたことあるんだ?彗星。」「むかしね。綺麗だったなー。」あたりは暗くなり星が一層眩く輝く。「流れてるねー。星。むかしね、流れ星は死んだ人だと思ってたんだよね。でもこんなに流れてたら死んだ人と数が合わないよね。」「でも、世界は広いよ。僕たちの想像よりずっとずっと広いから。きっとこの星よりも沢山人がいるんだよ。」そうだね。と彗星がいった。その日はそれで帰って行った。それからだった。彗星と遊んで帰るようになったのは。
キーンコンカーンコン。「彗星!一緒に食わないか?」「いいよ。」もぐもぐ。かちゃかちゃ。「彗星?お弁当じゃなくて菓子パンか?」「まあーね。両親いないし。」そうかー。あっ、そうだ。「僕弁当は自分で作ってるんだ。彗星の分も作ろうか?」「え?悪いわよ。なら自分で作るわ。」作れるのか。「なら最初から作ればいいのに。」ボソッ「?」「いや、なんでもない。」時期は秋。彗星の瞳が紫に光る頃。「彗星はさ。なんでこの街にきたの?」「前にも言わなかったっけ?『彗星を見るため』だよ」「彗星か。落ちるかな?」「降るじゃなくて落ちるっていうんだね。」そういえばそうだ。「なんだろう。なんか忘れてるような。」「そんなことはどうでもいいでしょ?パク」彗星の口の中にタコさんウインナーが吸い込まれる。そんなことはどうでもいいんだけどさ
キーンコンカーンコン。
「彗星。一緒に帰ろう。」自分にしては思い切った事を言った。「いいよ。聞きたいことあるし。」彗星の聞きたいことはこうだ。「この先の行事で楽しいのってなに?」楽しいの、楽しいの。「文化祭とかじゃないかな?」秋といえば運動会か文化祭。どちらかだろう。運動が苦手な僕は文化祭と答えた。彗星の瞳が紅く光る。「へー。文化祭ってなにやるの?」「確か男装喫茶とかだったと思う。」「なるほどね。材料費だけで儲けられる、と。」なるほどなるほどー。とメモを取る彗星。本当にメモを取っているのかフリなのか分からない。ふと彗星が上を向く。「それまでもってくれるかな…?」彗星の不安をよそにポツリと雨粒が降った。
ザァーーーーーー。
帰る頃には土砂降りになっていた。こういうときは星が降るのは見えない。雲で隠れてるから当然か。ーーーー次の日ーーーーー
ザァーーーーーーーーーーー。
一向にやむ気配はない。「こんな話を知ってる?」彗星が話初めた。「ある男が女の子の大切にしてた人形を壊しちゃったんだって。でも男は謝らずにやり過ごした。ある日男の所に電話がかかってきたらしい。私の人形、と聞くと男はすぐに電話を切ったんだって。だってその女の子亡くなっていたんだから……。」ゴクリ。「彗星?どうしたんだ?」「いやだってこんなに暗いし節電のためか知らないけど何個か電球なくなってるしさ?」「そ、そんなことより今日からだって。文化祭の準備。」「じゃあこんな話は知ってるかしら?ある男の子が運動会を楽しみにしてたんだって。でも運動会の当日は雨。男の子は下を向いて学校に向かってたところに車が。それ以来男の子がその日にトラックを走って追いかけて来るらしいよ。」「す、彗星。よく知ってるんだね。」「しかも、今日らしいよ。男の子が死んだの」
ザァーーーーーーーーー。
彗星の怖い話は放課後まで続いた。
ザァーーーーーーーーーーーーーーー。
また今日も雨だ。彗星の怖い話を楽しむってのもアリか。
が、彗星はその日は来なかった。
次の日。キラリと水溜りが光って見えた。「おはよー。」「彗星!昨日はどうしたの?」「いやー。話し過ぎると喉痛くなって喋れなくなるんだよねー♪」そう言う彗星の声は弾んでいた。「彗星。ほどほどに、ね?」彗星は軽くうなづいた。
ワイワイガヤガヤ。
学校は文化祭一色に染まっていた。隣のクラスはオバケやしきだろうか?「彗星もオバケやしきがよかった?」「怖い話は好きだけどゾンビとかそっち系はダメ。なんだよ。」そうなのか。それならコッチでよかった。僕は看板にペンキを塗りながらそう思った。「一年が屋台に三年がプラネタリウムか。」「他にも部活動によって出したりもするみたい。楽しみだよー。」「そっか。ねぇ。文化祭一緒に回らない?」「え?もちろん!もちのろんでもちろん!」彗星は笑ってそう答えた。それからは毎日ベニヤの板にペンキを塗って過ごした。彗星の話は尽きることはなく、弾丸の如くはじきだしていた。そのひとつを抜粋しようと思う。「願いが叶うなら何を願う?富みや名声もいいと思うけど、私はこう思うな。今までの出会いを無意味にしたくないってね。人と出会う意味が欲しいよ。それと同じくらい私と出会って意味を見つけて欲しいってね。なんてね。」彗星は照れくさそうにそう微笑んだ。しばらくして文化祭の準備が終わり、彗星の瞳は翠色に染まっていた。
キーンコンカーンコン。
「一緒に回ろうね!」そう彗星は言った。一階の出店ではチョコバナナと焼きそばを買った。彗星はカキ氷ってないの!?と言っていたが、ない!と弾弓してやった。彗星はふてくされてしまったが、構わず連れ回すオバケヤシキに男装喫茶その隣に対を成す女装喫茶色々巡った。「そういえば。この街では見慣れた光景だけどプラネタリウムもあるってさ。」「うぅーん。それはいいや。本物見たほうが楽しい。」彗星は少し躊躇ってそう言った。その後は後夜祭が行われた。軽音楽部がバンドをやっていた。♪〜〜〜♫ 〜 ♫〜〜 ♪ 〜 〜 ♪ 〜♫〜『ずっと前から好きでした!』『はい。』みんなの見ている前で男が告白して女がそれに応える。そんな空気に耐えられずに校舎から少し離れて見ていた。彗星はキャンプファイアーの前で空を見上げている。同じように空を見る。キラリキラリと星が流れる。彗星とまた来年も…。そう願うと夜はふけていった。
キーンコンカーンコン。
「昨日は楽しかったね!今日暇?」彗星が訪ねてきた。「ひまかなー。」今日の朝ニュースでいってた。『大型の彗星が近づいています。3日後の夜高い場所で観測出来るでしょう。』「じゃあさ。今日も付き合ってもらっていい?」もちろんYESだ。「じゃあ放課後ね!」「あーうん。」空を不安気に見上げつついった。
キーンコンカーンコン。
「じゃ。行こうか?」彗星の後ろから自転車で追っていく。チリンチリーンチリリーン。灯台へ着いたのは夕方だった。駐輪場に止めて階段をあがる。頂上につくころにはすっかり暗くなっていた。「ほら。みて!」星が流れる間を邪魔するように彗星が降ってきた。「ねぇ。前に言ったの覚えてる?星の降る街に彗星が降るって。あれさ。見た人はなんでも願いが叶うってやつらしいよ。だってほら。私の願いは叶ってる。」「?」「実は彗星をここで見るのって2回目なんだ。一回目は一人で。その時願ったのは『時間を戻して』だった。だって君が交通事故で亡くなったっていうから。だから今日までなんとか仲良くなったんだから。あー。苦労した。」「なんでそこまで…?」「だって好きだったんだもん。初恋ってやつかな?」「彗星、僕も好きだよ。」「じゃあ好きどおしだね。」パァーンパァーーンパパーン。「花火。」僕らを祝福するように花火が上がった。
星降る街に彗星が落ちる。
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