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最後に会ってから3ヶ月、来都くんとは全く会えなくなった。テレビで見ない日はないほど、彼は人気を上げている。
そんな中、私の私生活にも変化があった。バレエを交えたヨガは、動画の視聴回数がとんとん拍子で伸び、なんと突然パリで人気となったのだ。
美しく完璧なバレエ団が人気のパリでは、誰でもできるバレエというのが絶大なる評判につながった。その出来事が理由で、来月から半年間だけパリで教室を開くことになった。
何もかも急な話でついていけない。でもこんないいチャンスは2度とない。私は行くことを決意した。初めての海外、初めての出張…前向きな悩みってこんなにもタメになるものかと、全てのことに感謝した。
あの時、人生を変えてよかった。変えてくれて、よかった。来都くんが推しで本当に良かった。心の底から彼のことを思い浮かべ、彼に感謝した。あの頃、なにも得られない日々、ひたすら働き続ける私、推しが嫌いな自分になっていく毎日に生きがいすら感じなくなっていた。
それでも、乗り越えるきっかけや勇気をくれた推しは私を応援してくれたし、私のためにエールをくれた。私は彼のことを好きでいて本当によかった。ありがとう。こんな私を変えてくれて…
パリの生活にも慣れてきた頃、レッスンまでの準備がようやく終わり自分の時間ができた。こんな気持ちで散歩ができるのはあの時ぶりだろうか。いつもの公園は、もう遠い遠い場所にある。
「来都くん、元気かな。」
賑やかな街、楽しそうな人々…都会で暮らすあの時とはなにもかも真逆な生活だった。
「来都くん、私はあなたのおかげで私らしい私を見つけることができた。ありがとう。」
現地の言葉が響く中、私は母国語でつぶやいた。ベンチに座り、目を瞑って、あの頃を思い出しながら思いっきり深呼吸をした。
「僕もだよ。ありがとう」
…?聞き慣れた声、気持ちの良い匂い。目の前には、なぜか来都くんが立っていた。
「僕はあれからモデルのお仕事に専念するために、パリに留学に来てるんだ。もものことは、なんとなくわかってたから偶然会えればいいなって思ってた。そしたらさ、久しぶりな声が聞こえてきて。もも、本当におめでとう。」
夢の中のような心地よさで、気持ちの良い風が吹く中、私たちはこの国のあいさつとしてハグをした。別の道を進む私たちだけど、こんなにも偶然会えることはきっと運命なのかもね。そうだったらいいな。
それでも推しとファンの関係は、きっとずっと続いていく。推しのために、ファンのために、毎日楽しく生きていこうね。
「じゃあ、またね!」
「またね!」
2人はそれぞれの未来に向かって、マイペースに歩き始めた。