僕には彼女がいた 。
赤メッシュが入った綺麗な黒髪
綺麗な赤い瞳
小柄な体
そんな要素を持った
ゆあんくん という人だ 。
学生時代からお互いに惹かれあっていて
大人になった今でも同棲して共に一日一日を 、生活していた 。
でも今はいない 。
昨日死んだ 。
昨日交通事故にあった 。
いつも通り
「夜ご飯の材料買ってくるね」
って言って家を出て 、
いつも通り
「ただいま〜!」
「外めっちゃ寒かった 、笑」
って言って帰ってきて 、
一緒に夜ご飯を作って 、食べるはずだった
病院から電話がかかってきて
ゆあんくんが交通事故にあったことを聞いて
急いで病院に向かったけど
その時にはもう遅かった 。
赤い綺麗な瞳はもう見えなくて 、
代わりに血だらけになったゆあんくんが
静かに眠っていた 。
悲しい 。
もちろん悲しい 。
でも 、悲しいからと言って
「悲しい」
「会いたい」
だなんて泣きわめく必要は無い 。
必要はない 、というより
そんなことをしている間にも仕事をして
お金を稼いで 、
時間を有効活用できる 。
きっとゆあんくんもその事を望んでいる 。
自分のせいで大切な人が
泣きくずれて 、
何も出来なくなるぐらい心を悔やむことになっているだなんて
ゆあんくんは絶対に望まない 。
「あ〜 、昨日お風呂入らずに寝ちゃったんでしたね……」
「流石に仕事休みにさせてもらったけど 、昨日外出しましたしね〜……」
一人ぼっちの部屋で呟く 。
同棲している時は狭い部屋だと思っていたが
1人になると意外と広くて 。
自分の声はとても響いた 。
ジャー……..
「ちょ 、お湯出してよ”っ!?水は冷たすぎるって 、!!」
「はは 、ごめんなさい笑笑」
「もう 、今真冬だよ”っ!?」
「お湯出しますから 、そんなに怒らないでくださいよ笑」
「…….“っ 、ビシャッ」
「うわ”っ 、冷た…….!?」
「へへ 、仕返し…….」
「”…….っ!」
「さっさとお湯出しましょ……」
「…….あ 、お湯たいてる…….」
シャワーだけですませてしまうつもりだったが 、癖でたいていたようだ 。
水面に少し困った自分の顔が映る 。
「う〜ん 、時間もありますし……入りますか 。」
ポチャンッ……
お風呂場に水温が響く 。
「お湯あたたかいね〜…….」
「そうですね〜……」
「湯船から出たら 、めっちゃ寒いんだろうな〜…….」
「じゃあ 、お風呂から出たらすぐにコタツに入ってみかん食べましょう!」
「なにそれ 、めちゃくちゃ冬してるじゃん」
「冬に冬したらダメなんですか?笑」
「…….いいね 、俺みかん10個食べる!」
「じゃあ僕は30個食べます!」
「えぇ”っ 、じゃあ50”っ!!」
「…….?笑」
「…….ふふ 、笑」
「ふはは 、笑」
ジャバ”“っ!!
「……寒 、」
今は12月の真冬 。
ただでさえ湯船から上がる時は寒いのに 。
凍るように空気が冷たく
体をブルッと震わす 。
「髪乾かしたらコタツでひと温まりしましょ…… 、」
「ん〜”っ!!やっぱりコタツあたたかい…….」
「ですね 、もう一生出れないです」
「俺も〜っ!!」
「あ 、みかん食べます?3個ありますけど……」
「”っ!!✨️食べる!」
「僕も食べます」
「残り1個はどうします?食べますか?」
「う〜ん 、残り1個は大切にしておく!」
「分かりました」
「あ 、みかん1個あるじゃないですか」
「ラッキー…….」
そういい 、こたつの電源にスイッチを入れ 、こたつの中に入る 。
「…….このみかん 、ゆあんくんが大切に取ってたなあ…….」
そういや 、このみかんは10月ほどからゆあんくんがずっと大切にとっていた 。
「もう腐ってるか……..笑」
食べることを諦め 、
ただじっと見つめる 。
「…….?」
ふと 、みかんの端に黒ずんでる…….?ことに気づく 。
やばい 。
虫とかも湧いているんじゃないか……?
「”……っ!」
そう思い 、いそいでみかんを掴む 。
「…….え?」
黒ずんでいた面を 、自分の方に向ける 。
そこには 、幼稚園児が書いたようなニワトリの絵が
みかんに水性マジックで書かれていた 。
「……?え 、何してるんですか?」
「ちょ 、見ないで”っ!!」
「え 、みかんになんかしてましたよね”っ!?!?」
「なんか書いてた……?」
「後でみせるから!」
「…….“?」
「…….」
『それ 、可愛いでしょ?』
『いや…….かわいい 、けど』
『みかんに落書きは良くないですよ』
『え 、そこ”っ!?』
『水性マジックが中身にまで染みて食べれなくなったらどうするんですか”!?』
『そ 、そうだけど……』
『残り1個ある…..ってだけで嬉しい上に 、このみかん取ったらもっと嬉しくなるようにしたくて……』
『……なんですかそれ 、笑』
『にわとり…….嬉しくない 、?』
『嬉しいですけど…….』
「このにわとり 、形がいびつですね…..笑」
「……ふふ 、笑」
ポトッ
「……は 、はは……笑」
ポトッ…….ポトッ
声が震える 。
水が頬をつたる 。
「はは 、……あはは 、っ」
それはやがて顔からこぼれ 、
服にも
手にも
みかんにもこぼれた 。
水性マジックでかかれたにわとりにも
たくさんこぼれた 。
にわとりの顔がみるみる崩れ 、
数十分後には 、綺麗に無くなっていた 。
コメント
3件
泣ける...😢
うわあああああ悲しすぎるよーー😭😭😭切なすぎてこっちまで泣けてくる😭
めっちゃ好きです、、、!