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翌朝、飲みすぎた二日酔いを気合いで押さえ付けながら兄貴と一緒に都希の実家へ来た。
「ここが実家…。」
「押すぞ。」
戸建てのインターホンを押して待っていると「はーい。どちら様ですか?」と、都希のお母さんらしき人の声がした。
「突然すみません。佐伯と申します。お伺いしたい事がありまして…。」
「佐伯…?あ!尚人くん?!ちょっと待っててね。」
やっぱり都希のお母さんか。
近くでパタパタと歩く音がしたかと思うとガチャっと玄関のドアが開いた。リビングに通されてソファで待っているとお茶を出してくれた。
「改めてすみません。隣は弟の千景です。」
「はじめまして。日渡千景です。」
「あら?苗字が違うのね。余計なところに気付いてごめんなさいね。」
「いえ、両親が離婚して、それぞれ母親と父親に別で付いて行ったので…。」
「そうだったの。大変だったのね。今でも仲良くて羨ましいわ。私も離婚したんだけど、今年再婚したの。都希も喜んでくれて…。都希は一人っ子だったからそういうところでは寂しい想いをさせてしまっていたかもね。余計な話しをしてごめんなさいね。尚人くん、前は本当に助かったわ。ありがとう。大学の頃からあまり都希との付き合いが無くなっちゃったから私も寂しかったのよ。また会えて嬉しかったわ!」
「いえいえ、まさかお会いするとは。俺も驚きました。」
和やかな空気感が流れている。
「で、今日は尚人くんどうしたの?」
「えーっと…。」
「俺から話しをさせて下さい。」
「弟くんからなのね。」
「あの…都希くんって今どこにいるか分かりますか?」
「都希?都希は…ここで働いてるわよ。」
そう言ってスマホ画面でとある養護施設の名前を見せてくれた。こんなに簡単な事に二年もかかった。でも必要な二年だったのかもしれない。
「隣の県…。ここに都希がいる…。」
「どうしたの?何かあった?」
「俺…三年前に都希くんと偶然再会して、一年くらいずっと一緒に居たんです。でも急に引っ越してしまって…。」
「確か都希が引っ越したのは二年前くらい前ね。」
「はい…。」
「都希、すごく落ち込んでるみたいだった。千景くん、喧嘩でもしたの?」
「喧嘩…。喧嘩すらしてません…。出来たら良かったのかもしれないです。俺はただ楽しかっただけだったので…。」
「千景くん、都希の事好きなの?」
「……はい。」
「あなた達、二人して都希の事大好きなのね。」
都希のお母さんがあまりにも簡単に口にするので兄貴も気まずそうな顔になっていた。
「俺は今結婚して子どももいるので、確かに昔は好きでしたけど、今は家族が一番大切です。」
「素敵な奥さんと一緒だったものね!」
「あ、はい。」
都希のお母さんは明るい。セクシャリティに対する理解もあるのだろうか…。
「千景くんは都希に会ってどうしたいの?確かにウチの都希は何歳になっても可愛いけど、性格は良いとは言い切れない天邪鬼よ。それでも良いの?」
「…良いとか悪いとか関係無いです。…都希が良いんです。だからもう一回会いたい。俺が都希と向き合って、もし都希に受け入れてもらえたら、お母さんも俺が都希と一緒に居る事を認めてくれますか?」
「私はね、都希が中学生の頃あの子を置いて出て行ってしまった。自分勝手に。お金だけ置いてたまにしか戻らなかった。最低な母親なのは分かってたけど、都希を後回しにしてしまった…。これは一生私の負目。でも、あの子は私を責めなかった。いつも待っていてくれた。私にはあの子を否定する資格は無いの。でも都希が幸せな姿を見守る資格はあると思ってるの。それだけよ。この再婚も都希が後押ししてくれたから決めた。あの子は寂しがり屋で優しいの。」
「はい。知ってます。」
「何で引っ越したのかは当然教えてくれなかったけど、『逃げた』ってだけ言っていたわ。今分かったけど、たぶん千景くんから逃げたのね。怖くなっちゃったのかも。許してあげてね。天邪鬼だから拒否ると思うけど、都希の事よろしくね。」
都希のお母さんは泣いていた。俺も情け無く都希のお母さんの前でも泣いていた。
「千景、もう良いか?都希のとこ行くんだろ?」
「行く。」
兄貴に助け舟を出してもらって、ぐしゃぐしゃに泣いた顔を都希のお母さんからもらったティッシュで拭きながら返事をした。
玄関まで都希のお母さんが見送ってくれた。
「尚人くん、千景くん、来てくれてありがとう。私からあの子には何も言わない。だから都希が居たらとっ捕まえてね。あの子、逃げ足早いから。気付かれたらまた逃げるわよ。」
「何回逃げられても、あいつ体力無いから追い付けると思います。」
「ふふ、確かにね。ゲームばっかりしてるから。」
笑った顔がやっぱり都希に似ている。
「では、お邪魔しました。」
兄貴が挨拶をして、俺も深々と頭を下げた。
「千景くん!都希と一緒に帰って来てね。待ってるから。」
「はいっ!」
もう一度頭を下げて都希のお母さんと別れた。
・・・・
「千景、いつ都希のところに行くんだ?」
「とりあえず仕事に行ったら取れるだけ有給を取る。そしたらすぐに行く。何日かかっても会う。」
「そうか覚悟決まってんだな。」
「決まった。追いかけて俺が絶対に連れ戻す。」