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もしも魔法が使えるなら僕は、
先輩を消してあげます。
先輩は植物みたいな人だった。
部活の時も何を考えているのか分からない。全てが謎に包まれているような感じがした。でも、先輩は僕に夢を沢山語ってくれた。特に印象に残っているのは、”植物になりたい”ということだ。
先輩はシロツメクサが好きだった。 どこでも見かけるけれど、綺麗な花。どの世代の頃も愛される。仲間と一緒に居れる。 「これ以上幸せな花はないんじゃないかな」 先輩はいつもそう言っていた。
先輩はいつも僕を支えてくれた。 仲間に裏切られた時も、自分の存在意義が分からなくなってしまった時も。 先輩は勘が鋭かったから、きっと僕の気持ちにも気づいていたんだろう。でも、断りもせず、態度も変えず、いつも通りに接してくれた。 僕はそんな先輩に救われた。
僕はそんな先輩を尊敬していた。
でも、先輩は、もう会話すらしてくれない。 いや、出来ない。
先輩は、本当に植物状態になってしまった。 回復する見込みはないそうだ。
1ヶ月前。 先輩はトラックに轢かれた。僕を庇って。 原因は飲酒運転だ。 僕がもっと早く気づけていれば、運転手が酒を飲んでいなければ、結果は違ったのだろう。 僕はとても悲しいです、先輩。
先輩は今、どんなことを考えているのですか? いや、考えることが出来ているのかも知りませんが、僕は先輩が大好きです。
僕は先輩に貰ったシロツメクサの冠を大切にしている。お守りだ。 知っていますか、先輩。シロツメクサの花言葉は約束ならしいですよ。
だから僕は、先輩を植物にしてみせます。
もし魔法が使えるなら僕は、
先輩を消して、植物に変えてあげます。
それが僕から先輩への約束です。