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#創作百合
⭐︎ひろ⭐︎
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#創作百合
⭐︎ひろ⭐︎
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好きなところ、そっちも止まらない
休憩中のスタジオ。
少し離れた壁際では、相変わらずナオコが喋っている。
モモカは最初こそ楽しそうに聞いていたはずなのに、今では膝を抱え、完全に質問したことを後悔している顔になっていた。
それでもナオコは止まらない。
声。
笑い方。
運転している時。
寝起き。
仕事中。
家での姿。
好きなところが一つ終わるたびに、そこから関連項目が枝分かれしていく。
その様子を遠くから眺めていたチカが、隣にいるコハルへ顔を向けた。
チカ
「モモカとナオコ、何しよったと?」
コハルは一瞬だけ視線を逸らした。
もう事情は知っている。
知っているからこそ、ちょっと恥ずかしい。
コハル
「……モモちゃんが。
ナオコに私の好きなところ聞いてるみたい。」
チカ
「…………。」
もう一度。
遠くを見る。
ナオコ。
まだ喋っている。
モモカ。
遠い目をしている。
チカ
「……で。
まだナオコ喋ってんの?」
コハル
「……止まらない……らしい。」
チカ
「甘……。」
チカは思わず顔をしかめる。
チカ
「モモカ、ご愁傷様……。
自業自得やけど。笑」
コハル
「ふふふ……笑」
笑いながら。
コハルも少し嬉しそうだった。
自分の好きなところを延々と話されている。
恥ずかしい。
めちゃくちゃ恥ずかしい。
でも。
嫌なわけがない。
チカはそんなコハルの横顔を見て。
ふと。
何かを思いついた。
チカ
「……ならさ。」
コハル
「ん?」
チカの口角が上がる。
嫌な顔だ。
完全に。
面白いものを見つけた顔。
チカ
「コハルは?」
コハル
「何が?」
チカ
「ナオコの好きなところ。
いっぱい言いーよ。
ナオコみたいに。笑」
コハル
「えーーーー……。」
急に振られた。
コハルは腕を組み、鏡越しに少し離れたナオコを見る。
ナオコは、まだモモカへ喋っている。
コハル
「…………優しい。」
チカ
「…………。」
コハル
「…………。」
チカ
「だけやなかろ!!!!」
コハル
「分かってるよ!!!笑」
チカ
「ナオコは向こうで論文発表しよるとに!
コハル側、一行で終わったやん!!」
コハル
「考えてたの!笑
急に聞くから!」
チカ
「ほら。
ちゃんと言って。」
コハル
「んーー……。」
少し考える。
そして。
一つ。
浮かんだ。
コハル
「優しい。
まず、本当に優しい。
私が疲れてるの、たぶん私より先に気づくし、無理してる時もすぐ気づくし、仕事終わったら迎え行こうかってすぐ言うし、私が大丈夫って言っても本当に大丈夫なのか顔見て確認するし、体調悪かったらずっと心配するし、私だけじゃなくてメンバーのこともよく見てるし、誰か落ち込んでても無理に聞かないで側にいるし……。」
チカ
「お。」
コハル
「あと。
真面目。」
チカ
「うん。」
コハル
「仕事にめちゃくちゃ真面目。
自分が納得するまで練習するし、細かいところまでずっと考えてるし、ダンスも歌ももっと良くしたいってずっと思ってるし、自分ができたから終わりじゃなくて、HANA全体が良くなるにはどうしたらいいか考えてる。
でも、真面目すぎて一人で考え込む時あるから、そこはちょっと心配。」
チカ
「……ちゃんと見とるね。」
コハル
「見てるよ。
ずっと一緒にいるもん。」
言ってから。
コハルが少し照れる。
チカは。
見逃さない。
チカ
「甘。」
コハル
「うるさい!笑」
けれど。
一度始めると。
今度は次々出てきた。
コハル
「あと、踊ってるナオコ好き。
普段あんなにふわっとしてるのに、音入った瞬間に目変わるじゃん。
HIPHOP踊ってる時とか特にカッコいいし、身体の使い方も好きだし、ステージで目合った時にいつものナオコと全然違う顔してるのも好き。
歌ってる時も好き。
高いところとか、柔らかく歌うところとか。
家で適当に歌ってる時も好きだけど。」
チカ
「おお。」
コハル
「あと紫の髪似合う。
ロングも好き。
横顔も好き。
目も好き。
笑った時の顔も好き。
恥ずかしくなるとちょっと下向くのも好き。
嬉しい時、隠してるつもりなのに全然隠せてないのも好き。」
チカ
「…………。」
コハル
「寝起きで髪ぐちゃぐちゃなのも可愛い。
普段ゆっくりしてるのに仕事になると急に動くのも面白い。
たまに寝坊するくせに、私が寝坊したら『大丈夫やで』って言いながら全部準備手伝ってくれる。
車運転してる時も好き。
普段よりちょっと静かになって真剣に前見てるところ。
でも赤信号になったらすぐ私の方見るところ。」
チカ
「…………コハル?」
コハル
「あとね――」
チカ
「待って。」
コハル
「何?」
チカは。
ゆっくり、笑い始めた。
チカ
「止まらん!!!」
コハル
「え?」
チカ
「ナオコに似てきた!!!笑」
コハル
「違うよ!
聞かれたから答えてるだけ!」
チカ
「向こうも絶対同じこと言っとるって!!笑」
コハル
「まだあるけど?」
チカ
「あるんかい!!!」
コハル
「あるよ。
いっぱいあるって言ったじゃん。」
チカ
「最初『優しい』だけやったやん!」
コハル
「最初は恥ずかしかったの!」
もう。
止まらない。
コハル
「家では甘えん坊なところも好き。
外ではちゃんとしてるのに、家帰った瞬間すぐ近くに来るし、ハグしてって素直に言うようになったし、ほっぺって言いながら顔差し出してくるのも可愛い。
あと、私が寂しいって言ったらちゃんと聞いてくれる。
自分が勝ちたいとか、自分がこうしたいとかより、最後は私がどう感じてるかを考えてくれる。
私が嫌だったことをちゃんと覚えて、次から気をつけようとしてくれるところも好き。」
チカの笑いが。
少しだけ穏やかになる。
コハル
「喧嘩しても逃げない。
ナオコ、黙っちゃうことはあるけど。
最後はちゃんと話してくれる。
自分が悪かったら謝るし。
私が悪かった時も、責め続けたりしない。
ちゃんと二人で戻ろうとしてくれる。」
少しだけ間を置いて。
コハル
「……だから安心する。」
チカ
「…………。」
コハル
「一緒に住んでるから安心するんじゃなくて。
ナオコだから安心する。」
チカ
「…………甘っ。」
コハル
「もう!笑」
チカ
「いや、今のは甘いやろ!!」
コハル
「聞いたのチカじゃん!」
チカ
「聞いたけど!
途中からこっちが恥ずかしくなってきた!」
コハル
「じゃあやめる?」
チカ
「…………。」
数秒。
チカ
「いや。
最後まで聞く。」
コハル
「聞くんじゃん!笑」
そして。
再開。
コハル
「意外と負けず嫌いなのも好き。
音響のことになると急に子供みたいになるのも面白い。
車買った時、嬉しそうだったのも可愛かった。
助手席は私の場所って思ってるのも……まぁ、好き。」
チカ
「そこ一瞬悩んだな。笑」
コハル
「だって重い時あるもん!笑
でも。
嬉しくないわけじゃない。」
チカ
「はいはい。」
コハル
「あと馬鹿正直。」
チカ
「それは分かる。」
コハル
「思ったこと、最近ほんと何でも言う。
たまに『それは心の中に置いといてよ!』って思うことまで言うけど。笑
でも。
前は言えなかったことまで、ちゃんと言ってくれるようになったのは嬉しい。」
チカ
「コハルが育てたけんね。」
コハル
「その言い方やめて!笑」
チカ
「モモカも言っとった。」
コハル
「二人してずっと言ってるじゃん!」
チカ
「事実やろ?」
コハル
「…………。」
否定しようとして。
できない。
チカ
「ほら。笑」
コハル
「……でも。
今のナオコ好きだからいい。」
チカ
「うわぁぁぁぁ。」
コハル
「何!?」
チカ
「結局全部そこに着地するやん!!笑」
コハル
「だってそうだもん!」
そして。
コハルは少しだけ考える。
まだ。
ある。
コハル
「あとね。
私のこと好きなところ。」
チカ
「…………。」
どこかで。
聞いたような結論。
チカ
「待って。
ナオコも今、向こうで同じこと言ってなかった?」
コハル
「え?」
チカ
「モモカがさっき『最大火力』とか叫んどった。」
コハル
「知らないよ!笑」
チカ
「怖っ!!
同じ答えやん!!」
コハルは少し照れながら。
それでも続ける。
コハル
「だって。
ナオコが私を好きなの、ちゃんと分かるから。
言葉だけじゃなくて。
毎日の小さいことで分かる。
朝起きた時も。
仕事行く時も。
帰ってきた時も。
別々の仕事の日も。
私のこと考えてくれてるのが分かる。
……それが好き。」
チカ
「…………。」
コハル
「何?」
チカ
「もう結婚せぇ。」
コハル
「急すぎる!!!笑」
その時。
少し離れたところから。
モモカ
「チカーーーー!!!」
二人が振り返る。
モモカ
「助けて!!!
ナオちゃんまだ喋ってる!!!」
ナオコ
「まだあるって言うてるやん。」
チカは。
隣を見る。
コハルも。
まだ何か言いたそうな顔をしている。
そして。
チカは全てを理解した。
チカ
「モモカ。」
モモカ
「何!?」
チカ
「こっちも止まらん。」
モモカ
「え?」
チカ
「コハルもナオコの好きなところ聞いたら、ずっと喋っとる。」
モモカ
「…………。」
ナオコ
「え?」
コハル
「ちょっとチカ!!」
ナオコが。
ぴたりと止まる。
あれだけ止まらなかったマシンガントークが。
初めて止まった。
ナオコ
「……コハル。
私の好きなところ言うてたん?」
コハル
「…………。」
顔が。
一気に赤くなる。
コハル
「……チカが聞いたから!」
ナオコ
「何て言うたん?」
コハル
「言わない!」
ナオコ
「聞きたい。」
コハル
「嫌!」
ナオコ
「お願い。」
コハル
「モモちゃん!!!
ナオコのマシンガントーク再開させて!!!」
モモカ
「なんで私が犠牲になるの!!!!」
チカ
「ぶははははは!!!」
ナオコ
「コハル。
一個だけ。」
コハル
「嫌!」
ナオコ
「一番好きなところ。」
コハル
「絶対言わない!!!」
チカ
「さっき『ナオコだから安心する』って――」
コハル
「チカぁぁぁぁぁ!!!!」
ナオコ
「…………。」
モモカ
「あ。」
チカ
「あ。」
ナオコの顔が。
ものすごく嬉しそうになる。
モモカ
「嬉し犬。」
チカ
「嬉し犬やん。」
ナオコ
「犬ちゃう。」
コハル
「もう休憩終わろ!!!
練習しよ!!!!」
チカ
「まだ休憩五分あるよ?」
コハル
「終わり!!!!」
結局。
ナオコとコハル。
好きなところを聞かれた二人の答えは。
どちらも、長すぎた。
そして、一番似ていたのは。
好きなところの数ではなく。
最後まで本気で答えようとするところだった。
コメント
1件
あー、もう、めちゃくちゃ良かったです……!😭 ナオコのマシンガントークから始まって、コハルが「優しい」だけからどんどん止まらなくなっていく流れが、もう本当に愛おしくて。チカの「甘っ」がツボすぎて何度も笑っちゃいました。そして何より「ナオコだから安心する」って言葉、重すぎず軽すぎず、一番響く言い方で刺さりました。二人の好きなところの数じゃなくて、本気で答えようとするところが似てるってラスト、まさにそれだなって。続きが気になります、大好きな空気感です🌷