テラーノベル
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正源はあわてて笑い声を上げながら言った。
「ははは、そんな顔をするな。冗談だよ、冗談」
それでも正雁は目をぱちくりさせていた。
「ああ、冗談か……ああ、あはは」
彼の寺を辞し、正源は車で例の墓地が見える坂道に差し掛かった。ドスンという鈍い音が聞こえてきて、正源は思わず車を停めて道端に降り立った。
四本、あるいは六本の蜘蛛のような形の脚があり、上半分がパワーシャベルやカニの爪のような破砕機になっている、最新型の重機が墓地の墓石をなぎ倒していた。
「今の時代、僕たち坊主は……」
誰のため、何のためにいるのか? 正源にはもうその答は分かっていた。死んだ人の魂をどうこうするためではなく、愛する者に先立たれ、悲しんでいる人たちの心の痛みを和らげるのが坊主の役目。
だが、坊主と、その残されて悲しんでいる人々を結び付けて、引き合わせる役目を果たしてきたのが、墓ではなかっただろうか?
それ以上言っても仕方のない事だ。そう思って正源は車の方を向いた。墓石が地面に落とされたのであろう、ズンとした振動が正源の足の裏に伝わって来た。
正源はまた墓地の方を向いて、胸の前で両手を合わせて合掌し、頭を下げた。しばらくそうした後、また車の方を向いて独り言をつぶやいた。
「時代が変わったんだ。言っても仕方ない」
だが自分でそう言いながらも、やはり口に出さずにはいられなかった。
「これからの時代、俺たち坊主は、その生きて悲しんでいる人たちを、一体どうやって見つけ出せばいいんだ?」
正源の車が走り去る、その背後で、大型土木工事用ロボットが墓石を取り除く轟音がいつまでも、いつまでも響き続けていた。
(終)
コメント
1件
うわ、第33話、読み終わった…「終」って書いてあるから、これで完結なんだよな? 最後の正源の「どうやって見つけ出せばいいんだ?」って問いかけがずしんと来たわ。重機で墓石がバリバリ壊されてる光景と、坊主の存在意義を真剣に考えてる彼の姿の対比がめっちゃ刺さった。戦闘もスキルもない話だけど、こういう静かなテーマでじわじわ来るの、好きだな。読後感、ちょっと切ないけど良い余韻が残った。お疲れ様でした🔥