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わんくっしょん
いちごオレ 様の つA超短編集 第13話 rtttシャンティパロ より許可をいただきました!本当にありがとうごさいます…!
※こちらはnmmn作品になっております。
ご本人様とは全くの無関係です。
文が拙い、ちぐはぐな部分がありますが脳内変換していただけると幸いです。
地雷の方は自衛のため、お戻りください。
「クッソ、ヤニ切れちまった。敵も全然見当たらねぇしよー…」
スラムの横に広がる中華街。
佐伯たちはオリエンスへ渡された任務のためにそれぞれ手分けして巡回していた。
開始から体感1時間半、早々にヤニ切れを起こす。
そもそも着くまでに2時間はかかったのだ。
致し方ない。
ヤニカスである佐伯はニコチンを摂取するべく近くに喫煙所が無いか確認するも見当たらず。
このままでは任務に支障が出そうなので震える手を抑えて裏路地へと入った。
人気の無い煙草を吸うには良さげな場所を見つけ、ポケットから箱とライターを取り出した。
煙草特有の苦い煙を深く吸うと煙で肺を満たし、ゆっくりと吐き出す。
ついでに残機ちゃん出しておくか、なんて考えていると反対側からざり、と土を踏む音が聞こえる。
「あれ、リトくん…?どうしたのこんな裏路地で…君の担当って反対側じゃなかった?」
「…ん?誰だ兄ちゃん。ここらじゃ見ねぇ顔だな」
いや、リトくんじゃない…?
顔だけでなく声も背丈も瓜二つ。
違うといえば服装と纏っている雰囲気くらいだ。
アジアンテイストを感じさせる白の装いといくつも付けられた首飾り。
最後に見たときはいつものヒーロー姿だったはずだがどうしてそんな格好をしているのだろう。
そんなことを考えて疑問符を浮かべる佐伯を他所に男は上から下へとじろじろと眺めるように見る。
ふーん…こいつ、なかなかいい商材になりそうじゃねぇか。体つきも顔つきも申し分ない…
ニヤリと宇佐美に似た男の口角が上がる。
「この人…リトくんによく似てるけど違う人なのかな…」
妖しげな笑みを浮かべる彼にそっくりな男を前に誰に言うわけでもなく独り言のように小さく呟く。
それにして似すぎではないか、と悶々としていると男が一歩距離を詰め、首にかけている数珠のような飾りがジャラ、と音を立てた。
「兄ちゃんはここでなにしてんだ?」
逆光と身長差で影になった巨体がゆらりと頭を傾ける。
太陽に稲妻が走ったようなオレンジの瞳が仄暗い光を放つ。
「僕…?僕はここら辺でパトロールして…ました…」
「パトロールかぁ…兄ちゃんもしかして警察とかそんな感じか?」
「いや、警察…ではないですけど…」
「ま、そうだよな。そのカッコで警察って言われたほうがこっちも戸惑うわ」
ガハハと豪快に明るく笑う。
そしてまた近づいてきたかと思うとその辺のたいして舗装されていない地面にできた水たまりを蹴り上げた。
蹴り上げられた水は飛び散ると佐伯に降りかかり、ポタポタと滴り落ちる。
「おーっと、兄ちゃん…汚れちまったみてぇだな?」
自分がやったというのにオーバーなリアクションでおどける男。
一瞬フリーズしていた思考が戻ってくる。
「汚れちまったもなにもリトくんが…」
「ん?」
反論しようとした口はそこで止まった。
何も言わせない凄みを帯びた瞳にじっと見つめられる。
人の良さそうな笑顔ではあるが確かな威圧感に冷や汗が背中を伝い、無意識に距離を取ろうと後ずさる。
「いや…なんでもない…」
のしかかるような圧に縮こまり、かけられた水で濡れた袖を握る。
「そうか。詫びと言っちゃあなんだな俺の店来るか?服ぐらいならあるからよ」
小さくなった佐伯に満足そうな笑みを浮かべて濡れた服を見やる。
やばい、逃げないと。
頭の中で警鐘が鳴り響く。
「僕は別に大丈夫ですよ…?」
「そーいわずにさぁ!な、兄ちゃん」
大通りへ逃げてしまえば…
人がいるところで下手なことはできないはず。
そう考えついた佐伯は遠慮がちな様子でゆっくりと後ろへ下がる。
大丈夫、演技は得意なのだから。
なんて考えは甘かったようで。
肩をガシリと掴まれ、間合いに入られる。
己の掴んだ手には暴れても簡単には振りほどけないような力がこもっていた。
絶対に逃がさない、そんな意思さえ感じる。
ここで暴れてしまえばこの男が何をしでかすかまったく想像ができない。
恐らく悪い方向に向かってしまうだろう。
「えと…じゃあ…少し…だけ…?」
「よし!じゃあ早速向かうかー」
腹を括って返事を返すとよしきたとばかりに佐伯の手首を掴むと半ば引きずるように店まで連れて行ったのだった。
ドンと構えた作りの店の扉を潜り、応接間のような部屋へ案内される。
早速着替えの服を…とはいかなかった。
「なぁ兄ちゃん。兄ちゃん は煙草って吸ったりすんのか?」
「煙草…は結構吸いますよ」
急な問いにそう返せばふーん、と返される。
男は引き出しを漁ると1本の煙管を差し出した。
「そうか。じゃあこの煙草やるよ。吸ってみな」
ほら、と差し出された煙草を受け取り早速火をつけて吸ってみる。
が、違和感に気づき、すぐに咳き込む。
「ごほッ!?げほっ、こほっ…ぅえ”…ッ、な、に…これッ…なんかへんなのはいって…」
「チッ…あ”ーあ。兄ちゃんなら騙されてくれると思ったんだけどな」
苦しさで咳込む佐伯に舌打ちをする男。
先程までの笑顔の裏に潜んでいた残忍な顔を出す。
背を丸めてげほげほと咳をする佐伯の襟首を掴むと腹に一撃を入れ、蹴り飛ばした。
「がは…ッ!!」
反動に座り込む。
咳で隙ができていたことで蹴りがまともに入り、変身が解け、残機も無い生身の状態になってしまう。
痛みに呻き腹を押さえて蹲る佐伯を見下ろしていた男が傍にしゃがみ、顔にかかった黒い猫毛を退ける。
「なぁ兄ちゃん。体バラして売られるか金持ちのおっちゃん達に売られるかどっちが良い?兄ちゃんは面が良いから特別な」
「ッ…は?冗談はよしてください、よ…」
「冗談なんかじゃねぇよ。実際にやってみせねぇとわかんねぇか?」
佐伯の両頬をガッと掴む。
要するにバラされて臓器を売り飛ばされるか金持ちで好色家のジジイに売られるかの2択。
そんなのたまったもんじゃない。
苦痛で顔を歪め、唇を噛み締める。
「煙草吸ってるやつぁ肺が悪いからなぁ。本当は金持ちのおっちゃん達に売るのが俺の本望ではあるけどよ。兄ちゃんが体バラされて売られてぇってんなら話は別だぜ?」
「俺なんか売って何がしたいわけ…?」
「そりゃあ当たり前だろ?金だよ、金。金のために決まってんだろ?」
チームメイトであり相棒である彼と同じ顔がそんなことを口にする光景に怒りと悲しみでぎり、と歯を食いしばる。
「…リトくんがそんな人だとは思わなかった」
「さっきからリトくんリトくん言ってるけどなんで俺の名前知ってんだ、兄ちゃん。どっかで会ったか?俺達」
「どうだろうね…君みたいな人にはできれば会いたくないけど」
「おお。なかなか挑発的なこと言うじゃねぇか。もう一発食らわねぇとわかんねぇか?」
頬を掴む手に力が込められ、ぐいっと引き寄せられる。
暴力的な色を灯した瞳に屈することなく真っ直ぐと睨みつけた。
「ッ…やれるもんならやってみろよ…!」
必ずみんなが助けに来てくれる…!
それからしばらく殴る蹴る等の暴行に耐え続け、血まみれになった佐伯の意識はいつ飛んでもおかしくないほどだった。
床に転がった血と痣で汚れた佐伯の顔を馬乗りで見下ろす。
「なぁ兄ちゃん。俺ぁ悲しいよ。兄ちゃんくらいのもんだったら良い商材になると思ったのによ」
「ッ…ぅ、は…ッ、はぁ…ッ」
わざとらしい演技をすると息も絶え絶えな佐伯の首に手をかける。
晒された白い首がきゅっ、と動く。
「最後にもう1回聞くからな?これが本当に最後だ。体バラして売られるかそれとも金持ちのおっちゃん達に性奴隷にされるか。どっちがいい?」
「ほんっ、と…は、…ぁ”…ッ、きみも諦めない、ッよね…どうして僕なんかに…そんな執着するの、かな…」
「だーかーらー。兄ちゃんはいい商売道具になると思ったからよ。そんだけ。さ、とっとと選んじまえよ」
グッと首にかけられた手に力が込められる。
…ごめんね、みんな。
どれだけ反抗しても無駄だと思った佐伯は大人しく応えようと口を開いた。
「…僕、は」
「テツ!!」
バンッと扉が蹴破られ、本物の宇佐美が現れる。
よく見慣れたヒーロー衣装と優しい顔に心底ほっとする。
その奥から赤城と緋八の姿も見えた。
「りと、く…みん…な…」
「おーおーおー。ヒーロー様のお出ましかぁ。こらぁ無理だな。兄ちゃん、運が良かったな。そんじゃまた今度会おうぜ」
そう言って佐伯の髪を乱雑に掻き混ぜると裏口に走っていく。
「リト!!テツを頼むで!俺らがあいつを追う!」
「任せてー!」
宇佐美に佐伯を頼み、それぞれレイピアと大剣を構え、逃げて行った男を追いかける。
追いかけていった2人を横目に急いで佐伯へ駆け寄り、ぐったりとした身体を抱きかかえた。
「テツ…大丈夫か?」
「だ…い、じょうぶ…助けにきて…くれて…あり、がと…やっぱリトく、は…ぼくのひーろー…だよ…」
へらりと笑ってそれだけ伝えるととっくに限界だった意識が飛び、脱力するように気絶する。
「…すぐ来てやれなくて…ごめんな…」
死んでしまったのかと思うほどボロボロな佐伯を腕に、すぐに気づいて助けることができなかった自身の不甲斐なさに涙を流す。
佐伯の身体に残る痛々しい痣や傷跡は最後に見たときにはなかったもので。
佐伯のからの応答がないことにもっと早く気づいていれば。
位置情報がほとんど動かないことに気づけていれば。
こんなになる前にもっと早く助けられたはずなのに、とやるせなさを胸に佐伯を抱きしめた。
それから少し経ち、あの男を追っていた2人が戻ってくる。
先程の男の姿は見当たらない。
「あいつは…?」
「すまん、逃げられた。ヒーローコスチュームでも追いつけんかったんや…あいつホンマ何者やねん…」
そう聞くと苛立った様子で顔を顰め、拳を握り締める。
「ほんと、テツをこんな姿にしておいて生意気だよね。でもあいつ…リトに似てたような…?」
コメント
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私の妄想がこんな神小説に…!? ありがとうございます!! 楽しく読ませていただきました!! 主様の語彙力がすごすぎて思わず見入ってしまいました…! 私の伝えたいことを全て書いてくださってるのが本当…神すぎて…