テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
お弁当が食べられる芝生の広場へやって来ると、和葉はレジャーシートを広げて三人で腰を下ろした。
そしてバッグから重箱を取り出し、そっと蓋を開ける。
色鮮やかなおかずが並んだ弁当を見た途端、詩音と湊は目を輝かせた。
「わー!しおんのすきなもの、いっぱーい!」
無邪気にはしゃぐ詩音の姿に和葉は笑みを浮かべる。
「こんなに作ってくれたのか? 朝から大変だっただろ」
「そんなに大変じゃなかったから……」
照れくさそうに答える和葉が微笑み返すとその横で詩音が、
「ママ、たべていい?」
ウズウズしながら食べていいか確認を取る。
「うん。それじゃあいただきますしようか」
「いただきまーす!」
和葉に促されて元気よく挨拶をすると、詩音は子供用のフォークを手に取り大好きな唐揚げへ真っ先に手を伸ばす。
一口食べるなり、ぱっと顔を輝かせた。
「おいしー! おにーちゃんもたべて!」
詩音に勧められた湊も箸で唐揚げを掴んで口へ運ぶ。
「……うん、本当だ。すごく美味しい」
「でしょー!」
詩音はまるで自分が褒められたかのように胸を張り、嬉しそうに笑う。
そんな二人の姿を見つめていた和葉の胸は嬉しさで満たされていく。
(早起きして作った甲斐があったなぁ)
楽しそうに笑い合う詩音と湊を見ているだけで大変だったことよりも嬉しい気持ちが勝り、何より幸せな気持ちになれるのだった。
それから昼食を終えた三人は再び園内を巡り、コーヒーカップでは詩音の楽しそうな笑い声が響き、パレードでは瞳を輝かせながら手を振る詩音を囲んで穏やかな時間が過ぎていく。
しかし、楽しい時間は突然終わりを告げた。
空を覆う雨雲から大粒の雨がぽつりぽつりと降り始めたからだ。
「あっ、雨……」
和葉は慌ててバッグから折り畳み傘を取り出すと湊は詩音を抱き上げたあとで傘を差して濡れないよう三人で身を寄せ合う。
「雨も強くなってきたな。そろそろ車に戻ろう」
「えー、まだあそびたい……」
名残惜しそうに頬を膨らませる詩音に湊は言った。
「また来ればいいよ。その時は今日よりもっと沢山遊ぼう」
「……うん」
そんな湊の言葉に納得したのか詩音が小さく頷いたのを見て、三人は降りしきる雨の中寄り添いながら駐車場へ向かって歩き始めた。
車へ入ると更に雨脚は強くなり、雷まで鳴り出した。
「かみなりこわい……」
詩音は雷が苦手なようで音がすると和葉に縋りついて耳を塞ぐ。
「暫く止みそうにないな……」
湊がスマートフォンのアプリで雨雲の様子を確認すも、暫く止む気配が無い。
それどころか雨脚も雷もどんどん酷くなり、光と音に恐怖を植え付けられた詩音は泣き出してしまう。
「大丈夫、怖くないよ……」
そう必死に宥める和葉もまた雷は苦手なようで、車の中に居るから安全だと分かっていても怖くなる。
そんな二人を見た湊は、
「すぐ近くにホテルがあって、そこにはカフェもあるから一旦そこへ行こうか」
ホテルの中に併設されたカフェで時間を潰そうと雨脚が強まる中、慎重に運転をしてすぐ近くのホテルまで向かって行った。
コメント
1件
お弁当のシーン、すごく温かい気持ちになりました!早起きして作った甲斐があったって思える和葉さんの気持ち、分かります。詩音ちゃんが「おいしー!」って言う姿が目に浮かぶようで、こちらまでほっこりしました☺️ そして突然の雨と雷…詩音ちゃんが泣いちゃうところ、和葉さんも実は雷が苦手っていうのがまたリアルで。そんな中、湊さんがすぐにホテルのカフェを提案する冷静さ、頼もしいですね。次はどんな会話が待ってるんだろう、続きが気になります!
宇津Q
1,982
鷹槻れん

52,986
鷹槻れん

25,540
#ヤクザ
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
2,849