⚠注意
この作品には以下の要素が含まれます。
・駄作
・自殺表現
この話はフィクションです。
実在の人物・団体とは関係ありません。
それはまさに初恋と呼べるものだった。
インターネット上での恋愛なんて、そう思っていたはずなのに。
あの人はとても優しくて、可愛くて、私にはないものをたくさん持っていた。
誰も彼もがあの人を愛し、敬った。それは私も例外ではなく、あの人を愛していた。
あなたは自分なんて、と言っていたけれど私にはあなたが眩しくて仕方がなかった。
勉強に打ち込む姿も、悩み事を聞いてくれるその優しさも、揉め事を解決してしまうその有能さも、家族を愛し、他者を愛するその愛情の深さも。
正直嫉妬してしまうこともあった。だってあなたは皆に優しさを振りまくんだもの。こんなに素晴らしいあなたに優しくされたらきっと勘違いしてしまう人も出てしまうわ。
でもあなたは決して完璧ではなかった。しっかりと人として悩み、時に失敗することもあった。それが余計に愛おしくて。
きっと完璧でないからこそ、あなたは他者を尊重していたんだと思う。
あなたがくれたものはずっと抱きしめている。忙しいのに態々描いてくれたイラストは一生の宝物だし、あなたが私と行きたいと言ってくれた場所も、全て大切な思い出として引き出しにしまっている。
ずっと、ずっとあなたを
……でも、でもね。もうあなたの記憶も薄れてしまっているの。
あなたが私を選んでくれたこと、あなたがくれた言葉、あなたの声、あなたが私にくれた希望。
ぽろぽろと、まるで箱の隅に穴があいてしまったみたいにこぼれ落ちていく。
私はそれがたまらなく怖いの。
あなたとの穏やかな幸せが徐々に蝕まれていく。
取り戻そうと必死に藻掻いてもどうすることもできない。
あの頃、私はまだ若かった。
何でもできると思っていた。
なのに、今は唯落ちぶれていくだけ。
醜くも無様に生きて、生きて、生き延びて。
自殺する勇気も、生きる気力もない。
まるでゾンビのように飯を食い、学校に通い、倒れるように眠りにつく。
何のために生きているのかなんてもう分からない。
あんなに楽しかった日々ももうない。
辛いなんて言えない。私はきっと恵まれている人間だから。
でもあなたに愛される幸福を知ってしまったから。
これ以上ない程幸せだったから。
だから、もう。
もうすぐ誕生日ですね。
あなたが誕生日は特別だって連絡をくれたから、もしかしたら今年もって期待してしまう。
生きているのかさえ分からないあなたを想い続けているの。
馬鹿だと思う。どうせあなたは現れないのに、もしかしたらなんて考えてしまうのだから。
それがとても幸せで、心がざわめき、穏やかな希望となって私の中に巣食っている。
もし会えたら何を話そうか。
あなたがいない間色んなことがあったのよ。いいえ、そんなことよりあなたはどう過ごしていたか聞かせて。
あなたが幸福でいてくれたらそれでいいはずなのに。
私はどうしようもないほどあなたに縋っている。
あと、あと、えっと
……そう、こんな事書いても意味ないし。
あなたがこれを目にすることはない。
そもそも私のことも忘れているでしょう?
いいの、勝手に好きになって、叶わないと暴れるような女じゃないの。まだそこまで堕ちたわけじゃないなから。
でもさみしい。この僅かに抱いた希望もきっと打ち砕かれるのね。
勝手に期待して勝手に絶望して。
でもこれだけは確かなの。私はあなたに救われた。そしてあなたがくれた幸福で私は死ぬの。
あなたがくれた幸福を、もう手放さないために。
私は幸せでした。
フィクション、だったらよかったのに。
あなたは空を飛んだ。
夕暮れの、赤い光に包まれて。そして強く体を地面に衝突させて。
あなたの周りに咲き誇るように赤い血の華が咲き乱れて。関節なんてもうめちゃくちゃで、それでもあなたはしばらく生きていたわ。
とても苦しそうだった。痛みに呻き、私を見て手を伸ばした。
『死にたく、ない』
蚊の鳴くような細い、細い声だったけど確かにはっきりとそう聞こえた。
私が通報して十分後。あなたはやっと苦しみから解放された。
その頃にはあなたの周りには人集りが出来ていて、誰も彼もがあなたのスマホを向けていた。
まるで珍しい動物を見るような目であなたを見ていた。
あなたを悼んでいた人なんて私くらいじゃないかしら。
美しいあなたの姿を知らない誰かが、あなたの一番醜い姿をネットに晒して承認欲求を満たしていたわ。
『グロ注意!女子高生飛び降り自殺!無修正』
『うわwwwパンツ丸見えじゃんwww』
『今夜はこれでいいわ』
見るに堪えないコメントも沢山あった。
あなたはこれで何を得られたの?
あなたの遺品を整理している時に見つけたこの手紙。
私はそれをWordに書き起こし、ある人へ送信した。
自筆の手紙なんて見せない。あの子の愛おしい筆跡は私だけのもの。
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